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女性の撮りかた講座
第4回 ホワイトバランス徹底解説!
〜 自然な色味と演出する色味 〜 2003/6/25
 
ホワイトバランスとは?
プリセットホワイトバランスとは?
自然な色味なんてつまんない!
プロのカメラマンにインタビュー
■カメラマンはストイックであれ 野内幸雄
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  ■ホワイトバランスとは? このページのトップへ  

  とーとつですが、週刊の連載って初めて担当したんですけど、すんごい大変なんですねぇ〜。もう死にものぐるいで原稿書かなければいけない。レタッチ講座と同時の締め切りだし他の仕事はあるしで、この1ヶ月というもの徹夜の連発でした。いやはや、週刊連載やってる漫画家さんが病気でよく休むのが理解できました。私もそろそろ病欠を宣言しておこうかな。海や山がおいらを呼んでるし……。

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写真1 写真をClickで拡大

 戯言ともいえる冒頭文ですんません。本題に入ります……。

●色温度って知ってますか?

 「ホワイトバランス」を語る上で不可欠なのが「色温度」です。聞いたことはありますよね。色温度(いろおんど)とはいっても色そのものに熱いとか冷たいとかの温度があるわけではなく、色温度とは「光の色」を数値(単位:ケルビン)で表したものなのです。さらに光の色とはいっても、信号機ような色のことではないんです。信号機の色は光源をフィルタで着色したものですからね。「じゃぁ光の色ってなんなんだよ」ってことになるわけですが…。ちょっと回り道していいですか?

 ローソクの炎をよく観察してみると、芯の部分は暗い赤ですが、芯から離れるにしたがって明るい黄色に近づいていますよね。このとき、暗く赤い部分と明るく黄色の部分の温度を調べると、赤い部分より黄色の部分の方が高温なのがわかります。さらに、ローソクの炎にガラス管などで空気を吹き込んでみると青白い炎が出現します。この青白い部分の温度は黄色の部分よりさらに高温になっています。……もうちょっと回り道します。

 あらゆる波長の光を完全に吸収し、まったく光を反射しないものを完全黒体と呼びます。この完全黒体を高温に熱すると光を出しますが、その光の波長の長さとそのときの完全黒体の温度に一定の関係があるといわれています。その完全黒体の温度(絶対温度・ケルビン)によって表現されるのが光の色度、つまり色温度というわけです。色温度が低い光は赤く、高くなるにつれて青みを増していきます

 なんだか結局とんでもなく遠回りしてしまったようですが、色温度というものがなんとなくおわかりいただけたのでは……? 

●ホワイトバランスは人間の目?

 「色温度がなんなのかわかったけど、見た目には光に色があるようには思えねぇぞ!」と疑問を持った貴兄にお答えします。光に色がついていたとしても、人間の目は本来の色に見えるよう補正機能が働くから、そんなに光の色の違いを感じないのです。ところがデジタルではないカメラで使うフィルムには、光の色が補正されずに焼き付いてしまいます。一般的によく使われるデイライトフィルムは、5200〜5500Kの光源で最も正しく色再現されるようにカラーバランスが合わせてあるフィルムなので、晴天の屋外では正しく色再現され、朝や夕方は赤っぽく、曇りや日陰は青っぽくなります。(写真1参照)

 「んー、デジタルカメラで撮るとそんな感じにならないぞ!」とさらに疑問を持った貴兄にお答えしましょう。これは、「ホワイトバランス」という機能がデジタルカメラにはあるからなのです。

  「ホワイトバランス」は、さまざまな色温度を持った光源下で白い被写体を白く写すための機能です。通常、オートホワイトバランスに設定しておくと、光の色温度にあわせてホワイトバランスが働き、適正と思われる色合いに調整してくれるわけです。なんだか人間の目に近い機能ですね。……あっ、なんだかこのあたり文字ばっかじゃないですか。いかんいかん。

●オートホワイトバランスは人間の目ほど万能じゃない!

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写真2 写真をClickで拡大
  モデル:寺崎佑紀

 オートホワイトバランスと格好良く名乗ってはいますが、実はこいつ、人間の目ほど万能じゃないんですよ。写真2を見てください。この写真は白色蛍光灯しかない洗面台でオートホワイトバランスによる撮影です。液晶などの輝度の高いディスプレイで見ると「自然な写真じゃん」になるかもしれませんが、デザイナーたちが使うキャリブレーションされたディスプレイで見るともろに緑がかって見えます。この環境は人の目にはまったく緑がかってなんかは見えません。

 「なんだよ、オートホワイトバランスもたいしたことないじゃん」とお嘆きの貴兄にお答えしましょう。貴兄のために、「プリセットホワイトバランス」があるのです!

 

  ■プリセットホワイトバランスとは? このページのトップへ  

●オートが効かない?

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写真3 写真をClickで拡大
  モデル:寺崎佑紀

 プリセットホワイトバランスとはなんでしょう。プリセットされたホワイトバランス…。つまり、あらかじめ登録されたホワイトバランスってことですな。(そのまんまじゃないか!)

 写真1をもう一度ご覧くださいな。これは当講座で使っているOLYMPUSのE-10というデジタルカメラに搭載されているプリセットホワイトバランスを色温度に対応させたものです。晴天の屋外では5500k、曇天では6500k、白熱電球では3000kというように、あらかじめセットされたホワイトバランスを使うと、自然な色味で撮影できるというわけです。

 「どんな光源でも自然な色味で撮ってくれるのがオートホワイトバランスじゃないの?」と思うかもしれませんが、先にも書いたようにオートホワイトバランスも万能じゃありません。 写真2のように、オートで撮影しても緑がかってしまうことがあるのです。そこで、プリセットホワイトバランスを使って、4000kで撮影したのが写真3です。どちらが自然な色味に見えますか?つまり、オートではイメージどおりの写真が撮れないといったときに使うのがプリセットホワイトバランスです。

●蛍光灯によっては色が違う?

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写真4 写真をClickで拡大
  モデル:澤口留美

 蛍光灯なら4000kでいいんだなっ、と思うとこれがまたそうでもなかったりするのがホワイトバランスの難しいところです。写真4を見てください。この写真も蛍光灯しかない洗面台で撮影したものです。写真4の上の写真は写真3と同じ4000kで撮ったものですが、赤味が強くなっています。そこで3700kにして撮影したのが下の写真です。こちらの方が自然な色合いに見えますよね。本来3700kは朝や夕方の弱い光で、赤味が強くなるのを抑えるためのプリセットホワイトバランスです。また、写真4の蛍光灯は昼白色蛍光灯だったのですが、昼白色蛍光灯で自然な色味を出すには4500kを使うべきなのです。ところが4500kでは4000kよりも赤味が強くなってしまうのです!! 原因を探ると、この蛍光灯に使われていたカバーが汚れていたことと、古くなっていたため、蛍光灯の光がかなり弱まっていたからでしょう。

●赤なら下へ青なら上へ!

 以上のことから、プリセットホワイトバランスも状況にあわせて使わないと自然な色味で撮影できないということがわかります。幸いデジタルカメラは液晶ディスプレイで撮影結果を確認できます。その場その場で、色味を確認しながらプリセットホワイトバランスを使うようにするのがポイントです。もし、現在設定されているプリセットホワイトバランスで赤味がかってしまったら色温度が下のホワイトバランスへ、逆に青味がかってしまったら色温度が上のホワイトバランスへ設定して撮るとよいでしょう。

 

  ■自然な色味なんてつまんない! このページのトップへ  

●わざと違うホワイトバランスを使う

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写真5 写真をClickで拡大
  モデル : 寺崎佑紀

 これまでは、いろんな光源下において自然な色味で表現する方法を紹介してきましたが、いっつも自然な色味じゃなんだか味気ないですよね。写真5は白熱灯ひとつだけで撮影したものですが、ホワイトバランスを3000kに設定したので、比較的自然な色味になりますが、白熱灯の雰囲気が表現されないので今ひとつつまらない写真になっています。

 そこで、わざと異なるプリセットホワイトバランスを使っていろんな色味を楽しんでみましょう。写真6から写真9はまったく同じシチュエーション(白熱灯ひとつだけ)で撮影したものですが、ホワイトバランスと露出時間、そしてモデルに当てる光の角度をいろいろと変えて撮影しています。佑紀ちゃんの表情と一緒で、光の使い方ひとつで写真の表情はコロコロと変わるんです。

 今週はこれで終わり。また次回お会いしましょう。

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写真6 写真をClickで拡大
  モデル : 寺崎佑紀
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写真7 写真をClickで拡大
  モデル : 寺崎佑紀
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写真8 写真をClickで拡大
  モデル : 寺崎佑紀
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写真9 写真をClickで拡大
  モデル : 寺崎佑紀

  ■カメラマンはストイックであれ このページのトップへ  

Q.これからデジタルカメラを始めようとする読者にアドバイスをいただけますか?

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  写真家:野内幸雄

野内 「アドバイスってほどじゃないんだけど、カメラが上手くなりたいのなら、カメラ自体のことをもっとよく知って欲しいよね。最近のカメラって全部自動でしょ。本当に上手くなりたいならマニュアルを勉強しないと駄目だと思うんだ。だから、できるだけマニュアルで操作できるデジタルカメラを購入して欲しいな」

Q.マニュアル操作というと?

野内 「カメラには3つの要素があるよね。ひとつはピント、次にシャッタースピード、そして絞り。まずは、ピント合わせをオートに頼らないようにすることだね」

Q.仕事での撮影なんかですとオートフォーカスに頼っちゃいますよね

野内 「僕もそうだよ(笑)。でもね、マニュアルじゃないと駄目なシチュエーションってあるんだ。たとえば、人物をフレームの端において撮影するときは、オートフォーカスの場合だと一度被写体にフォーカスを合わせてからフォーカスロックしてフレーミングに移るでしょ。これって、1回の撮影に2回の動作をすることになるわけだよね。でももし被写体がフォーカス合わせしているときにとってもいい表情したらどうする?フレーミングしているうちに表情が変わっちゃったら、それってすごい損失だよね」

Q.つまり、人物撮りはフレーミングとピント合わせを同時にしろと

野内 「その通りだよ。写真はね、中心に重要なものがない方がいいんだ。ずれてた方がいい。どこまでずらしてバランスを取るかが大切だよね。そんなときピントを合わせてから、フレーミングしてたんじゃタイムラグができちゃう。人物は動くのが当たり前なんだからこのタイムラグでポーズも表情もどんどん変わっちゃう」

Q.マニュアルフォーカスの場合、カメラによって中央でしかピントの合わないものもありますよね

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野内 「うん。だからカメラ選びのときにピントが全面マットのマニュアルなものを選ぶといいよ。全面マットならフォーカスリングを操作したときに、ファインダーの全てでフォーカスがあっているかどうかを確認できるんだ。こうしたカメラでマニュアルフォーカスに慣れていれば、フレーミングしたと同時にピントを合わせられる」

Q.残りの要素は?

野内 「絞りとシャッタースピードの関係だね。今のカメラはAE化されているから、この関係がわからなくても適正と思われる写真が簡単に撮れるけど、AEに頼っていると画一的な写真しか撮れなくなってしまう。マニュアルで撮影するとき、人物写真の場合は背景をぼかすことが多いから開放で撮るようにするわけだけど、AEだと光の当たり方によっては絞りが一定じゃないよね。だから、マニュアルが便利なんだ。絞りを開放に設定したら露出はシャッタースピードで決めるといったようにね」

Q.上手くなりたいならマニュアルでまず勉強ということですね

野内 「カメラマンはまずストイックであることが重要だね。オートという機能は便利だけどカメラマンを堕落させてしまう諸刃の剣なんだ。オートはいざというときのためにとっておいて、普段はマニュアルで練習。そうしたストイックな心構えと普段の練習がカメラの腕を上達させていくんだよね」

 

 
 
初出:2003/6/25 このページのトップへ
 

     
 
 

     
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