シャープネスフィルタは、画像にメリハリを与えてくれるとても便利なフィルタではありますが、安易に使うと、画像の品質を大きく損なうことがある危険と背中合わせのフィルタだということも、重要な知識です。その理由は、シャープネスフィルタの多くが、画像中のエッジの周囲にあるピクセル(画素のこと)のコントラストを変更することで、見た目のシャープさを実現しているからです。コントラストを変更するというとピンとこないかもしれませんが、その変更自体が、画像を不自然な状態にする編集であり、一度変更して保存してしまったら、二度と元に戻せないわけです。また、シャープネス効果の適用は、最終出力の形によって最適な方法を選ぶべきだということも、しっかり理解していなければいけません。最終出力とは、そのシャープネスフィルタをかける対象の画像が、どういう形で、どのような環境で人に見られるのかということです。たとえば、編集した画像を Web に掲載するのであれば、その最終出力の形はコンピュータのディスプレイであり、印刷したものを人に見せるのであれば、プリンタや業務用印刷機でプリントしたものが最終出力の形となるわけです。そして、その最終出力の方法や形を意識してシャープネス効果を適用しないと、画像は意図していなかった状態になってしまうことがあるのです。たとえば、ディスプレイ画面では見た目に美しくシャープネス効果が適用されたと思っても、その画像をプリンタで印刷すると、エッジが強調されすぎて汚くなってしまった、なんてことを経験したことがありませんか? この原因は、ディスプレイ画面で表示される画像の解像度と、プリンタで印刷されたときの解像度がまったく異なるもだからです。また、ディスプレイ画面での観賞は、色の付いた光そのものを見ているわけですが、印刷されたものは紙などの印刷用紙に転写されたもので、我々は紙から反射した光で画像を認識しているわけです。また、ディスプレイ画面のサイズの違いや、印刷用紙の質の違いによっても、シャープネス効果の良し悪しが変ってくることも覚えておきましょう。
どうでしょう? こんなことを書くと、シャープネスフィルタって、とっても面倒なものだと思ってしまいますよね。そうです。本当にやっかいで面倒なものなのです。だからといってシャープネスフィルタを使わないわけにはいきません。なぜなら、撮影したデジタル写真データそのものを Web に掲載したり印刷することはほとんど不可能なことで、必ずといっていいほどサイズを縮小する必要に迫られるからです。画像サイズを縮小すると、当然画質は劣化して、全体的にボケてしまいますから、最終段階でシャープネスフィルタを使うことになるはずです。
最後に取り上げるトピックとしては、ちょっと順番が違うんじゃないかと言われそうですが、画像編集の一番最初にかけるのが効果的だとしている RAW Presharpening を紹介します。
この RAW Presharpening は、RAW 現像した直後の写真にかける、微量のシャープネス効果があるフィルタです。この RAW Presharpening をあらかじめ写真にかけておくと、画像編集の一番最後にかける、NSP2.0 の各種シャープネスフィルタを使ったときに、ハロー現象や、擬色の発生を、できる限り抑えた上で、最適なシャープネス効果を得るようになります。
RAW Presharpening を使うことを前提とした場合は、RAW 現像ソフトに搭載されているシャープネスフィルタは、使わないほうがいいでしょう。また、カメラのシャープネスも、できる限り遣わないか、使うとしても緩く設定しておいた方が良いようです。
蛇足ですが、NSP2.0 のマニュアルには、この
RAW Presharpening を、「RAW 形式ファイルにかけるシャープネスフィルタ」 と説明していますが、これは間違いで、あくまでも、RAW 現像直後のイメージ画像にかけるフィルタです。
▼画面
5-1
RAW 現像直後のイメージにかける Presharpening
nik Sharpener Pro 2.0 は、画像編集のワークフローにおいて、シャープネス効果を適用するポイントを、画像編集の前と後の2回が最適だとしている。この RAW Presharpening フィルタは、RAW 画像を現像して Photoshopで編集できる画像イメージに変換した直後にかける、前工程のシャープネスフィルタだ。
RAW 現像直後の画像に軽くシャープネスをかけておくことで、画像編集後の出力用シャープネスフィルタを適用した場合に、シャープネス効果によるノイズの発生を抑え、最適なシャープネス効果が得られるように設計されている。