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デジカメPopeye
第14回 JPEG研究序説 〜JPEGの画質劣化を考える〜
 

スカイウオークより、飛鳥の入港

デジカメ画像掲示板「電脳光画部」、RIO さんの作品
(No.7353)
D60で撮影

 
(2004.5.12)
 

 JPEGは、今では最も有名な画像フォーマットのひとつです。
また、JPEGは優れた圧縮能力で知られていますが、圧縮のために画像が粗くなることも皆さん、きっとご存じでしょう。実際に圧縮レベル12で保存した画像と圧縮レベル4で保存した画像では、違いが明かです。
 では、圧縮レベル4で保存した画像を再び開いて、そのまま再度圧縮レベル4で保存する・・そんな作業を15回、繰り返したら、画像は劣化するのでしょうか? そんな実験をやってみました。

RAWはプロのものか、初級者のものか?

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画像1.
今回、実験に使った素の画像です。本来はRAWで撮影したモノで、圧縮によるノイズなどはないのですが、そのままではWEBに掲載できないのでフォトショップでJPEG高品質(レベル12)で保存しています。

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画像2.
素の画像(左)を、高圧縮率のレベル4で保存した画像(右)と比べました。見やすいように拡大してありますが、素の画像にはなかった色が発生したり、四角いタイル状のプロックノイズが目立っています。
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画像3.
レベル4(高圧縮モード)で1回保存した画像(左)と、レベル4で15回も保存と開くを繰り返してできた画像(右)です。レベル4本来の画像の粗さはありますが、ただ保存を繰り返しただけでは画像が破綻していくということはありません(詳しい人ほど意外に感じるかもしれません)。でも、まだ続きがあるんです。

  前回まで、RAWデータの利点と欠点についてを解説しました。ひとことで言ってしまうとRAWデータは現像する前の、画像の素になるデジタル信号・・いろいろ工夫を凝らして現像することで、撮影した画像を撮影者の思った写真に近づけることができるわけです。それ故、RAWデータを使いこなして活用するには、現像時にデジタル画像に関するある程度の知識が必要となり、万人にお勧めすることはできない・・とこうなるわけです。

 また、RAWデータは大容量のため、デジタル現像をする際にも数が多ければ、高速なパソコンでないと作業が大変、ということにもなります。もちろんメモリーカードに保存できる画像枚数もJPEGと比較すると激減します。この点は、大容量のRAWデータを確実にひとつ撮っておくか、比較的小容量のJPEGにして2つ3つシャッターをパシャパシャと落としておくか、という選択にあてはめることができます。そんな場面を想定したとき、現在ではまだ、デジタル画像に詳しくない方にはやはり後者の方が良い写真をゲットするにはお勧めかな、とこういう論調になるわけです。こういう論調が故に、RAWデータは一部のデジタルカメラでしかサポートされていない、とも言えるのでしょう。

RAWはプロのものか、
      初級者のものか?

「現在ではまだ」なんて思わせぶりな言葉を使ったことには理由があります。初心者にはお勧めしにくいと言ったRAWデータですが、裏を返せばカラーパランスや露出設定など、初心者では失敗しがちな、本来撮影時に行う設定を後で変更して画像調整できるわけですから、案外、初級者にこそ嬉しい機能な訳です。「プロカメラマンならそんな設定一発で決めるでしょ、それがプロでしょ」的な職人気質のカメラマンだっているわけですから、設定が全然解っていない初級者にこそ、RAWデータとデジタル現像は大切な一枚の失敗を避けるためのひとつの手段と言えるかもしれません。しかし、そうなるには、デジタル現像を行うソフトウェアが初級者でも使いこなせるGUI(操作画面や操作方法)を備えなければなりません。現在ではそれほど秀でたソフトウェアが添付されているわけではないため、残念ながら少し高い敷居があります。しかし、このことは時間が解決してくれるかもしれません。初心者にはRAWデータを、という時代が来ることだって考えられないことではありませんから。

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JPEGの特徴と弱点
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画像4.
次にこの画像を見て下さい。レベル4で保存した画像(左)をちょっとだけ変更しながら、レベル4で5回保存したものが右です。右は著しく画像の劣化が見られます。15回保存しても破綻しなかったのに、なぜ、たったの5回の保存で劣化してしまったのでしょうか。

 さて、ある意味でRAWデータの対局をなすのが、JPEGであります。あまりにも普及しているJPEGは、今や画像フォーマットの標準として君臨し、インターネットでの標準使用はもちろん、サポートされていないグラフィックソフトやシステムはほとんど皆無といっていいでしょう。世界で一番のオンリーワンです(ちょっと意味不明な言い回し(笑))。
さて、このJPEG、読者の皆さんがデジタルカメラを普段、使用している分には何の不自由も感じないと思います。例え感じたとしても、それはデジタルカメラ本体(画素数がどうのとか、ダイナミックレンジがどうのとか)のせいにして、あまりJPEGがどうのこうの、という話にはなりませんね。しかし、こと高度なレタッチをするとなると、いささかの問題を抱えているんです、実は。
そこで、業界のほぼ共通の認識としては(ずいぶん大仰な表現ですが(汗;))、JPEGは最終保存形態として最も標準化された画像フォーマットであり、これに勝るものがないけれど、最終に至るまでのプロセスで利用するには少しの弱点がある、とされています。

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JPEGの圧縮による画像劣化を考える
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画像5.
分離した輝度情報(上)はそのままにしておき、なんだか解りにくい色差情報(中/下)の情報を間引いてデータ容量を減らします。
※ 『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』(日経BPソフトプレス刊)
より

 JPEGは静止画像の国際標準規格で、元々の規格を策定した委員会の名称「Joint Photographic Expert Group」が語源となっています。JPEGの大きな特長は、データ容量を劇的に小さくして保存できる点にあります。

 データ容量を小さくするのには大きく2つの方法がとられます。ひとつはダウンサンプリンク(中間をとって平均値にする)、もうひとつは量子化です。

 ダウンサンプリングは、人間の目が鈍感な色情報を間引いて減らします。「人間の目が鈍感な色情報」という点をもう少し解りやすく説明しましょう。JPEGでは画像を1つの「明るさ」情報(右画像の上)と2つの色差情報(青の度合いと赤の度合い)に分離します。これをYCbCrやYUVの分離と呼びます。分離したとき、輝度情報(上)は人間の眼には明かな画像として認識できますが、2つの色差情報(中/下)はほとんどなんだか解らないような画像(情報)となります。このなんだか解らないような2つの色差情報を思い切って間引くのです。人間の眼には判別しにくい情報を劇的に間引くとは、こういうことです。しかしながら、確実に情報は減っていますので、色の変化の激しい画像やコントラストの低い画像などは、色のにじみやエッジの甘さが発生する場合もあります。

 画像をいくつかの小さなブロックに分割し、計算上で色情報を丸める「量子化」によって情報を減らします。画像では量子化ビット数は階調、グラデーションを表現する段階を表します。量子化ビット数が多いほど、豊かな階調表現が可能で実際の画像の色合いをより忠実に再現でき、逆に量子化ビット数が少ないほど、大きな段階(ステップ)で色情報は丸められ、粗いグラデーションになります。JPEGではこの除算で出た端数は捨てられるため、捨てられた数値は復元の際には失われた情報となり、正確に復元ができなくなります。これが圧縮した画像を復元したときに素の画像とぴったり一致しない「不可逆圧縮」と言われる大きな理由のひとつです。

 また、JPEGでは8×8のブロックサイズで分割してこれらの処理を行いますので、復元の際に正確性を欠いたブロックに色の誤差が境界線となってタイル状に見えます。ブロックに分けて、テーブルと計算式を使って丸められる画像圧縮のしくみですので、画像3のように、同じ画像のまま保存と復元を繰り返していると劣化はほとんでみられませんが、僅かに画像の全体サイズを変更しながら保存と復元を繰り返したりすると、常にブロックの分割と再計算、丸め、情報の切り捨てが保存するたびに行われ、画像4のように画像の劣化が顕著に表れます。

 レタッチではこのように何度も画像のカラー補正や修正を繰り返しますので、JPEGの画像は保存するたびに場合によってはみるみると劣化してしまうのです。

それでもJPEGは便利ね
 さて、丸める際の量子化ビットに影響するのが、皆さんご存じの「圧縮率(圧縮レベル)」というわけです。画像を保存する際に1/5〜1/100程度の幅広い圧縮率をユーザーが選択することができることがJPEGの特徴の一つとして知られています(実際の選択肢の数は機器やソフトウェアの仕様に依存します)。すなわち、クオリティが要求される画像は低圧縮率にして、大容量で高品質な画像ファイルとして保存し、小さいファイル容量が求められる画像は高圧縮率を適用して、画質をある程度犠牲にして小容量のファイルとして保存できます。これが、JPEGが用途に応じて幅広く活用される人気の秘密です。高品質なクオリティが要求される用途とは、写真をプリントしたり、レタッチ編集するなどです。また、小さいファイル容量が求められる用途とは、電子メールに画像を添付して送信したり、WEBページに画像を掲載するなどがあげられますね。画像のしくみに興味がある人はまもなく発売になる『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』(日経BPソフトプレス刊)もぜひご覧になって下さい。

※今回の実験は、アドビ フォトショップを使って、特定の条件下で実験を行ったものです。結果は使用するソフトウェアやパソコン環境等によって変わる場合がありますので、予めご了承下さい。
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