コンテンツのトップページへ 薮田織也の プロが教える
新・女性の撮りかた講座
第1部 人工光で女性を演出
第18回 簡単な照明でプロライクな撮影を! 2005/02/02
 
■家庭によくある照明を使おう
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ
 

 二週間ブリのご無沙汰でした。皆さんいかがお過ごしでしょうか。挨拶はさておき、前回はストロボを上手に使うためのテクニック、「ストロボ」の「バウンス発光」について解説しました。ポイントは、ストロボを被写体に直接照射するのではなく、壁や白い紙などに反射させて使うことで、ストロボの光がやわらぎ、また、被写体に当たる光が正面照射でなくなることで、平坦な絵になることを防ぐと、まぁそういう内容だったわけですね。

●レフ板は嫌い?

 

 しかし、バウンス発光というものは、撮影のイメージに合った都合の良い壁がその場にあればいいのですが、光を反射しない黒っぽい壁や天井しかないときは困りものです。なので、結局、前回の写真3のように、光を反射させるモノ(レフ板や白い紙など)を用意しなければならないのですが、このレフ板、私は個人的にあまり好きじゃありません。

▼写真0  
Clickで拡大
ストロボは炊かず、室内照明と、設置した2つの照明だけで撮っています。 ISO 感度 800 で撮影したため、かなりノイジーになってしまいました。
モデル : 澤口留美
 

 レフ板の光が中途半端に不自然な感じがするのと、モデルと二人きりでの撮影では設置が面倒だからというのが理由です。(三脚に設置できるレフ版もありますが…) どうせ不自然な光なら思い切り照明を当ててしまった方が面白いと思いませんか? 照明もセッティングが必要ですけど、三脚に付けてしまえば移動や角度の調整が簡単です。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回はストロボ以外の照明を使って撮影するテクニックにチャレンジしてみましょう。ストロボ以外の照明とは言っても、何もプロ用の機材を使うわけではありません。ここでは、家庭によくある照明や、比較的安価に購入できるライトを使います。

   
■家庭によくあるかは知りませんが…
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ
 

  写真1は、今回の撮影で大活躍したソニー製のバッテリービデオライト、HVL-20DM です。です。本来はビデオ撮影用なのですが、スチール撮影にも便利です。ハンディタイプのビデオカメラに取り付けて使うタイプのものを、三脚にセットして使ってみました。光源はハロゲンライトで、20W (2灯) と 10W (1灯) の切り換えができます……。 えっ? ビデオライトなんか持っていないですって? なければないで、机の上の蛍光灯や白熱灯でもいいんです。以前やった白熱灯でもいいんですよ。(第12回 裸電球で影のある写真を撮る) それに、ビデオライトなんていうと光量が強そうに感じるかもしれませんが、ここで使っているビデオライトも2灯で 20W ですから、たいした光量ではありません。ただ、ビデオライトだと三脚に取り付けられるので、照射角度や位置、高さを簡単に調節できるので便利なんです。このビデオライトは定価で 10,500 円ですが、実売価格は果てしなく安くなっていますから、机の上の照明を購入するつもりで、この際、どうですか?


●色温度が気になる方へ

 

気になる光源の色温度についてちょっとだけ書きます。

▼写真1 機材
Clickで拡大
ソニー製のバッテリービデオライト、HVL-20DM です。ハンディタイプのビデオカメラに取り付けて使うタイプのものを、三脚にセットして使ってみました。光源はハロゲンライトで、20W (2灯) と 10W (1灯) の切り換えができます。
 

 このビデオライトの場合は「ハロゲンライト」を使っていますが、ハロゲンライトの場合は、大体、白熱灯と蛍光灯の中間くらいに位置します。ここで使ったビデオライトは、およそ 3000K より少し上って感じですが、もちろん、ハロゲンの種類で色温度はさまざまで、中には昼光色(デイライト)に限りなく近いものもあります。いずれにしても、色カブリを気にするのなら、撮影前に使う照明に合わせてカスタムホワイトバランスを設定しておくことです。ちなみに、ここでの写真は全てオートホワイトバランスで撮影しました。室内の雰囲気をそのまま表現したいときは、無理にホワイトバランスを調整する必要はないかと思います。

さて、このビデオライトのみを使っての撮影にチャレンジしてみましょう。

 

ホワイトバランスと色温度については → 第4回 ホワイトバランス徹底解説!
   
■ビデオライトのみで影のある写真を撮る
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ

●ビデオライトの光量や位置を調整

 

 ビデオライトだけでも、いろいろと表情のある写真が楽しめます。写真2は、ビデオライトの光量を 10W に落とし、さらにモデルから遠ざけて柔らかい光にしています。モデルの背後には、室内にある照明を灯らせて、モデルの髪の毛が背景に溶け込まないようにしています。



●主題を照らす

 

 ビデオライトの灯りは、モデルの胸元を狙っています。そのために顔が多少暗くなってしまいますが、それでいいんです。私はこの写真でまず、モデルの胸元を、次にモデルの表情を見せたいと思いました。だから、顔よりも胸の方を明るくしたのです。つまり、写真における撮影者の意図は、光のコントラストによって見る人に伝わるというわけですね。写真2では、モデルに官能的な表情にチャレンジしてもらったので、それに合わせたライティングを心がけてみました。


●影を演出しよう

 

 写真3写真4は、ビデオライトを 20W に上げてモデルに近づけることで、コントラストの高い影がくっきり出る写真にしました。もちろん、ビデオライトの位置や高さも変えて、影の出方を変えています。

 写真2写真3写真4のライティングは、照明1を見てください。

 

▼写真2  
Clickで拡大
ビデオライトを 10W に切り替えて光を弱くし、さらにモデルから離して柔らかい光にしています。
ピンが甘いのが残念ですが…。マクロレンズで絞り開放ですから、ピントをきちんと合わせないとこういうことになってしまいます。反省…。でもまぁ、雰囲気が出ていればそれでいいんです…。
モデル : 澤口留美
 
▼写真3  
Clickで拡大
ビデオライトを 20W に切り替えて強い光を当てています。モデルの背後から照明が当たっているようですが、これは室内の照明と、モデルの右前方に設置したビデオライトの反射光ですね。モデルの瞳を見てください。キャッチライトがきちんと入っています。照明を当てるときは、必ずキャッチライトが入るように心がけるといいですね。
モデル : 澤口留美
▼写真4  
Clickで拡大
ビデオライトを 20W に切り替えて強い光を当てています。思い切りコントラストを強くして、影を楽しみます。人物の皮膚のハイライトが飛ばないように、一段絞り込んだのですが、それでも光が強すぎたようですね。
モデル : 澤口留美


●ビデオライトの光量や位置を調整

 

照明1は、写真2写真3写真4のライティング方法です。ここで注意したいのは、ビデオライトとカメラの位置です。20W とはいえ、暗い室内での撮影では、かなり強い光量といえますので、カメラのレンズやファインダーにビデオライトの光が入り込まないように考慮する必要があります。もし三脚を使ってファインダーから目を離して撮影する場合は、ファインダーに光が入らないように塞ぎます。一眼レフカメラの場合は、「アイピースシャッター」という、ファインダーに入る光を遮蔽する機能がありますので、それを使うのもいいでしょう。

 

▼照明1  
Clickで拡大
写真2、3、4は、こうしたライティングで撮影しました。ポイントは、モデルの瞳にキャッチライトが入るようにライトを設置することです。また、ビデオライトとカメラの位置関係によっては、カメラのファインダーから光が入り込み、ハレーションを起こすことがあるので気をつけましょう。
   
■ビデオライトとストロボ、そして懐中電灯を使う
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ
 

次は、ビデオライトに加えて、カメラに付けるストロボと、懐中電灯を使って撮影してみましょう。懐中電灯で何するんじゃいと思った方もいるでしょうが、別に変なことをするんじゃありませんよ。 えっ? 誰も変なことなんか想像してませんか。そりゃすみません。


●ランタンも役に立つ

 

 写真9を見てください。懐中電灯というより、アウトドアで使うランタンですね。今回の撮影で、もしかしたら使えるかもって、ただそれだけの発想で現場に持っていったんですけど、結構役に立ちました。この電灯は、ダイヤルが付いていて、懐中電灯のようにポイントだけを照らす「サーチライト」モードと、周囲を幅広く照らす「ランタン」モードがあります。ダイヤルを途中で止めることで、照らす範囲を微調整できます。この電灯も高価では決してありません。ディスカウントショップで 1,000 円もしなかったんじゃないかと記憶しています。



●いろんな照明を使ってみよう

 

 さて、この懐中電灯とビデオライト、そして、ストロボを使っての撮影です。まずは、写真6を見てください。この写真のポイントは、モデルの輪郭が浮き出ていること、さらに、産毛が見えることです。室内は写真2写真3写真4と一緒の環境光に乏しい暗い室内です。こうした写真を撮るライティングは、照明2の感じです。つまり、モデルの背後に置いたビデオライトで逆光の環境を作り、モデルの輪郭を際立たせているのです。で、逆光によって当然暗くなってしまう顔は、カメラに取り付けたストロボを、撮影者の背後になる白い壁にバウンス発光して補うわけです。また、先ほど登場した懐中電灯をサーチライトモードにしてモデルの顔に向け、瞳にキャッチライトを入れると、こういうわけですね。

 写真7写真6とほぼ同じライティングで、違うのは、ストロボをモデルの正面にある白い壁にバウンス発光させていることと、懐中電灯をランタンモードにして、環境光にしている点です。


  ここで紹介した写真は、普段のポートレートではあまり撮ってもらえないものなので、一般の女の子はとっても喜びます。ぜひ、撮ってあげてください。(笑)

▼写真6  
Clickで拡大
ビデオライトをモデルの背後に置き、逆光にします。暗くなる顔は、ストロボのバウンス発光でサポートし、懐中電灯はキャッチライトを入れるために使います。モデルの髪の毛の周囲と肌の産毛に注目してください。背後からの照明によって浮き上がって見えますよね。暗い室内でこうした撮影をするには、モデルの背後に照明を置いて、逆光の撮影をします。また、他の補助光として、モデルの左前方に弱い照明を置き、さらにストロボを自分の背後の壁にバウンス発光しています。こうすることで、逆光で露出不足になるモデルの前面を明るくしています。
モデル : 澤口留美


▼写真7  
Clickで拡大
写真6とほぼ同じ設定で撮影しました。ストロボはモデルの正面にある壁にバウンスさせて、懐中電灯はランタンモードにして、環境光にしています。
モデル : 澤口留美

 
▼照明2  
Clickで拡大
ビデオライトをモデルの背後に置く、写真6、7のライティングです。モデルの背後に置いたビデオライトが、直接レンズに入らないように、モデルとカメラの位置関係に注意します。
▼写真9  
Clickで拡大
ディスカウントショップで買ってきた、アウトドア用のやっすーい照明です。ダイヤルでサーチライトとランタンモードを切り替えられます。意外に役立つ懐中電灯。ん? 懐中には入らない大きさですね…。
   
■懐中電灯は演出効果抜群
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ

●妖しい写真を撮るなら

 

 最後に、懐中電灯で演出した写真を紹介して今回はおしまいです。

 写真10は、写真6写真7と同じように、ビデオライトで逆光を作り、後は懐中電灯で首筋をピンポイントで照らしています。こうすることで、モデルの表情とも相まって、なんだか妖しい雰囲気の写真になりました。懐中電灯以外の照明を全て消して、ピンポイントで照らした写真というのも面白いかもしれませんね。結構、エッチな写真が撮れるかもしれません。(笑)

 さて、今回はカメラ専用というわけではない照明機材を使ってのライティング技法を紹介したわけですが、次回は「第一部 人工光で女性を演出」の最後として、「ストロボの多灯撮影」を紹介したいと思います。(まだこのネタの撮影をしていないので、もしかしたら変更になるかも…)

 それでは、また次回まで。さようなら。

▼写真10  
Clickで拡大
モデルの背後にビデオライトを置いて逆光にし、写真9の照明をサーチライトにしてモデルの首筋に当てています。
モデル : 澤口留美

▼照明3  
Clickで拡大
モデルの前方から当てる照明は、懐中電灯でも構いません。あくまでもピンポイントでモデルを照らして演出用として活用するのです。

     
 
初出:2005/02/02 このページのトップへ
 

     
 
 

     
リンクについて
著作権について
プライバシーポリシー