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〜女性の撮り方テクニック講座〜
萩原和幸の ポートレート撮影術 〜女性の撮り方テクニック講座〜
第二回 グラビア編 『谷内里早』 女優 作品解説 2011/07/27
 
谷内里早 萩原和幸のグラビア写真集&ポートレート撮影術 〜女性の撮り方テクニック講座〜
グラビアや広告写真の撮影等で活躍している萩原和幸先生が、女性の撮り方とポートレート撮影術を解説する新連載の第二回めです。今回は、谷内里早グラビア編に掲載した作品ひとつひとつについて、カメラマン自ら撮影状況やシチュエーションを解説する「作品解説」。「こういう写真が撮りたかった」のヒントがたくさん隠れています。(スタジオグラフィックス編集部)
  「制服」 作品解説 このページのトップへ  


 Portrait Risa #001
 
Canon EOS-1Ds Mark3
シグマ 50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF2.2 1/100秒
ISO250 WB:マニュアル RAW
  歴史的建築物の前で撮影。撮影時間は夕方に差し掛かるところ。天候は曇で全体に光が回った状態ではあるが、モデルは木の下で陰になるような状況。
全体の雰囲気をデフォルメせず、自然な距離感を出す為に、レンズは50mmを選択。構図は縦位置で上下1/2の構図、上の1/2に窓や木のグリーンを配置し、下1/2はモデルをシンプルに入れる。結果、葉をうるさく感じさせず、建物の水色や青にも合い、全体的に爽やかさが前面に出る印象になった。
絞りはF2.2。背景の建物とモデルとの距離はないが、あまり背景をシャープに出したくないことと、木の葉で前ボケを作ることが目的。背景がシャープになると、途端にうるさく感じるようになるので注意だ。
モデルに向って左側が陰になってしまったので、白レフでサイドから。モデルの足元にも白レフを1枚置いている。
モデルにはおしとやかな雰囲気が欲しいと伝え、大きな笑顔よりも薄くほくそ笑んでもらった。手持ち撮影。

 

 

 Portrait Risa #002
 
Canon EOS-1Ds Mark3 +
シグマ 50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF2 1/60秒
ISO250 WB:マニュアル RAW
 

1カット目の建築物にエントランスで。
モデルの感情が高まってきたことを察知し、カメラを構え、ファインダーを覗きながらの時間を過ごす。

レンズは50mm、感情をリアルな距離感でとらえたいと考えたからだ。絞りはF2。大きくボカすことで、今にも崩れそうな表情・感情など雰囲気を表現。少しずつ変わってゆくモデルの表情、瞳。その間会話は全く交わさない。余分な会話でモデルの気持ちが変わってしまうことを避ける為だ。涙が潤んだ時を待ち、数枚シャッターを切った。

モデルを中心より若干右側に配置、逆の左側には大きくグリーンのボケを見せることで構図全体のヌケをつくっている。またモデル背後のブルーがアクセントカラーになっている。 写真向って右側、やや下から煽るように白レフを1枚当てている。手持ち撮影。

 

 

 Portrait Risa #003
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  真っ直ぐに向けられた瞳を念頭に、グッと引きつける効果のある望遠ズームをチョイス。50-135mmズームレンズの135mm域、35mm判換算で約200mm相当になる。撮影時間は夕方、天候は曇天。写真向って右側、モデルの方から約2mほど離れた斜め後ろの位置にクリップオンストロボを設置し、ワイヤレスで発光し、髪にラインライトを付ける。曇天で光が回ってしまっている結果、写真全体がネムい印象になることを打開する為のコントラストを付けるのと同時に、無表情の中にも爽やかさを出すのが目的。写真向って左側に銀レフ1枚当てて、ストロボ光を拾っている。この位置からストロボを焚くと、レンズにまともに光が入ってしまうので、レンズ前でハレ切りをしている。
 

背景のカラーは2色、グリーンとブルーを配置することで奥行きを作っている。モデルをセンターに配置した、いわゆる“日の丸構図”だと、型にはまりすぎて瞳の印象が強くなりすぎてしまう。すこし右にモデルを配置することで奥へのヌキをつくり、印象を優しくしている。手持ち撮影。

Canon EOS 7D 
トキナー AT-X 535 PRO DX 50-135mm F2.8
絞りF2.8 1/100秒
ISO400 WB:マニュアル RAW

 

 

 Portrait Risa #004
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Canon EOS-1Ds Mark3
シグマ 50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF2.2 1/160秒
ISO250 WB:マニュアル RAW
 

カメラマンが見ているモデルとの自然な距離感をそのまま出す為に50mmをチョイス、対角線を意識した斜め構図にすることで、広がりと遊びを表現した。斜め構図は許される範囲での大胆さが必要で、中途半端な傾け方は避けた方がいい。

背景は洋館と判断できる程度のボカしで、状況の雰囲気を感じてもらう。またモデルの視線の先の空間(写真向って左側)を詰めることで、写真を見る者に『このような場所、彼女の視線には何があるのだろう…』と物語を想像してもらうのが目的だ。

風が吹きそうな気配だったので、待ってみた。ちょっとの髪の乱れが、写真に動きを作っている。レフ板は写真向って左から白を1枚。手持ち撮影。

 


  「夏休み」 作品解説 このページのトップへ  

 

 Portrait Risa #005
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Canon EOS7D +
トキナーAT-X 535 PRO DX 50-135mm F2.8
絞りF2.8 1/100秒
ISO400 WB:マニュアル RAW
 

夏休みでおばあちゃんのいる田舎に遊びにきている。朝の爽やかな時間帯に撮影をしたのだが、天候は生憎曇り空。夏の朝のクリアな陽射しを表現する為に、クリップオンストロボをワイヤレスで発光し、陽射しを作ることにした。
写真向って右側、モデルから3mほどの距離、高さは2m50cmほどの位置に設置。出来るだけ高くすることで、夏の角度のある逆光風の陽射しを目指す。髪のハイライトと葉に当たる光になっている。

レンズは35mm判換算で約180mm域の望遠レンズで。望遠レンズの圧縮効果で、その場の清々しい空気を閉じ込める。

優しいグリーンと白いワンピースでは淡いカラーばかりの構成で弱い印象の写真になってしまうので、アクセント代わりにあえて麦わら帽子は正面に持ってもらった。おかげで陽射し感も一層増した。レフ板は使用していない。一脚使用。

 

 

 Portrait Risa #006
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Canon EOS-1Ds Mark3
シグマ 50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF2.2 1/500秒
ISO200 WB:マニュアル RAW
 

この川は富士山の湧き水でできた川で、とても冷たい。ともに川に入り、モデルとそのロケーションの雰囲気を、見た目そのままでとらえようと50mm をチョイス。
モデルを浮かび上がらせながらも、背景が分かるほどのボケ味を考慮して、絞りはF2.2を選択。
モデルにはその場で自由に動いてもらいながら、目線の指示だけをしてシャッターを切る。

天候は曇り、水は冷たいが、お互いに盛り上がることが重要。ただ水が冷たく、足元も不安定なところでの撮影では、モデルに無理強いさせず、こまめにモデルの反応を観察したい。また夢中になると自分自身の足元が見えなくなったり、滑ったりと思わぬ事故に繋がるので気をつけたい。水辺では機材が濡れないようにとの配慮も必要だ。
レフ板は写真向って左側、モデルのサイドに白を1枚。手持ち撮影。

 

 

 Portrait Risa #007
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Canon EOS7D
トキナーAT-X 535 PRO DX 50-135mm F2.8

絞りF2.8 1/20秒
ISO200 WB:マニュアル RAW
 

古い農家にて撮影。
モデルが座っている奥(外)は縁側になっており、庭が広がっている。カメラは屋内、土間から囲炉裏のある板の間を挟んで、モデルには縁側に足を置いてもらい、柱を背負うように板の間と間に座ってもらった。

構図としては右上になる対角線で1/2になるように意識。下の1/2は板の間のボケと反射で冷たさや静寂を、上1/2で田舎に来ている物語を展開。35mm判換算で約200mm域となる望遠ズームで圧縮、構図の中に両面を閉じ込めた。
写真右側からファインダーに入るギリギリの位置から白レフ1枚。シャドウ部の肌や目の表情が写る明るさをキープした。銀レフだとシャドウの部分があかるくなりすぎて、モデルが変に浮かび上がってしまう。このようなカットはシャドウが命なので、レフに注意したい。三脚使用。

 

 

 Portrait Risa #008
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  7カット目の農家の土間から外に出てきたところで。土間の向こう(奥)の戸を開き、その先の庭のグリーンが構図に入るよう、横位置に構える。空は厚い雲に覆われていて、フラットな光。レンズは見た目に自然になるよう85mmを選択。構図はモデルをセンターからやや左に配置し、右側の土間からヌケたシャドウの中のグリーンが引き立つようにした。また構図左側にはモデルをギリギリに入れることはせず、あえて戸の部分を入れることで距離の対比が生まれ、右側のグリーンのボケとシャドウによる空気感が一層感じられるように配慮した。
 

モデルには幼なじみが尋ねてくるのを待っているような気持ちで、とお願いする。レフはモデルの足元に白を1枚、手持ち撮影。

Canon EOS-1Ds Mark3 +
シグマ 85mmF1.4 EX DG HSM
絞りF2.2 1/80秒
ISO200 WB:マニュアル RAW

 


写真や本文の無断転用・転載はかたくお断り致します。

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モデル プロフィール
谷内里早 (たにうち りさ)
1993年12月11日生まれ、東京都出身。TV、映画、CMなど、多方面で活躍中。
現在CMは、FUJITSU『暮らしと富士通』、ORIHIRO『ぷるんと蒟蒻ゼリー』がOA中。
映画『魔法少女を忘れない』ヒロイン北岡みらい役。
またNHK『すイエんサー』に出演中。

著者プロフィール

次回予告
次回はスタジオで水着撮影の『テクニック編』。
モデルは纐纈みさきさん。スタジオでの撮影の肝となるレンズワークとライティングについて 水着での作例を交えながら解説していきます。
これから水着撮影に挑戦してみたい!と思っている方、必見です。

Staff & Special Thanks
スタリング 米丸友子
ヘア&メイク 森下奈央子
撮影協力 三島市
富士市・富士市立博物館

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初出:2011/07/27
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