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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第26回 富士山夜景の撮り方

Posted On 24 1月 2017
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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

今年最初の夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座は夜景撮影でも人気のある 「 富士山夜景 」の撮り方です。撮影テクニックに加え、複数ロケーションから撮影した作例をご紹介しています。「 今月のお勧めスポット 」では富士山 + 工場夜景の撮影スポットもご紹介しています。 by 編集部

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新年のご挨拶が遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。今年でスタグラでの連載執筆は3年目を迎え、昨年はRAW現像を中心に取り上げさせて頂きました。今年からはこれまで以上によりテーマを深く掘り下げて夜景撮影テクニックを解説していきたいと思います。新年1回目の記事は昼夜問わず人気の被写体「富士山」。今回は富士山と街明かりを一緒に撮るコツを詳しく解説したいと思います。

写真1 横浜ランドマークタワーから富士山を望む

横浜ランドマークタワーから望む富士山

天気が良くても富士山が綺麗に見えるとは限らないのが難しいところ。作例は2014年11月に撮影しているが、雲1つないクリアな空で富士山が綺麗に見えた。横浜市内からは望遠レンズを使えば富士山を大きく写せる。


[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM / 焦点距離:70mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:13秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:太陽光 ]

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■富士山と夜景を綺麗に撮るには?

富士山のような自然風景と街の明かりを綺麗に撮るにはいくつかのコツがあります。ただ街の夜景だけを撮るよりも難易度が高いものの、気象条件や距離など様々な要因をクリアすることで、誰もが感動するような綺麗な富士山夜景が撮れることでしょう。まずは具体的に6つのポイントを解説したいと思います。

※(1)~(3)までは富士市の「ふじのくに田子の浦みなと公園」の作例を紹介(成功例は最後のお勧めスポットで紹介)

(1)時間帯

日中であればさほど時間帯を意識しませんが、富士山と街明かりを一緒に写すとなると撮影時間帯は非常に限られてしまいます。明るいうちは当然街明かりがありませんし、完全に暗くなってしまうと逆に富士山が真っ暗になってしまいます。星空と富士山を写すようなケースだと長時間露光で暗く沈んだ富士山はある程度浮かび上がりますが、街明かりを一緒に写す場合は、街明かりが露出オーバーになってしまうため、基本的には富士山のシルエットと街明かりが両方見える「トワイライトタイム」を狙う必要があります。日没から20~30分後から20分程度の限られた時間となるため、夕暮れまでには撮影場所の確保とセッティングを終えて万全の体制で撮影に挑みたいものです。

写真2 富士山が綺麗に見えない時間帯

富士山が見えない時間帯

雲もほとんどなく、絶好の撮影日和であったが、トワイライトタイムを過ぎてしまうと、富士山はわずかにしか見えなかった。シャッター速度を長く開ければ富士山が浮かび上がってくるが、手前の工場や街の明かりが露出オーバーになってしまう。(2016年12月17日 17時28分撮影)

(2)季節

一般的な夜景撮影と同様、富士山を写す上でも季節・時期は重要です。東京や千葉など富士山と離れた場所から撮影するのであれば、富士山のシルエットの見え方は季節においてそれほど変化しませんが、富士山に近い撮影スポットでは雪化粧の有無が作品性に大きく影響します。雪化粧の量と空気の澄み具合などを考慮すると12月~3月ぐらいがベストシーズンと言えそうです。

写真3 富士山の撮影に向かない時期

富士山があまり綺麗に見えない時期

5月にしては珍しく空気が澄んでいて、富士山のシルエットもくっきり見えているが、雪がほとんど溶けてしまい、なんとも寂しい写真になってしまった。(2016年5月20日 19時10分 )。

(3)天候

富士山を写すには快晴がベストですが、周囲に多少雲がある方が構図的にもバランスが取りやすいように思います。ただ、雲が周囲に見えると時間帯によっては雲が流れて被ってしまうため、確実に富士山を写すなら雲がほとんど無い日が良いでしょう。静岡側からは雲で隠れてしまっても、山梨側からは富士山が綺麗に見えることもあります。例えば東京から静岡に撮影に向かう場合、東京では曇っていても静岡に着いたら晴れているという日もあります。天気予報だけでは予想が難しいので、訪問する地域のライブカメラを参考にするのも手です。作例の「ふじのくに田子の浦みなと公園」からの撮影であれば「富士市富士山ライブカメラ」のライブカメラ映像が役立ちます。出掛ける3時間ぐらい前に予めチェックしておくと良いでしょう。たいてい富士山の近隣地域にはライブカメラが設けられているので、”地名+ライブカメラ”で検索してみてください。

写真4 富士山が雲で隠れてしまった作例

富士山が見えない天候

富士山が雪化粧をかぶり、空気も済んでいてベストシーズンなのにタイミング悪く雲が被ってしまった。(2016年12月23日 17時18分)

(4)距離感

富士山が見える都道府県は全国に20以上あると言われており、西は京都府、北は福島県まで富士山が観測されています。先週、福島県の花塚山(標高919メートル)からも富士山の撮影に成功したと大きく報道されました。直線距離で300km以上離れた場所からも富士山が見えるようですが、富士山のシルエットも大きく写すことを考えると地理的に離れすぎている場所は不向きと言えそうです。地図では東京都・神奈川県・山梨県・静岡県を紹介していますが、埼玉県や長野県にもビューポイントが多数見られます。距離感の1つの目安として直線で15~50km程度を目安にしても良さそうです。

写真5 富士山+夜景の撮影に適したエリア

富士山近隣の都道府県

富士山+街明かりの夜景におすすめのエリア。当然ながら富士山を有する静岡県・山梨県が撮影にベストだが、神奈川県の県西地域からでも十分に見応えある富士ビューが期待できる。

写真6 文京シビックセンター(東京都)からの富士山

文京シビックセンターからの富士山

富士山と新宿の摩天楼が写せる人気撮影スポット。ただし、富士山は直線距離で約100kmほど離れており、作例のように焦点距離約70mmで撮影しても富士山はかなり小さく写る。富士山をアップで写すには望遠レンズが欠かせないが、展望室は三脚が使えないので工夫が必要。(2010年1月26日 17時06分撮影)

(5)地理

富士山の撮影に適した時期や時間帯、距離感などが掴めてきましたが、街明かりを一緒に写すとなると、当然ながら市街地が見渡せることも条件になってきます。ガイドブックやパンフレットなどで紹介されている富士山のベスト撮影ポイントであっても、街明かりが見える場所はごくわずか。地図を見ながら街が見渡せるかどうかを確認することも大事です。

写真7 富士山のベスト撮影ポイントだが・・・

パノラマ台からの富士山

富士山と山中湖を一望できる絶好のロケーション「パノラマ台」。日中から夕暮れにかけて多くの写真愛好家で賑わうが、街明かりはごくわずかしか見えず、富士山のシルエットが見えなくなるとほとんどの写真愛好家は立ち去ってしまう。(2015年12月5日 17時02分撮影)

(6)方角

方角に関しては正解はありませんが、山梨県内であれば南方向、静岡県内であれば北~北東方向、東京都や神奈川県からは西方向に富士山が見渡せます。富士山と夕景や空のグラデーションを絡めて写すなら西方向が理想だが、他の方角からでも美しい富士山夜景が写せるので方角に関しては好みで良いでしょう。

写真8 南向きに富士山を撮影

山梨側から南向きに富士山を撮影

山梨県内でも有数の撮影スポット「新倉山浅間公園」。五重の塔と一緒に富士山を写す構図も定番だが、街明かりをメインで写す構図もまた美しい。(2014年12月2日 17時21分撮影)

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■作例紹介(1)

それでは上記6つのポイントをふまえて、作例をいくつか紹介したい。1つ目は富士山がちょうど西向きに見渡せ、光量は控えめだが裾野市の街明かりも見渡せる撮影スポット。特別カメラ側の難しい設定は無いが、空の青みを綺麗に出すためホワイトバランスは白色蛍光灯を選択した。(直線距離:約28km)

写真9 三国峠(静岡県裾野市)からの富士山

三国峠からの富士山

[ ボディ:CANON EOS 5D Mark2 / レンズ:EF17-40mm F4L USM / 焦点距離:37.0mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯](2012年2月4日 17時53分撮影)

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■作例紹介(2)

続いて神奈川県内から撮影した作例を紹介。県内には秦野や松田町を中心に夜景スポットが立地し、西向きに市街地が見渡せるロケーションも。引法山公園の展望台からは富士山を中心に、街明かりが眼下に見渡せる。夕日の色を強調するためホワイトバランスは「太陽光」とした。(直線距離:約47km)

写真10 引法山公園からの富士山

引法山公園(神奈川県秦野市)からの富士山

[ ボディ:CANON EOS 50D / レンズ:EF17-40mm F4L USM / 焦点距離:29.0mm(35mm換算 46.4mm) / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:4秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:太陽光 ](2010年1月2日 17時14分撮影)

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■作例紹介(3)

静岡市の観光スポットとして知られている日本平。展望台やホテルから北東向きに富士山が見渡せ、眼下には清水港を中心に静岡市内の街明かりが見渡せる。静岡県内であっても富士山とはやや距離があるため、望遠レンズでの撮影が適している。(直線距離:約50km)

写真11 日本平(静岡県静岡市)からの富士山

日本平からの富士山

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:TAMRON SP 70-300mm F4-5.6 Di VC USD (Model A005) / 焦点距離:104mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ](2016年2月4日 17時46分撮影)

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■今月のお勧め夜景スポット「ふじのくに田子の浦みなと公園」

富士山夜景が写せるスポットの中でも工場の明かりを一緒に写せる有名スポット。古くから製紙業が栄えた富士市には富士山の撮影スポットがたくさんあるので、是非足を運んでみて欲しい。みなと公園の付近にある田子の浦漁港で食べられる生しらす丼(時期による)も絶品。

ふじのくに田子の浦みなと公園開放時間:終日(駐車場は17時まで)所在地:静岡県富士市前田

アクセス:東名高速「富士IC」より車で約20分

料金:無料

URL:http://www.nightview.info/yakei/detail/tagonoura/

写真12 富士山+夜景のベストショット

富士山ベストショット

富士市には昨年12月だけで3回訪問したが、2回目の訪問日となる工場夜景サミット開催日は快晴で、雲1つないクリアな撮影条件だっった。富士山のお膝元である富士市であっても、これほど綺麗に富士山が見える日はそう無いようだ。(2016年12月17日 17時07分撮影)

岩崎拓哉
著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。
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