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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第22回夜景写真のRAW現像・工場編 (2)

Posted On 20 9月 2016
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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座、工場夜景RAW現像講座の第3回目は、日本の原風景と工業地帯が融合する不思議な絶景スポット「 児島宇野津 」での写真を例にとり解説いたします。棚田風景とコンビナートの光を綺麗に見せるためのRAW現像テクニックを解説いたします。それではご覧ください。 by 編集部

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9月に入って日中はまだまだ残暑が残りますが、夜はずいぶんと過ごしやすい気候になってきました。第2回も引き続き工場夜景のRAW現像を取り上げたいと思います。今回の作例は岡山県倉敷市で有名な「 児島宇野津 」という地名の絶景スポット。棚田とコンビナートの光を綺麗に見せるためにはRAW現像が欠かせません。今回の作例ではHDRとの比較も行いたいと思います。

■児島宇野津の夜景スポット情報(夜景INFO)
http://www.nightview.info/yakei/detail/kojimaunotsu/

写真1 棚田とコンビナート

昼間の棚田と水島コンビナート

テレビ朝日「報道ステーション」の音楽の生演奏が行われた場所としても有名。日本の原風景と工業地帯が融合する不思議な景観。

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■HDR合成やRAW現像が必要な理由

一般的な夜景撮影ではHDRは特殊な作品を撮る以外は使うことがほとんど無く、結論から言えばRAW現像をするかしないかも好みです。今回のような作例の場合、コンビナートと棚田では露出が全く異なり、棚田は夜になると完全に真っ暗となるため、1枚の写真で棚田とコンビナートを表現するのは極めて困難です。以下の2つの作例でコンビナートに露出を合わせた場合と棚田に露出を合わせた場合で比較してみました。2枚の写真は露出を比較すると約12倍の差があります。

写真2 コンビナートに露出を合わせる

マイナス露出

[ シャッター速度:10秒 / 絞り:F8 / ISO 400 ]
コンビナートは綺麗に見えているが、手前の棚田が完全に真っ暗。これでは作品とは到底呼べない。

写真3 棚田に露出を合わせる

プラス露出

[ シャッター速度:30秒 / 絞り:F8 / ISO 1600 ]
棚田の輪郭や色味が表現できているが、コンビナートは完全に露出オーバーとなり、輪郭が完全に飛んでしまっている。ここまで色が飛んでしまうとRAW現像でも救済はできないだろう。

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■HDR合成を試す

明暗差が激しい被写体を撮る時にHDR合成が役立つ。撮影時にカメラ側の設定でHDR合成をしても良いが、Photoshop(CCを例)のメニューから「ファイル」→「自動処理」→「HDR Proに統合」を選択し、2枚の画像を読み込んでOKボタンを押すだけで手軽に合成できる。合成後も風合いや明るさを調整できるが、今回は一切調整を行わずにそのままの状態で出力してみた。

写真4 HDR合成後の写真

HDR合成

棚田とコンビナートの明暗差が無くなり、作品らしさが出せた。ただし、コンビナートの色飛びは完全には押さえられず、なんとなく不自然さが残る。さらに煙突から出ている水蒸気は2枚とも位置が変わってしまい、水蒸気の部分が特に違和感のある画像になっている。

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■RAW現像で棚田を浮かび上がらせる

次にRAW現像にトライし、写真2の棚田が真っ暗になっている画像を使い、手前の棚田を浮かび上がらせてみた。
HDR合成の画像に比べて、水島コンビナートの明るさも自然で棚田にも立体感が感じられる。HDR合成の方は棚田に真っ黒の画像を合成して、中間色を採っているようなイメージだ。多少手間をかけてでも、RAW現像した方がより自然で美しい写真に仕上がることがわかる。

写真5 RAW現像後の画像

IMG_6217_RAW

工場の適正露出を保ったまま、段階フィルター・円形フィルターを駆使して、棚田や森の部分だけを浮かび上がらせた。

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■RAW現像テクニック

それでは具体的なRAW現像テクニックに入っていきたい。Photoshop CCのCamera RAWを起動後、まずは段階フィルターで棚田を補正し、次に円形フィルターで森を補正し、最後に全体を補正した。設定したパラメータは各画面を参考にして欲しい。

写真6 段階フィルター(棚田)

段階フィルター+赤枠

[ 色かぶり補正:-50 露光量:+0.75 コントラスト:-100 シャドウ:+100 白レベル:+100 ]
真っ暗になっている棚田を浮かび上がらせるために、シャドウや白レベルをめいいっぱい上げる。
露光量は上げすぎると全体とのバランスが崩れるので要注意。棚田を浮かび上がらせると赤系の色かぶりが目立ってしまったため、マイナス補正を加えている。

写真7 円形フィルター(森)

円形フィルター+赤枠

[ 色かぶり補正:-50 シャドウ:+100 ]
森は元々暗いが、完全に暗いままだと棚田との明暗差が目立つため、今回はシャドウのみ上げている。

写真8 全体の基本補正

全体

[ 露光量:+0.30 明瞭度:+30 ]
最後に全体のバランスを調整。元の画像がやや暗いため、露光量を上げ、明瞭度を上げて全体にメリハリを付けた。

写真9 全体のディテール

全体(ディテール)

[ ノイズ軽減 輝度:+30 ]
最後に棚田のノイズが目立っているため、軽めにノイズ軽減をかけた。

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■今月のお勧め夜景スポット「鷲羽山スカイライン 水島展望台」

せっかくなので、作例に合わせて同じ倉敷の夜景を紹介したい。水島コンビナート全体を見渡せる鷲羽山スカイラインは写真愛好家からカップルまで幅広い人に親しまれている。展望台は特に週末は混雑することがあるので、ゆっくり撮影するなら平日の訪問が望ましい。

夜景スポット名

開放時間:終日

所在地:岡山県倉敷市呼松町

アクセス:瀬戸中央自動車道「水島IC」から車で約15分

料金:無料

URL:http://www.nightview.info/yakei/detail/wasyuzanskyline/

写真10 トワイライトタイムに水島コンビナートを写す

鷲羽山スカイライン 水島展望台

倉敷を代表する夜景スポットで水島コンビナートを高台から見渡せる絶好のロケーション。展望台からは西向きに視界が広がり、まばゆいほどの工場の光が見渡せる。コンビナートだけを写すなら望遠レンズが欠かせない。

● 写真展のご案内 ●
本連載記事を執筆中の、岩崎拓哉さんの写真展が開催されています。
岩崎拓哉写真展 「 夜景旅〜10,000kmの道のり+工場夜景の煌めき 」
会期:2016年9月26日(月)まで
会場:池袋コミュニティ・カレッジ
料金:無料
詳細は以下のリンクを参照ください。
http://capacamera.net/exhibition/pickup/160914_iwasaki.html
※学研様の運営するWebへ移動します。
岩崎拓哉
著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。
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