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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第40回 工場からライトアップまで多彩な岡山・倉敷夜景の撮り方

Posted On 2018 3月 25
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iwasaki_yakei40

Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

今月の夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座は工場からライトアップまで多彩な岡山・倉敷夜景の撮り方をお届けします。夜景スポットのイメージが薄い地区ですが魅力的な夜景スポットであると筆者は推奨しております。それではご覧ください。 by 編集部

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3月末を迎え、お花見や夜桜が楽しめる時期になってきましたが、まだまだ寒さが続きます。第40回目となる今回は一見、夜景都市のイメージが無い岡山県倉敷市を取り上げます。倉敷には歴史を感じさせるライトアップから工場まで様々な被写体があり、関西圏からも近いので、夜景撮影旅にもおすすめのエリアです。

写真1 水島コンビナートの工場夜景

鷲羽山スカイライン 水島展望台からの夜景

倉敷を代表する夜景スポットである鷲羽山スカイラインの水島展望台から撮影。10大工場夜景都市ほどの知名度は無いが、展望台からの夜景を求めて多くの写真愛好家やカップルが訪れる。

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■岡山県倉敷市の特徴

倉敷市は岡山市に次いで人口第2位の都市で、48万人規模の中核市。かつてチボリ公園があったことから、岡山=倉敷というぐらい「倉敷」の方が全国的には知られている感じがする。倉敷市は水島臨海工業地帯を有する大規模な工業都市で、製油所、化学工場、自動車工場などを有する。そのためか人口規模以上に街明かりが多く、10大工場夜景都市に迫るほどの工場夜景が楽しめ、一方で倉敷美観地区のような歴史を感じさせるライトアップや、四国と結ぶ瀬戸大橋の夜景など、様々なバリエーションの夜景が楽しめ、夜景メインの訪問では1日の滞在では物足りないほど。

写真2 倉敷市の地図

倉敷市の地図

岡山市の西側に倉敷市は位置する。瀬戸大橋を渡れば、すぐに香川県にアクセスできる良さも魅力。

(地図素材:CraftMap

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■倉敷市の夜景撮影のポイント

倉敷市は夜景撮影スポットが多数あり、車があれば効率良く回れる。気候も安定していていつでも訪問しやすいが、立入が規制された場所が多く、撮影時には注意が必要だ。

写真3 立入が規制された私道

立入が規制された私道

以前はこのような標識は無かったが、高台の見晴らしが良い場所ほど標識が立てられるようになり、工場夜景に関しては撮影できる場所が限られている。昼間にロケハンをしっかりして、立入できる場所を確認しておくと良いだろう。

(1)気象条件:南部の瀬戸内側は温暖

県内は南部と北部で気候が大きく異なり、特に中国自動車道は冬期になるとチェーン規制がされることも。一方で倉敷市を含む南部は気候が温暖で安定しているため、夜景撮影にも適している。いずれにせよ、他の地域と同様に秋から冬にかけてがベストシーズンなのは同様だ。

(2)撮影機材:工場を撮るなら望遠レンズが必須

水島コンビナートは一般車両が近寄りづらいため、間近で工場を撮る人はほとんどいない。以前は工場夜景を比較的近い場所から見れる高台があったが、近年は多くの場所が立入禁止になっている。そのため、他の工場夜景都市のように工場を間近で撮れないため、望遠ズームレンズが欠かせない。倉敷美観地区や瀬戸大橋を撮る時は広角ズームレンズや標準ズームレンズが便利。

(3)訪問手段:新幹線&在来線または飛行機で

倉敷駅は在来線となるため、新幹線での訪問は岡山駅からの乗り換えが必要。大阪方面からの訪問であれば高速バスを使う方法もある。東京方面からは岡山空港への便が多いので、荷物が多く無ければ飛行機の方が短時間で到着できるだろう。

(4)移動手段:自家用車かレンタカーで

倉敷美観地区以外は公共交通機関での訪問はハードルが高い。倉敷駅や岡山空港でレンタカーを借りて訪問すると良いだろう。大阪方面から自家用車であれば、高速道路を使って約3時間前後で訪問できる。

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■撮影スポット(1):鷲羽山スカイライン 水島展望台

岡山県内でも恐らく知名度ナンバーワンの夜景スポット。以前は鷲羽山スカイラインは有料道路だったが、現在は無料開放されており、「岡山県道393号鷲羽山公園線」と呼ばれている。道路沿いに展望台があり、水島コンビナートを中心とした大パノラマが広がり、工場の明かりが中心になっており、深夜になっても光量が衰えないほどの明るさ。西向きに視界が開けているため、トワイライトタイムの夜景も美しい。休日は夜景ドライブに訪れるカップルが多いため、夕暮れから訪問すると良いだろう。トワイライトタイムは広角寄りで撮影して、完全に空が暗くなってから望遠寄りで工場を画面いっぱいに写すと良いだろう。

写真4 トワイライトタイムに水島コンビナートを写す

鷲羽山スカイライン 水島展望台

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:Tokina AT-X 24-70 F2.8 PRO FX
/ 焦点距離:37mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(2):児島宇野津の棚田

棚田と工場のコンビナートが見渡せる全国的にも珍しい絶景スポット。棚田を大きく写して、遠くに工場を入れることで原風景と産業の明かりが見事に調和する。ここで紹介する作例は日没後の夕暮れの工場群を望遠レンズで写しているが、棚田と工場のコラボは「第22回夜景写真のRAW現像・工場編 (2)」を参考にして欲しい。

写真5 日没後に望遠レンズで製油所を写す

児島宇野津の棚田

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:TAMRON SP 70-300mm F4-5.6 Di VC USD (Model A005) / 焦点距離:147mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:2.5秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:太陽光 ]

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■撮影スポット(3):亀島山花と緑の丘公園

ロケハン中に偶然見つけた展望公園。戦争遺跡として知られている亀島山に公園が整備され、駐車場から頂上まで7分前後歩くと視界が広がる。三菱自動車・水島製作所を中心に大パノラマが広がり、暖色系の明かりが特徴的。自動車工場はそれほど明るくないので、望遠レンズで遠くの工場を写すのも良いだろう。

写真6 自動車工場と化学工場群を写す

亀島山花と緑の丘公園

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:TAMRON SP 70-300mm F4-5.6 Di VC USD (Model A005) / 焦点距離:96mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(4):鷲羽山山頂

瀬戸大橋を見渡せる県内最大級の絶景スポット。駐車場から暗い道を10分以上歩く必要があり、たどり着くのに根気がいるが、瀬戸大橋がライトアップされている日を狙って訪問すれば、感動間違い無しの絶景が広がる。作例は真っ暗な時間に撮影しているが、トワイライトタイムの作例は「第2回:夜景の基礎知識(夜景学)」を参考にして欲しい。

写真7 ライトアップされた瀬戸大橋と月明かり

鷲羽山山頂

[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:19mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:25秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(5):田土浦公園

瀬戸大橋を真下から見渡せる公園で、橋の主塔を間近で見上げられる。橋の主塔全体を写すには広角レンズが必須。広角レンズが無い場合は遠くの橋を望遠レンズで写すと良いだろう。公園手前に駐車場があるため、アクセスがしやすい。

写真8 瀬戸大橋を間近で見上げて写す

田土浦公園

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:16mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:640 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(6):倉敷美観地区

岡山を代表する観光スポットの1つ。江戸時代以降の街並みが保存されており、夜になると街全体がライトアップされ、より美しさを増す。世界的な照明デザイナーにより設計されており、白壁の街並みが煌びやかに感じる。倉敷川に反射する建物の明かりも綺麗に写したい。

写真9 倉敷川に反射した美観地区の明かり

倉敷美観地区

[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:16mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:6秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。