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■Photoshop CSって? |
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どうも〜、ちゃらんぽらんな薮田で〜す。先週はレタッチ講座をお休みしてごめんなさ〜い。 いやっ、実はですねぇ、お休みしたのにはふか〜い意味があるんですよ〜。それはですねぇ、なんとあのAdobe Photoshopが新しくなるってんで、しかもオンラインでの情報解禁日が12月4日だっていうんで、仕方なしに1週間先延ばししたんですねぇ。そんな、勤労感謝の日に生まれた勤勉な私が原稿を落とすわけがないじゃないですか。いやだなぁ。もしもですよ、「あいつは原稿が遅い」とか、「誤字脱字が多い」とかいう噂があるとしたら、それは某プロデューサーの陰謀ですよ。 さっ、そんなたわけたことはおいといて、本題にちゃっちゃと行っちゃいましょう。
●「CS」ってなんだ
新しいPhotoshopの名前は「Adobe Photoshop CS」。今回からはバージョン番号を前面に出すことが廃止されました。でも、[ヘルプ]メニューの[Adobe Photoshop について]をクリックすると、バージョン8であることがわかります。
「CS」とは「Creative Suite(クリエイティブ・スイート)」の略。スイートってのは「一組」ってことですな。Photoshopの開発・販売元アドビシステムズのプロフェッショナル向けクリエイティブ製品であるAdobe IllustratorやGoLive、InDesignも、今回からバージョン番号がすべて「CS」になって、2004年初頭に同時発売されます。それぞれ単品販売もされるんですが、職人定食……じゃない、クリエイティブツールのフルコース料理(つまりパッケージ製品ですな)ってのもあって、それが「Adobe Creative Suite」になるわけです。
プロのクリエーターの多くは、Photoshopと一緒にドローツールであるIllustratorを使っています。また、WebオーサリングソフトのGoLiveを使っているWebデザイナーにとって、PhotoshopとIllustratorは必須のアイテムともいえます。これは、DTPソフトであるInDesignを使うデザイナーにも同じことが言えます。だとすれば、当然ですがこれらの製品間での親和性や操作性の統一ってのが要求されるわけです。ところが、従来はすべて個々に開発され、発表や発売時期はばらばらで、操作性や親和性については必ずしも高いとはいえませんでした。私もアドビを訪れるたびに、せめてPhotoshopとIllustratorだけでも同時に開発してくれ〜とお願いしてきましたが、ここにきてやっとその願いが叶うことになったわけです。
と、まぁ、そんなわけで、「CS」ってのは各アドビ・クリエイティブ製品同士の親和性のシンボルみたいなもんです。本講座はPhotoshopだけを取り上げているので、そうした親和性については触れませんが、各製品が同時に開発され、同時に発売されるということは、今回のPhotoshopのバージョンアップにおいて重要なトピックであることは覚えておいてください。
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■こんな機能が増えて、ここが強化された |
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●スタートアップスクリーン
まずはPhotoshop CSを起動してみましょう。すると、画面1をのスタートアップスクリーンが表示されます。ここで新しい機能や基本的な操作方法を学習できます。でも、試用したPhotoshop CSはベータ版なので、これらのうち、オンラインの機能は使えませんでした。ムービー、観てみたかったんですけどね。
aのチェックを外すと次回からこの画面は自動起動されなくなります。再度この画面を出したいときは、[ヘルプ]メニュー→[スタートアップスクリーン]をクリックします。
●外観は変わらない
Photoshop CSの外観は、前バージョンとほとんど違いがありません。見慣れたPhotoshopの画面です。でもよ〜く観ると、何かが違いますねぇ。画像ウインドウのタイトルバーに「16」という数字があるし、 [ レイヤーパレット ] のレイヤーセットもなんか違う。オプションツールバーにも見慣れないボタンがある……。これらがなんなのかは、これからじっくりと紹介して行くことにしましょう。
それでは、Photoshop CSの新機能および強化機能をリストにしてみたので見てください。
●新機能と機能強化
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※Adobe ImageReady CSについては除外 |
これでは何がどう便利になったのか、さっぱりわからないでしょうから、今回からの3回に分けて、ひとつずつ解説していきましょう。そうそう、各機能をクリックすると解説にリンクするようになっています。クリックできない機能は次回以降に解説します。
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■レイヤー関連の新機能 |
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●レイヤーカンプ
「こっちのレイアウトもいいけど、これもいいな」 な〜んて感じで、画像の編集中にレイヤーの並び順や各画像の位置などで悩んだことはありませんか?最終形のデザインは仕上がったけど、どうしても捨てがたいレイアウトがある場合は、別のPhotoshopファイルとして保存しておく……、というのが今までのやり方だったはずです。
●画像の位置やレイヤーの状態を保存
[レイヤーカンプ]は、レイヤーの表示/非表示やレイヤースタイルで定義した外観、また各 [ レイヤー ] にある画像の位置などを保存しておくパレットです。まず、画面3の手順を見てください。作品の制作途中で、適当と思われるレイアウトができたら[新規レイヤーカンプ]を作成して名前を付けて保存しておきます。次に、同じPhotoshopファイルで別のレイアウトを検討し、レイヤーの表意/非表示を切り替えたり、画像を移動したりしてもうひとつのレイアウトを作ります。ここでも[新規レイヤーカンプ]を作成します。[レイヤーカンプ]パレットの左側にある□をクリックすると、それぞれの[レイヤーカンプ]を保存したときの状態で画像が表示されます。
ただし、[レイヤーカンプ]には画像自体に施した部分的な変更は保存されません。たとえば、あるレイヤーの画像の一部を消しゴムツールで消した場合は、それ以前の[レイヤーカンプ]の画像も部分的に消した状態になってしまいます。
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●入れ子のレイヤーセット
[ レイヤー ] パレットには以前から [ レイヤーセット ] という [ レイヤー ] をひとまとめにして管理するフォルダのような機能があります。従来の [ レイヤーセット ] は、同じ階層にしか作れませんでしたが、Photoshop CSからは階層構造、つまり入れ子の状態で [ レイヤーセット ] を作ることができるようになりました。
たとえば、画面4は3階層の [ レイヤーセット ] になっています。 [ レイヤーセット ] は▼をクリックすることで、展開表示を閉じることもできます。 [ レイヤーセット ] を使うと、複雑なレイヤーで構成されるドキュメントをわかりやすく整理することができます。
新しい [ レイヤーセット ] は、最大5階層までの階層構造が持てます。
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● [ レイヤー ] をファイルへ書き出し
[ レイヤー ] で構成されたPhotoshopファイルから、 [ レイヤー ] にある画像をひとつずつ画像ファイルにして書き出すのは結構大変な作業ですが、[スクリプト]にある[ [ レイヤー ] をファイルへ書き出し]コマンドを使うことで、自動的に処理できます。この機能を使うことで、編集合成システムとの連携が楽になります。
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●レンズフィルタ調整レイヤー
カメラの色温度や色補正をするフィルタと同じような効果が得られる [ 調整レイヤー ] です。
晴れた日の建物の陰や曇った日の撮影では、画面が青っぽくなります。こうしたときには、青味を除去する [ フィルタ ] を使って撮影するものです。これと同じ効果をデジタルでやってしまおうというのが、[レンズフィルタ]調整レイヤーの「暖色系フィルタ」です。逆に、朝とか夕方の赤味の強い光や、タングステン電球などの色温度の低い電灯光下で撮影した場合には、赤味を抑えるために「寒色系フィルタ」を使うとよいでしょう。
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■補正・編集関連の新機能 |
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●シャドウ・ハイライト補正
[シャドウ・ハイライト]補正は、画像のシャドウ部とハイライト部を、他の部分の明るさやコントラストに大きな影響を与えることなく補正する機能です。ハイライトを固定してシャドウ部のみを明るくすることや、その逆もできます。
画面7は、逆光のために被写体がまっくらになってしまった写真です。[シャドウ・ハイライト]補正をかける前と後を比べてもらえばわかりますが、車道を明るくしたために、ハイライト側が明るくなりすぎるといったことなく補正されています。
従来こうした補正は、画像を部分的にマスクしてから、 [ トーンカーブ ] や[レベル補正]の機能を使って行なう必要がありました。ただ、これらの方法には高いスキルと時間が要求されます。その点、[シャドウ・ハイライト]補正機能は、誰もが簡単に短時間で同様の補正を行なえるのです。この[シャドウ・ハイライト]補正機能はPhotoshop Elementsにも搭載されていますが、Photoshop CSの方がより高度な設定ができます。
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●包括的な16ビットカラー編集
本講座の第一回目で書きましたが、Photoshopが持っている[16bit/チャンネルモード]は、できるだけ画質を劣化させずに編集する重要なモードです。しかしながら、従来のPhotoshopは[16bit/チャンネルモード]で使える編集機能に大変大きな制限がありました。まず第一にレイヤー機能がまったく使えないこと。アルファチャンネルも使えなかったので、選択した範囲を保存することも、クイックマスクを使うこともできませんでした。
それがなんと、Photoshop CSでは[16bit/チャンネルモード]で[8bit/チャンネルモード]とほぼ同等のことができてしまうのです。つまり、レイヤーは使えるし、アルファチャンネルも使えるのです。これは嬉しいじゃありませんか。私はこの新機能だけでもPhotoshop CSを購入する理由になると思います。
画面8には、[16bit/チャンネルモード]で使える機能を掲載してみました。すべて網羅はできていませんが、これを見ることでPhotoshop CSの大きな進化がわかってもらえるはずです。
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●色の置き換えツール
前バージョンから登場した便利な機能に[修復ブラシツール]がありますが、この[色の置き換えツール]は[修復ブラシツール]に似た要領でターゲットの色を置き換えていける機能です。従来、ターゲットの色を置き換えるには、まず範囲選択する必要がありましたが、[色の置き換えツール]はターゲットの輪郭を自動的に検出してくれるため、輪郭がはっきりしている画像であれば、極めて簡単に色を置き換えていくことができます。
画面9の手順で、範囲選択をせずにブラシでターゲットを塗りつぶしいくだけです。描画色とまったく同じ色になるわけじゃありませんが、元の画像の背景とハイライトを残してくれるので、極めてリアルに色が変化していきます。
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●カラーの適用
同じ場所で、同じ環境で撮影したはずなのに、なぜか色味の違う写真が何枚もできてしまった…、なんて経験はありませんか?まぁその理由は置いといて…、そんなときに便利なのが、[カラーの適用]です。
[カラーの適用]は、色味の違う複数の画像を、どれも似通った色味に統一したいときに使うと便利な機能です。基本にしたい画像のカラー情報を使って、他の画像の色味を変更します。基本となる画像を「ソース画像」と呼び、もともと色味が違うが、これから同系色の色に変えたい画像を「ターゲット画像」と呼びます。
「ソース画像」と「ターゲット画像」を同時に開き、「ターゲット画像」をアクティブにした状態で、画面10の操作をします。
ただ、この機能は万能とは言いがたく、写真によってはとんでもない色味になってしまいます。どんな画像がうまくいくのか、もうちょっと使ってから報告したいと思います。
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●角度補正と切抜きの自動処理
A4フラットベッドスキャナで、L版サイズの写真をスキャニングするとします。あなたは、一枚ずつスキャンしますか?私は一枚ずつスキャンします。なんでって、スキャニング時にそれぞれの写真に対して適正と思われる補正をかける必要があるからです。一度にドンとはやりませんね。
でも、時間がない、面倒だ、どれも似た写真だ、なんてときは、一度に4枚置いてスキャニングした方がいいですよね。でもでも、写真が傾かないようにガラス面に並べるのは大変!
そんなとき便利なのが、[角度補正して切り抜き]コマンドです。
「俺のスキャナは自動で傾き補正してくれるからこの機能はいらねぇよ」とか言わないでくださいね。いいじゃないですか、ご愛嬌です。実際、結構便利ですよ。
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さて、今週はここまで。次回は来週水曜日に更新して、「UI関連」、「DVD・ビデオ関連」、「フィルタ関連」までご紹介しようと思います。残りは再来週ですな。あ〜、今年はPhotoshop CS情報で終わるわけですね。まぁいいかっ。それではまた来週〜。
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■おまけコラム・「もう不正コピーできないよ」 |
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ご存知の方もいるかもしれないんすけど、Photoshop CSも、とうとうライセンス認証というのをやらないと、使うことができなくなりました。いわゆるアクティベーションですな。あのMicrosoft Office XPやMicrosoft Windows XPが採用しているのと同じですね。
●ライセンス認証ってなんだ
パソコンにPhotoshopをインストールするというところまでは、従来のソフトとなんら変わらないんですけど、インストール後にアドビシステムズのサーバーにアクセスしてライセンスキーを取得しないと、30日後には使えなくなってしまいます。このライセンスキーを取得するための仕組みがライセンス認証で、アクティベーションとも呼ばれています。
ライセンスキーの取得とはいっても、Internetに接続されていればソフトウェアが自動的にやってくれるので、正規ユーザーであればライセンス認証そのものに不自由は感じないと思います。
●なんでそんなことするんだ?
要は不正コピーをさせないようにする工夫ですね。従来はシリアルナンバーで管理することで不正コピーを防止していましたが、この方法だとCD-ROMを丸ごとコピーして、シリアルナンバーを正規ユーザーから教えてもらえば、いくらでも不正コピーできてしまったわけです。これじゃぁ不正防止の意味がない。
ライセンス認証の仕組みを使うと、メーカーのライセンス認証用のサーバーからユーザーのパソコン一台一台に異なるキーが割り振られ、同時にユーザーのパソコン情報の一部(個人情報とは無縁のもの)がサーバーに送られ、メーカーのデータベースに保存されます。そのために、他のパソコンに同じパッケージのソフトウェアをインストールすると、ライセンス認証で「異なるパソコンに同じパッケージの製品がインストールされた」と認識されて、ライセンスキーの取得を拒否するようになっているのです。ただし、製品版では2台までのパソコンにインストールできるようになるようです。
●パソコンを買い換えたら?
パソコンを買い換えてから、それまで使っていたPhotoshop CSを再インストールすると、もちろんライセンス認証で拒否されてしまいます。その場合は、アドビシステムズの専用窓口に電話して、従来のパソコンのライセンス認証を解除してもらい、新しいパソコンで再度ライセンス認証する必要がありますね。えっ?面倒だ?まぁそういわないで。パソコンが新しくなったんだからいいじゃないっすか。
●ライセンス認証のメリット・デメリット
もともとライセンス認証はメーカーの利益を守るためのものなので、ユーザーのメリットはほとんどありませんよね。でも、ひとつだけあげるとすれば、頼まれて断れない間柄の人から不正コピーを要求されたときに、「ライセンス認証があるからコピーできないんだ」といって断ることができますよね。不正コピーによる処罰って、不正コピーした人だけではなく、不正コピーを容認した側にもあるわけで、たとえ嫌々ながらでも不正コピーに関与していたら、なんらかの処罰が下る可能性があるわけです。
デメリットは……。
これは個人的な考えなんですけど、Photoshopのような高価なプロ用ツールとなると、フリーのクリエーターは1本買うのが関の山。でも、今時はフリーのクリエーターでも作業の効率化を考えて2台以上のパソコンを持っているものです。片方で処理に時間のかかる作業をやらせておいて、他で別の作業をするって感じですね。これがPhotoshopの作業だとすると、両方のパソコンに同じようにインストールしておきたいと思うのが人情です。ライセンス認証だとそれができない……と思っていたら、どうやら、製品版のPhotoshop CSは1本で2台のパソコンにインストールできるライセンス契約になっているようです。であれば、Photoshop CSのライセンス認証によるデメリットは、パソコンを買い換えたときとにいちいちアドビシステムズに連絡しなければならないという面倒な作業が必要だ、ということだけのようですね。
ただ、Photoshopがライセンス認証を採用したことで、今後のPhotoshopの売れ行きが少し気になっています。私はある程度の不正コピーは商品の普及を考えると必要悪だと思っています。つまり、不正コピーによって初めてその商品に触れ、気に入ればいつかは購入しようと考えている人もいるわけです。ところが、ライセンス認証の採用によって必要悪も許されなくなったわけで、こうした「気に入れば購入するユーザー」を受け入れる門がなくなってしまうわけです。アドビシステムズ社としては、体験版やライセンス認証の猶予期間を「受け入れの門」だと考えているのでしょうが、さて実際はどうなんでしょうねぇ。
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