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新・女性の撮りかた講座
第2部 太陽光との上手な付き合い方
第20回 順光と斜光を上手に使うには 2005/04/13
 
■やはり野に置け…
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 以前、「スタジオとロケとどちらの撮影が好きですか?」と、屋外ロケのときにモデルの女の子から聞かれたことがあります。「そりゃもちろん…」と答えようとして、迷ってしまいました。スタジオはライティングのすべてを自分で自由にコントロールできるので、思い通りの写真が撮れるのがいいし、女の子とマンツーマンで対峙できるから、撮影に思い切り集中できます…。対して屋外でのロケは、ライティングが大変。自然は気まぐれで、一瞬たりとも光や風は同じ顔を見せてくれないし…。撮影前からイメージしていたように撮れたなんてこと、数えるほどしかありません。その場の光を読んで、臨機応変に対応していくのが大変で、この場合はこうしてなんて考えていると、次の瞬間は太陽が雲に隠れたりしています。光待ちとか風待ちなんて悠長にしてられるほど呑気な仕事でもありませんしね。というわけで、本当は「スタジオ撮影が好き」と答えるつもりだったんですけど、質問してきた女の子を見ていたら考えてしまったんです。だって、上記したことは全部カメラマン側の言い訳みたいなもので、モデルのことはなにも考えてないでしょ? スタジオとロケ、どっちの方が女の子のいい表情を引き出すことができるか…。この視点でもう一度考えないとと思ったわけです。で、結論はというと、「やはり野に置け蓮華草…」ということになりますでしょうか。

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写真0 モデルに太陽の方向に顔を上げてもらい、カメラマンは低い位置に構えて青空をバックにしての撮影です。ピンク色のショールを顔の前で広げてもらい、レフ板の代わりにしています。
撮影データ (写真をClickで拡大)
  モデル:藍 海夏

 

 さて、前置きが長くなってしまいましたが、「新・女性の撮りかた」の第2部は、太陽光を上手に使うことで、いかに女性を魅力的に撮るかをテーマにして、そのテクニックを紹介していこうと思います。第2部の初回は、もっとも基本的なライティング、順光と斜光の上手な使い方です。

   
■光の種類・順光のメリットとデメリット
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 既にご存知のことだと思いますが、写真を撮る上での光には、被写体への当たり方によって、以下のような種類があります。

光の種類

 
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 それぞれの光には、それぞれに特性がありますので、撮りたい写真のイメージにあわせて使い分ける必要があります。ここでは、女性に限らず、ポートレートでの基本ともいえる「順光」について紹介しましょう。

順光とは

 

 「順光」とは、 太陽などの光源が、カメラの背後にある状態をいいます。これはつまり、被写体に対しても正面方向から光が当たっていることになります。順光は、光が平均して被写体に回り込むので、全自動で撮影しても比較的簡単に露出を決定できます。被写体が暗くなる露出不足などとは縁遠いライティングだといえます。逆に、完全な順光による撮影は、被写体が立体感に乏しく平面的になりやすいのが欠点だともいえます。

順光で注意すること

 

 写真1を見てください。これも「順光」で撮影した写真の一例ですが、せっかくモデルがいい表情をしているのに、鼻やアゴの影がくっきりと出すぎています。また、瞳にキャッチライト(光)が入っていないので、表情が生きてきません。この原因は、太陽の位置(解説2)です。一年を通して太陽が人と同じ高さになるのは朝夕しかありませんよね。普通のポートレートを撮るのに適した時間帯では、太陽は必ず上にあるはずです。ですから、解説2のような状態となり、顔に影が出やすくなってしまうわけです。

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解説1 順光とは (図をClickで拡大)

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写真1 順光で失敗しやすいこと
 
太陽が比較的高い位置にあるために、喉元に影が強く出てしまったのと、瞳にキャッチライト(光)が入っていないために、魅力が半減しています。
撮影データ (写真をClickで拡大)
  モデル:藍 海夏

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解説2 太陽が高い位置にあると、顔に影が出る。(図をClickで拡大)
   
■影を弱くする方法
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顔を上げて撮影

 

 上記したような失敗を防ぐには、意外に簡単な方法があります。それは解説3のように、太陽のある方向に、少しだけ顔を上げてもらえばいいんです。「なんだよそれ」と思うかもしれませんが、撮影術なんてそういうものなのです。(笑) 顔を上げてもらったことで、影の出方は弱くなるはずです。もちろん、あまり顔を上げすぎるとアゴが上がってしまい、魅力的な写真とはいえなくなってしまうこともあるので注意しましょう。また、顔を上げてもらったら、モデルの目線は顔を上げた方向に向けてもらうようにします。顔を上げた状態でカメラ目線にすると、変な表情になってしまいますからね。

ローアングルで撮る

 

 写真0は、モデルに少しだけ顔を上げてもらい、さらに、カメラのアングルを下げて、モデルを見上げるようにして撮影しています。このときのポイントは、瞳にキャッチライト(光)が入るアングルを探すことです。モデルのポーズが不自然にならないように注意しながら、キャッチライトが入るアングルを探しましょう。キャッチライトはポートレートの命です。

衣服をレフ板代わり

 

 おなじく、写真0では臨機応変なテクニックを使っています。それは、モデルが身に着けていたピンク色のショールを体の前方に広げてもらい、レフ板代わりにしていることです。ちゃんとしたレフ板と違って強い反射光は得られませんが、影を弱くする程度には役立ってくれるはずです。ただし、青や緑などの、肌色とは縁遠い色の衣服をレフ板代わりしてはいけません。顔色が悪くなってしまいます。

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解説3 顔を上げてもらい影を弱くする。
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写真0 モデルに太陽の方向に顔を上げてもらい、カメラマンは低い位置に構えて青空をバックにしての撮影です。ピンク色のショールを顔の前で広げてもらい、レフ板の代わりにしています。
撮影データ (写真をClickで拡大)
  モデル:藍 海夏
   
■斜光を使うとより魅力的
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斜光とは

 

 斜光とは、太陽などの光源が被写体の前方斜め上方からあたることをいいます。写真2のように、斜光を使って撮影すると、影によってモデルに立体感を出すことができます。ポートレートだけではなく、撮影術全般において、もっとも基本的なライティングです。


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解説4 斜光とは (図をClickで拡大)

 

 顔に影ができやすいという点では、斜光も順光も同じで、余分な影をなくす方法も上記したことを参考にしてください。

青空をキレイに表現するには

 

 ローアングルで撮影すると、背景に空を取り入れることができます。しかし、何も考えずに空をバックに撮影すると、モデルの顔が暗くなるか、または、せっかくの青空が白く飛んでしまいがちですよね。では、写真0写真4のように、空と顔をバランスよく撮るにはどうしたらいいのでしょうか。それは…、次と、さらに次の撮影術でご紹介します。お楽しみに。

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写真2 瞳にキャッチライト(光)が入る位置を探して撮影。日差しがまぶしいために目に力が入らないように、シャッターを下ろす瞬間までは目を閉じていてもらいます。
撮影データ (写真をClickで拡大)
  モデル:藍 海夏

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写真3 夏の正午とはいえ、雲が多かったので光が和らいでいます。補助光として E-20 の内蔵ストロボを弱めに発光させています。
撮影データ (写真をClickで拡大)
  モデル:藍 海夏

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写真4 以前、ボツ写真で掲載したものですが、今回の内容にぴったりだったので取り上げました。某公園の高いところに昇ってもらって、下から見上げての撮影です。夕方まであと少しという時刻で、モデルの全身に光が当たってくれました。
撮影データ (写真をClickで拡大)
  モデル : 寺崎 佑紀
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写真5 2年前に撮った写真ですが、斜光の一例として掲載します。基本的に、斜光は順光よりもコントラストが強くなりがちですが、この写真の場合は、カメラの下にレフ板(白)を置いて撮影しているために、斜光のクセが出ていません。
撮影データ (写真をClickで拡大)
  モデル : 渋谷 真理子
 
 
初出:2005/04/13 このページのトップへ
 

     
 
 

     
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