コンテンツのトップページへ デジカメダイバー★リアルレポート
大瀬崎ダイビングで水中撮影編
デジカメダイバー★リアルレポート 大瀬崎ダイビングで水中撮影編
第二回 達人インタビュー 露出を変えて撮る 魔法の水中写真テクニック 2010/07/14
 

短期連載「デジカメダイバー★リアルレポート」は、西伊豆大瀬崎で編集部によるダイビング&撮影体験を行い、大瀬崎でガイドをしている写真家の中野誠志さんについていき、EOS 5D Mark IIを使った水中撮影の様子を見せてもらったり、撮影のポイントなどを聞くコーナーです。

  マニュアル設定で絵作りを楽しむ方法 このページのトップへ  


この日、編集部はダイビングに3回ほど海に入って(通常、タンクの本数で3本と表現したり、3ダイブと呼ぶ)水中写真の研究を行いましたが、その1回め(1ダイブめ)が外海ポイントでのマクロ撮影でした。今回は1ダイブめで中野さんが、EOS 5D Mark IIで撮った写真を例に、どのような手順で撮影したのか、撮影の留意点などを聞くことにしましょう。

編集部 まずは早速ですが、前回紹介したマクロ撮影のうち、ウチウラタコアシサンゴ(手前)とウミウチワの写真について解説してください。
中野 地形を見て泳いでいたら、ウチウラタコアシサンゴとウミウチワが隣接しているのが目に付きました。マクロレンズに丁度良い、これはきれいな写真が撮れるぞと思い、そっと着底して近寄りました。
編集部 近寄るときの注意点はありますか?
中野 被写体を見つけたとき、自分の位置と被写体の位置・撮影したいところの関係と潮の流れを考えて、潮の下流にまわって被写体に接近しました。そうしないと自分で巻き上げた砂が被写体にかぶってしまい、撮影を邪魔してしまうからです。
編集部 なるほど。
構図などは…
中野 この写真の肝は、メインの被写体がきれいなウチウラタコアシサンゴになることと、ウミウチワの紫色が背景になることです。ウチウラタコアシサンゴだけを撮った写真もきれいですが、この場合はその背景に紫色を入れる事でさらに美しい写真になると考えました。また、そうした写真はこの場所でしか撮れない写真でもあります。
そのため、被写体の位置関係、大きさなどを考えて縦位置で撮影しました。これをまぁ画作りと言います。
(※編集部注 構図については「水中写真テクニック講座 第06回:水中写真の構図テクニック」を参照)
編集部 この写真は全く異なるイメージの2つの写真を撮って頂きました。同じ被写体なのに、カメラの設定でこうも変わるのはマジックですね。
もちろん陸フォトでも変わりますが、これほど変わるのは水中写真の醍醐味というか…。
まずは各写真の設定とか意図とか、解説して頂けますか。

中野さん水中撮影風景

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
中野

今回は、全体的にシャープに写す方法(右写真)と、自然光を活かしてふんわりと撮る方法の2種類の絵作りを試してみました。

まず、全体的にシャープに写す方法(右写真)は、バックを暗めにして被写体だけ浮き立たせます。その方法は絞って、シャッタースピードを上げて、ストロボの光量を上げて撮ります。
F値はマクロレンズの回折現象がギリギリ出にくく、かつ一番絞った状態のF11、シャッタースピードは、背景を暗くするために周辺光を極力取り込まないようにカメラとストロボのX接点の1/200秒、ストロボのガイドナンバーは、ストロボ2灯使用ですが、1.4倍のテレコンバーターが入っているので一段暗くなるのと、撮影する被写体との距離が離れているので11にしました

編集部

暗いながらもとてもクリアな色合いで、まるでウチウラタコアシサンゴが光っているように見える素晴らしい写真ですね。
ストロボのガイドナンバーというのは調光のための設定値ですか?

中野 そうです。『ガイド』ナンバーなだけに参考値ですね。こちらを参考にして下さい。
マクロ撮影のとき、被写体にかなり近づける場合は、少ない光で充分に露光できるので、ストロボのガイドナンバーは小さくなります。
逆に被写体までの距離が離れると、少ない光では充分に光が届かなくなって被写体が暗くなりますので、発光量を大きくします。このように距離を見ながら、ストロボのガイドナンバーと絞り値を調整しています。

背景を暗くし、全体的にシャープに写した写真

 

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
中野

逆に、自然光を活かして背景を明るくし、ふんわりと撮りたい場合(右写真)は、通常はスローシャッターを使います(シャッタースピードを遅く設定する)。いわゆる日中シンクロですね。
この場合、F11だとシャッタースピードがあまりにも遅くなりすぎるので、充分なシャッタースピードがかせげるように絞りを開放してF4で撮りました。
こうすることで手ぶれを防ぎながら背景が明るくなるとともに、開放絞りだと背景が良い感じにボケます。また、絞り値を変更をしているのでストロボのダイヤルも変更して発光量を弱めます。
ピントは開放絞りなので合わせにくくなりますが、主題となるウチウラタコアシサンゴの手前側にしっかりと合わせます

編集部

バックが明るく、全体的に爽やかなイメージの写真ですね。
これを撮るときはどのような設定と注意が必要でしょうか?

中野

今回の機材は、マクロレンズを使用しており、35ミリ判換算で126mm相当の仕様なので、シャッタースピードが遅すぎるとブレてしまいますので注意が必要ですね。
一般的に、レンズの焦点距離とシャッタースピードの数字を、同等より速くすることが手ぶれを防ぐ参考値だと言われています。
この時は水深も深く、暗い環境だったので、ISO感度を200から400に引き上げて、シャッタースピードを1/125秒に速くしました。後はストロボの光量を弱めて、絞りダイアルを開放して撮ります。2〜3枚撮ってみて、まだストロボの光量がイメージより大きかったので、更にもう少し抑えて撮りました。
日中シンクロでは、背景となる海の青さの露出と、被写体との調光が重要となります。

編集部 写真の露光量はストロボのガイドナンバーだけで調整する、というものでもないんですね?
中野 はい、ストロボで調光できるのは限られた距離・範囲の被写体だけです。背景の明るさなどはカメラ側を総合的に操作します。
シャッタースピードは1/200などのX接点となる速いスピード、絞りはF8〜11、これを基本にすればメインの被写体がシャープに写ったキレイな写真がだいたい撮れますが、今回のようにシャッタースピードと絞り値やISO感度、ストロボの光量などを総合的に操作することで、自分のイメージに合わせた写真を撮ります。
この辺はある程度いろいろ数値を操作して遊んでみるとコツがわかってくると思います。どれだけでも試せるのはデジタルならではの良さなので、ぜひいろいろと試してみて下さい。
編集部 絞りやシャッタースピードがマニュアル設定できない初心者はどうやって撮ればいいでしょうか。
中野

初心者の方は、まずはお持ちのカメラでのベストな写真が撮れるように目指してもらうといいと思います。
簡単な目標としては、自分が撮る魚などの写真を、図鑑に載っている写真よりもきれいに撮るというのはどうでしょうか。図鑑に載っている写真よりきれいに撮れるとなかなか嬉しいですよ。 それから、私が以前、連載した「水中写真テクニック講座」を熟読するというのも良いと思います(笑)

露出を自由に操作できるカメラなら調整によって自分の意図した写真が撮れますし、やはりコンデジとは段違いにきれいに撮れるので、写真がおもしろくなってきたら最終的にはぜひ一眼レフでの撮影を目指して欲しいと思います。
最初は今回のように動かない被写体で、設定を変えてじっくり練習すると良いですよ。


自然光を活かしてふんわりと撮った写真




被写体はこんなに小さい…マクロな世界
露出については「水中写真テクニック講座 第05回:水中写真の露出テクニック」も参照してください。

  超マクロな世界を撮る このページのトップへ  

露出を変えて撮った2つのサンプル写真撮影の後、中野さんは極めつけのマクロ写真を実はもう一番、披露してくれていました。
中野さんが何かを指さしています。

Clickで拡大
写真A

紫のカリフラワー発見?
中野さんが何かを指さしています。
「ん? 紫のカリフラワー? それとも何かいるんですか?」と編集部、心の問いかけ。

Clickで拡大
写真B フォーカスにライトを使用
中野さんは水中ライトを点灯させました。ピントを合わせるためのフォーカスライトとして使用しているようです。やはり何かいるようです。
Clickで拡大
写真C

何枚か設定を確認しながら撮影
編集部では正体さえ目視できない超マクロの世界に、中野さんのカメラは踏み込んでいます。

Clickで拡大
写真D

何か見えますか?
たしかに何かがくっついているようで…
でも、ご覧のように編集部のコンデジではなんだか解りません。


編集部の目ではそれが何であるか、付いている物体の正体さえ目視できない超マクロの世界に、中野さんのカメラは踏み込んでいます。

このとき中野さんが撮った写真がこれ!!

Clickで拡大
  【中野さん撮影05 : EOS 5D Mark II】  コデマリトサカとセロガタケボリ貝
[撮影データ]
シャッタースピード : 1/125秒、レンズ絞り値 : F4.0、ISO感度 : 200、レンズの焦点距離 : 90.00(mm)


紫のカリフラワーは「コデマリトサカ」。光をあてると綺麗なピンク色だったんですね。
そして、その中には体長約5mm程度の小さな小さなセロガタケボリ貝。
その名のとおり貝の仲間だそうです。

それにしても、編集部の写真では確認することすら難しい、これほどミクロの世界をこんなに明るく、こんなに大きく、ジャスピンで・・・!!
さすがに水中写真の達人ワザは奥が深いです。

(※編集部注 マクロ撮影については「水中写真テクニック講座 第04回:マクロ撮影のテクニック」も参照)


編集部 まず驚いたのは、こんな小さな生物を発見する「目」を持っていることです(笑)。更にさすが、セロガタケボリ貝に、よくこれだけピッタリとフォーカスが合いますね(笑)。
ライブビュー液晶を見てピントを合わせているんですか?
中野 ライブビューは使っていません。
水中ハウジングに付けた筒型の「ストレートファインダー」を通して、光学ファインダーでピントを合わせます(右写真)。
編集部 フォーカスはマニュアルですか?
中野 基本的にいつもオートフォーカスを使っています。
編集部 ほう…ピントが合うまで何度も合わせるんですか?
中野 いえ、ほどよいところにピントが来たら、半押しでフォーカスをロックしておいて、カメラや体を動かして微調整することで、微妙なピントを合わせます。
オートフォーカスの良い所は左手がわずらわしいフォーカス操作から解放されることです。フリーな左手で岩につかまって体を安定させたり、体を微妙に移動させたりします。
編集部 なるほど。水中ライトを使っていたのはフォーカスを合わせるためですか?
中野 はい。また、ライトで照らすと被写体の色がその場で再現されますので、仕上がりイメージ用にも使えます。
Clickで拡大

  水中撮影が上手になりたい人へのアドバイス このページのトップへ  

編集部 一般の多くのダイバーはコンパクトデジタルカメラで撮影していますが、今回、中野さんが撮ったような写真を撮るのは困難なことでしょうね。
中野 今回のようなマクロ写真は、マクロレンズを装着すれば可能だと思います。細かいピント合わせも半押しでフォーカスをロックして、カメラ側を慎重にズラせば可能です。
(※編集部注 マクロ撮影については「水中写真テクニック講座 第04回:マクロ撮影のテクニック」を参照)
編集部 外部ストロボの購入も必要ですか?
中野 マクロレンズの場合は、内蔵ストロボがそのまま使える機種が多いので、外部ストロボがなくても、ある程度は上手に撮れると思います。不満を感じはじめたら外部ストロボの購入を検討すればいいでしょう。
伊豆などの都心に近いポイントは、海が濁っていることもありますが、マクロなら近い距離で撮影するのでその影響も受けにくく、初心者がテクニックを磨くにはピッタリだと思います。
編集部 プログラムオートでは誰が撮っても同じような写真になりがちなので、自分のイメージ通りの写真を撮る、絵作りをする楽しさは一眼レフでないと味わえませんか。
中野 私は、背景の明るさと暗さ、被写体の明るさと暗さをマニュアル設定や調光でコントロールしながら撮影しています。そういう意味では一眼レフが最適ですが、コンデジでも構図を工夫して絵作りしたり、ワイドコンバージョンレンズ・マクロコンバージョンレンズなどをつけることで、もっと水中写真を楽しむことができます。
また、コンデジにもマニュアル設定が可能な機種もありますし、なにより小さく軽く、安いなどのメリットもたくさんあります。西伊豆にいる何人かの現地ガイドさんのように、工夫と練習次第で一眼レフ顔負けの写真を撮ることもできると思います。
編集部 中野さんは一般のダイバー向けに大瀬崎の海をガイドされていますが、撮影の仕方を教える場合はいつもどのようにしているのですか?
中野 通常、ダイビングに来場されるお客さんに撮り方をアドバイスするときは、海の中で良い被写体を見つけたら、お客さんを呼んでまず撮影してもらいます。その後、もしアドバイスが必要そうなら、自分なりにこう撮ったらきれいだと思う方法を水中ボード(クエストボード:写真右中央)に書いて知らせます。そのため、水中ボードは詳しい説明をお客さんが読みやすいように大きなものを使っています。
編集部 ISO感度や露出、シャッタスピードの設定まで、海の中でアドバイスするのは困難ですね。
中野 海の中では書いて、見て、のコミュニケーションなので、そこまで細かくアドバイスをすることはできませんね。潜水できる時間も限られていますし、細かくやっていたらアドバイスのやりとりだけでダイビングが終わっちゃいます(笑)
そのため、海の中ではどの方向からどんな構図で撮った方がいいか、などの単純な助言が有効だと思います。
また、もっと直感的に納得してもらえるように、お客さんのカメラを借りて撮ってあげて、プレビュー画面を見て理解してもらう時もあります。
ISO感度や露出などの細かいアドバイスは、海から上がって、お客さんが撮った写真を一緒に見ながら行うようにしています。露出についての概念は、慣れない方にすぐ理解してもらうの難しいので、参考になるカメラの本やスタジオグラフィックスのホームページ(笑)などを紹介するようにしています。
編集部 なるほど。参考になりました。
Clickで拡大

 

 

Clickで拡大

 


Clickで拡大
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


次回からは大瀬崎の水中生物の生活を捉えた写真やワイド写真についても紹介していきたいと思います。
お楽しみに。

<< BACK  第1回 EOS 5D MarkIIで水中マクロ撮影
>>
NEXT  第3回 マクロな海のドラマ & 水中カメラ器材

水中写真テクニック講座

メールマガジンに登録しませんか

スタジオグラフィックスの海中世界

コラム「オヤジの夏休み 〜置き去りにした夢〜
絶対にこの夏、ハンマーヘッド・シャークを見るにょ !」 
コラム「オヤジの夏休み2008 〜神子元島から沖縄の美ら海へ〜
ソニー Cyber-shot W300 で撮った沖縄の海中散歩!」 
オヤジはついにハンマーヘッドの大群遭遇へ。
そして、ダイビング初心者の娘を待っていたのはタイマイ(ウミガメ)が舞う奇跡の海。
神子元島から沖縄の美ら海へ

スタジオグラフィックス 人気記事ピックアップ
曲面(バスト)に合わせてタトゥー風に文字を貼り付けるフォトレタッチ術   曲面(バスト)に合わせてタトゥー風に文字を貼り付けるフォトレタッチ術
(フォトショップ早わかり Photoshop Tips & Manual)
胸の曲線に合わせて文字を合成するテクニック

意外と難しい、順光できれいな写真を撮る方法  

意外と難しい、順光できれいな写真を撮る方法
(プロが教える 女性の撮り方講座)
順光、斜光、逆光、半逆光、側光、トップ光の違いと注意点


女性らしさを表現する立ちポーズってなに?   女性らしさを表現する立ちポーズってなに?
(モテる撮られ方大研究「モテ写 on The Web」)
きれいに撮られるテクニック 第2弾は立ちポーズの基本

デジカメダイバー★リアルレポート   EOS 5D Mark II で水中マクロ撮影
(水中写真テクニック講座)
西伊豆大瀬崎で水中写真大研究

風景写真をミニチュア写真に加工する方法   風景写真をミニチュア写真に加工する方法
(フォトショップ早わかり Photoshop Tips & Manual)
風景写真をミニチュア模型のように加工するレタッチ術

Photoshop Elementsで、空を青く、芝生を緑に演出する方法   Photoshop Elementsで、空を青く、芝生を緑に演出する方法
(フォトショップ・エレメンツ de ゴーゴー!)
青い空、緑の芝生…記憶の色を取り戻す魔法のカラー補正術

Webアルバムを作って知人に写真を見せる方法   Webアルバムを作って知人に写真を見せる方法
(Picasa3 徹底活用講座)
思い出の写真を家族や友達とウェブで共有

パソコンで録画した番組をiPhoneやiPod Touchで観る方法   パソコンで録画した番組をiPhoneやiPod Touchで観る方法
(デジタル放送の視聴と録画&活用講座「地デジ生活 2000GT」)
iPhoneに録画した番組を転送して屋外で楽しむ

テレビ番組を電車の中からケータイで予約する方法   テレビ番組を電車の中からケータイで予約する方法
(デジタル放送の視聴と録画&活用講座「地デジ生活 2000GT」)
「録画予約を忘れてた!」そんなときどうする?
 
初出:2010/07/14
  このページのトップへ
 


     
 
 

     
 
Creating Supported by
トライセック
サンタ・クローチェ
リンクについて
著作権について
プライバシーポリシー