トップページへ デジタルカメラ
レンズフィルター初級講座
デジタルカメラ レンズフィルター 初級講座
第7回 NDフィルター(3) 長時間露光で通行人やクルマが消える 2011/08/31
 
デジタルカメラ レンズフィルター 初級講座
今回もPLと並んでデジタルカメラ時代でもすごく役立つNDフィルターを解説します。NDの最終回。これまでは水の流れを白糸のようにきれいな筋に撮影する方法を解説してきましたが、今回はNDフィルターを使ったその他の利用方法を解説します。
Photo & Text by 神崎洋治
  サングラスとNDフィルター このページのトップへ  

NDフィルター」は減光フィルターで、レンズにとってはサングラスのような効果を示すことを前回も解説しました。サングラスは光がまぶしいときに装着することで目に負担のない明るさで見ることができますよね。普通、年中かけている必要はありませんが、日中には常備すると便利ですね。

これをレンズに置き換えると、直射日光が照りつけるような明るい環境ではNDフィルタを装着して減光することで絞りやシャッター速度の選択の幅が拡がったり、より理想的な色表現ができる場合があるということです。もう少し具体的に話しましょう。

オート撮影の場合

Clickで拡大
晴天下でフィルターなしで撮影した写真。絞り優先F2.8、シャッター速度1/2000。
Clickで拡大
ND8フィルターを装着して撮影。サムネイル(縮小画像)では上の写真とほとんど違いがわかりませんが、拡大すると違いがわかります。コップの反射表現等は色合いも深く破綻していません。F2.8、シャッター速度1/400 (ケンコートキナー「Zeta ND8」使用)

まず主にカメラの設定をオートでしか撮影しない場合、日中の屋外などの明るい、もしくは明るすぎる場合はカメラは絞りをある程度絞って(光の量を減らして)露出を調節します。背景をボカして撮影したい場合、F2.8のように絞りを開放した状態で撮影するときれいにボケますが、カメラにその意図は伝わりません。NDフィルターを装着するとレンズに入る光が減りますので、カメラはもっと絞りを開けて撮影してくれる可能性が高くなります。特にポートレートモードなどでは絞りは開いて背景はボケるでしょう。

マニュアルや優先モードの場合

絞り優先の設定で撮れる人にはもう少し明確な解説ができます。

F2.8のような明るいレンズで絞りを開放して背景をボカした撮影をしたいとします。絞りを開放するということは光がレンズ内にガバッと入ってくるということです。
日光が照りつける明るい場所で撮影者が絞り優先でF2.8を設定したとすると、カメラは自動的にシャッター速度を高速にして、光の量を少なくして露出オーバーにならないように調節します。しかしシャッター速度を高速にするにも限度がありますから明るすぎれば露出オーバーになったり、ところどころに白飛びが発生します。また、白飛びはしていないまでもヒストグラムの右よりで頑張って色表現をするかもしれません。

明るすぎるような環境下であっても、NDフィルターを装着して減光することで、絞りを開放にしたり、シャッター速度を遅くしたり、と設定選択の自由度がうまれるというわけです。もちろん白飛びを抑える効果にもなります。

 

 

NDフィルターで通行人が消える?

このページのトップへ  

Clickで拡大
カメラを三脚で固定し、シャッター速度を遅くして長時間露光で撮影すると動いている被写体はブレ「モーションブラー」が生じます。シャッター速度1/2
Clickで拡大
更にシャッター速度を遅くするとブレは大きくなり、軌跡のように描写されます。シャッター速度2"

NDフィルターを使うことで極端にシャッター速度が遅い写真が撮れることは前回も解説しました。その結果、水の流れのブツブツやゴツゴツがなくなって流れた様子に描写されるんでしたね。

これを応用したのが通行人や走行しているクルマを消すテクニックです。

NDフィルターの有無にかかわらず、一眼レフなどでシャッター速度を遅く設定して写真を撮ると通行人は流れるように描写されます。夜景などでシャッター速度を遅くして撮影したとき、動いているものが消えて写った経験をした人もあるでしょう。

明るい日中ではシャッター速度を極端に遅くすることはできません。シャッター速度を極端に遅くして撮影すると露出オーバーでまっ白くなってしまいます。そこでNDフィルターを装着して減光した上で、シャッター速度を極端に遅く設定して撮影します。そうすれば、動いている通行人は消えて写ります。

では、通行人を消すにはどのくらいの長時間露出が必要なのでしょうか。状況によって大きく異なります。

屋内での長時間露出撮影

下の [作例01]をご覧ください。

被写体は紅葉した木のモニュメント、人通りが多い場所にあるのでひっきりなしに通行人が通り、途切れることはありません。

Clickで拡大
作例01

フィルターなし、プログラムモードでただシャッターを押して撮影。横も後ろもたくさんの通行人が絶え間なく通るのでフレームには必ず人影が入ります。シャッター速度1/60

モニュメントの後ろも人通りが激しい状況です。構図に通行人が入ってはうるさいので、ND400を装着して長時間露光を行った結果、モニュメントの横や後ろを歩く通行人はきれいに消えて、すっきりした写真になりました(作例02)。ここは比較的暗い場所だったので、ND400でも長時間露光がやりやすく通行人を消すことができました。

Clickで拡大
作例02

NDフィルター「ND8」を装着して撮影。被写体がスッキリ見えます。実際は何人もの通行人がモニュメントの周囲を通過していますが、写真には写っていません。シャッター速度20"  (ケンコートキナー「ND400 プロフェッショナル」使用)

なお、この作例の被写体はモニュメントとは言え葉っぱや枝が風に揺れるので長時間露光時は被写体自身(枝や葉)のブレに注意を払う必要があります。

 

屋外での長時間露出の撮影

次の [作例03] は屋外のモニュメントです。やはり人通りが多く、絶え間なく通行人が行き交っています。

Clickで拡大
作例03

フィルターなし、プログラムモードでただシャッターを押して撮影。たくさんの通行人が絶え間なく通ります。シャッター速度1/250

曇天でしたが太陽光が照らした明るい場所ではあまり長い時間露光することは困難になります。また、明るいとはっきりと写るために短い露光時間では人は消えません。

軌跡が薄く残る点はある程度の妥協をする必要はありますが、この状況下で早速やってみましょう。今回はND400とND8を二枚重ねて装着し、50秒の長時間露光で撮っています。

Clickで拡大
作例04

NDフィルター「ND8」と「ND400」を装着してバルブ撮影。実際は何人もの通行人がモニュメントの周囲を通過していますが、写真には写らず、被写体がスッキリ見えます。シャッター速度50" (ケンコートキナー「Zeta ND8」、「ND400 プロフェッショナル」使用)

なお、カメラ機種によっても異なりますが、私の一眼レフの場合はシャッター速度の設定は最大30秒となります。それ以上の長時間露光は「バルブ撮影」と呼びます。カメラをマニュアルに設定して、シャッター速度を遅くしていくと30秒の次が「Bulb」になります。バルブ撮影では、レリーズのシャッターボタンを押し続けている間だけずっと露光するようになります。作例04の場合、ND400ND8の2枚重ねでも30秒露光では人の流れが消えませんので、50秒のバルブ撮影を行いました。バルブ撮影をしている間の秒数はカメラ本体の液晶画面にカウント表示されます。(ND400とND8について詳細は前回記事を参照してください)
なお、あまり長時間のバルブ撮影を行ったときは、バルブ撮影した時間と同じだけの時間を書込のために待たされる場合があります。これはバルブ撮影によって生じたノイズを除去するなどの画質改善のための作業で、たいていどんなデジカメでも発生する現象です。私の愛機の場合は60秒以上シャッターを開けたときなどに発生しますが、書込処理中に壊れたと思って電源をオフしたりしないようにしましょう。

このようにモニュメントや建物の撮影など、人ごみを消してスッキリ写したい場合、NDフィルターによる長時間撮影を覚えておくと便利です。

最後に補足とちょっとした留意点を。
実際は、ひっきりなしに通行人が通る場所では人の姿は流れて薄くなるだけで完全に「消す」ことはできません(薄いもやのような軌跡が残る)。便宜上「消す」「消える」と表現していますが、明るい環境下では「通行人を薄く目立たなくする」というのが正しい表現かもしれません。(もちろん人並みが途切れている時間があれば事実上、消えて見えるでしょうけれど、それなら長時間露光など行わず、人並みが途切れたタイミングで高速シャッターを切れば良い話です(笑))。
また、当然のことですが、通行人が立ち話をしていたり、座っていたり等、移動していない場合はそのまま写ってしまったり、残像が濃く残って幽霊のように写ることがあります。

Clickで拡大
作例05

シャッター速度70" でバルブ撮影しましたが、人の軌跡がぼんやりとモヤのように残っています。人の波が流れに載っている場合、構図によっては軌跡がどうしても残ってしまう場合があります。


拡大しません
作例06

立ち話をしている人、もの凄~くゆっくり歩いている人、座っている人、立ったまま寝ている人、などはいくら長時間露光しても消せません。

完全に人の流れは消さなくても故意に軌跡を残した写真も面白いものです。例えば、写真集や作品展などでよく見かけるテクニックに、被写体のモデルを真ん中に立たせて、周囲の通行人はぶれたモーションブラーの軌跡で描写している作品があります。露光している間、モデルは動かずじっとしている必要がありますが、NDフィルターや長時間露光のテクニックを使うとそのような面白い作品をつくることができます。

なお、NDフィルターは装着しても色味が変わらないのが建前ですが、実際にはどうしても色味はやや変わります。やや赤みが強くなる傾向があったりしますので、色味が気になる場合は撮影したファイルをRAWで保存しておくと後で色調整がしやすく、露出補正も簡単で便利です。


  水面を静めるNDフィルター このページのトップへ  

この講座ではフィルターの特長が解りやすい写真で構成し、「作品は読者の方自身で撮って頂こう」と思っています。そのため、あまり作品としての写真は紹介していませんが、NDフィルターの解説の最後に一枚だけ紹介しますね。

水面を静めて鏡面に近い描写を狙ったものです。NDフィルターはこのように静かな水面(みなも)を表現するのにも良いフィルターです。また減光することで色情報がしっかりと保存されるので、RAWで撮っておけばRAW現像時に色調整で魅力的な写真に仕上げるのもやりやすくなります。

Clickで拡大
作例07

NDフィルター「ND400」を装着して撮影。シャッター速度6" 絞りF16。RAW
(「ND400 プロフェッショナル」使用)

参考までに、同じ時にプログラムモードでただ撮っただけの、ちょっと残念な写真も下に紹介しておきます。
「一眼レフで撮ったのにこういう写真になっちゃうんだよ」っていう読者の方も意外に多いかも知れませんね。その場合はNDフィルターを使ってみてください。

拡大しません
作例08

プログラムモードで撮影(フィルターなし)。ちょっと残念な写真。JPEG


デジタルカメラの動画撮影にも必携

バリアブルNDXの写真
ND2.5~ND1000相当まで減光調節できる可変式NDフィルター「バリアブルNDX」。動画撮影にも最適。ケンコー・トキナー製。 > アマゾンで値段を確認する

最近、NDフィルターが再び注目されている理由は、「デジタルカメラの動画撮影には必携」と言われ始めているからです。動画用のビデオカメラでは減光機能を持つのがいわば常ですが、デジタル一眼では必ずしも減光機能を装備していません。また、動画撮影では晴天時に絞りを開けると白飛びが顕著に表れてとてもセンシティブです。動画を深い色合いできれいに撮ろうと思うと、NDフィルターでの減光が不可欠、と言われはじめています。こうした理由からデジタル一眼で動画撮影を楽しむ人たちの間でNDフィルターを購入する人が増えているのです。

なお、動画撮影を主目的とするなら最もお勧めのNDフィルターは新製品の「バリアブルNDX」です。
ND2.5~ND1000相当まで、フィルターを回すだけで減光調節できる可変式NDフィルターです。
欲しい!! 断然欲しすぎる。
ただし、お値段も凄すぎる…(汗;)

NDフィルターは写真を撮る工夫がいろいろと拡がって楽しくなる、ワンステップ上の写真を目指すのに便利な逸品です。ぜひ持っていたい…お勧めのフィルターですよ!!

PS:
写真を撮ったら、スタジオグラフィックスの写真投稿&共有サイト「StudioGraphicsギャラリー」にぜひ投稿してみてください。気軽にみんなの写真を見にきてくださいね。

> 第8回 緑を美しく撮る グリーンエンハンサー につづく

 

Text & Photo by 神崎洋治 (デジカメWEB)

<お知らせ>

国際フィルターフォトコンテスト 2012-2013 を開催中
国際フィルターフォトコンテスト 2012-2013 を開催中です。ケンコー・トキナー社が主催する日本語、英語、中国語、ロシア語で開催されている国際大会です。フィルターを使って撮影した写真なら応募参加できます。フィルターメーカーは問いません。フィルターを使用して良い写真が撮れたら、応募してみては如何でしょうか。
応募期間は2012年10月1日~2013年9月30日。長期間なので、4つのシーズンに分けての募集、現在はシーズン2の応募を受付中、シーズン1の読者投票を実施中です。 > 国際フィルターフォトコンテスト 2012-2013 を開催中

国際フィルターフォトコンテスト 2011-2012 の審査結果 公開中
昨年度に実施された、「国際フィルターフォトコンテスト 2011-2012 の審査結果」が発表されています。入賞作品の数々はお手本の宝庫。レンズフィルター活用の参考になりますので、スキルアップのためにもチェックしてみることをお勧めします。

StudioGraphicsギャラリーに投稿しよう
写真を撮ったら、スタジオグラフィックスの画像投稿サイト「StudioGraphicsギャラリー」で紹介してください。
登録や参加は無料です。アクセス、お待ちしています。


著者プロフィール
神崎洋治 :photo

神崎 洋治(こうざきようじ)
パソコン、周辺機器、インターネット、セキュリティ、DVDなどに詳しいライター兼コラムニスト。
1996年から3年間、アスキー特派員として米国シリコンバレーに住み、パソコンとインターネット業界の最新情報を取材。取材記事は月刊アスキーとインターネットアスキーに連載したほか、日経BP社、朝日新聞社、毎日新聞社、電波新聞社などの雑誌や書籍に寄稿。以降、ライター業に浸る。日経パソコンやアスキー.ドットPCなどの雑誌やウェブでの記事連載多数、書籍の著書も多い。また、セミナー講師やウェブ開発プロデューサーとしても活躍中。
> ホームページ TRISEC International,Inc.


メールマガジンに登録しませんか

デジタルカメラ レンズフィルター 初級講座
  第1回 レンズフィルターの魅力とメリット
第2回 レンズフィルターの装着と購入のポイント
第3回 PLフィルター(1) 青空と白い雲をもっと印象的に撮ろう
第4回 PLフィルター(2) 反射を除去してきれいな写真を撮る方法
第5回 NDフィルター(1) 水の流れを白糸のように撮影する
第6回 NDフィルター(2) NDフィルターを使った撮影の手順
第7回 NDフィルター(3) 長時間露光で通行人やクルマが消える
第8回 緑を美しく撮る グリーンエンハンサー
第9回 キラキラの光を演出する クロスフィルター
第10回 PLフィルター(3) 紅葉をきれいに撮ろう!!
第11回 接写やブツ撮りに便利なクローズアップレンズ 手軽にマクロ撮影を楽しむ方法
第12回 夜景写真やイルミネーションをきれいに撮ろう (1) クロスフィルターとソフトフィルター
第13回 夜景写真やイルミネーションをきれいに撮ろう (2) シャッター速度と色温度
第14回 ソフトフィルター比較 (1) フォギー、デュート、ブラックミスト、ソフトクロス、センターフォーカス
第15回 ソフトフィルター比較 (2) フォギーとブラックミスト、デュートの使いわけ
第16回 ソフトフィルター比較 (3) プロソフトンの比較と花写真の撮影例
第17回 千鳥ヶ淵で満開の桜を撮る PLフィルターやプロソフトンの活用例
最終回 星景写真を撮りに行こう ~プロソフトンで撮る夜空~
目次
Cokin レンズフィルター 初級講座
 

第1回 角型レンズフィルターのはじめかた ~ Cokin (コッキン) フィルターの特徴と概要 ~
第2回 ハーフ・グラデーション・フィルターで夕景・夜景を撮ろう  ~ みなと横浜の夜を撮る ~
第3回 ハーフNDフィルターで魅力的な写真を撮る方法 ~ 石垣島川平湾と横浜西洋館を撮る ~
第4回 Cokinの丸形フィルター、PLフィルター&クロスフィルター ~ みなとみらいのキラキラ夜景を撮る ~

第5回 Cokinの不思議なセンター・フォーカス・フィルター ~ センタースポットやパステル系ディフューザーで花の撮影を楽しむ ~

最終回 Cokinフィルター 独特の世界を楽しむ ~スター16、接写レンズ、スーパースピード~

目次


・記事の内容は予告なく変更される場合があります。内容についての保証は致しかねます。
・記事の内容について個別のご回答は致しません。
・写真や本文の転用・転載はかたくお断り致します。

みんなが撮った写真を見てみよう Studio_Graphicsギャラリー
 
初出:2011/08/31
  このページのトップへ
 

 


     
 
 

     
 
Creating Supported by
トライセック
サンタ・クローチェ
リンクについて
著作権について
プライバシーポリシー