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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第6回:工場夜景の撮り方

Posted On 23 4月 2015
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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

今回の夜景撮影講座は人気の『 工場夜景撮影 編 』です。ホワイトバランスによる絵の変化を交えて解説しておりますので参考にしてください。また、執筆者 岩崎拓哉氏を講師に迎え『 貸切りクルーズ 工場夜景撮影ツアー 』も5月9日に当社で企画しておりますのでご興味のある方は、ぜひご参加ください。 by 編集部

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4月も後半になって夜桜のシーズンも過ぎ、これからゴールデンウィークを迎えようとしています。今年の4月は天候が不安定で夜景撮影には少々厳しい条件となっていますが、これから気温が高くなる時期こそおすすめしたいのが工場夜景です。時間帯や天候にそれほど左右されない工場夜景撮影は1年を通じて楽しむことができ、レンズの使い分けやカメラの設定によって写真の変化が大いに楽しめます。そこで今回は工場夜景撮影テクニックを解説したいと思います。

写真1 砂山都市緑地からの工場夜景

茨城県神栖市・砂山都市緑地からの工場夜景

最近、特に注目を浴びている茨城県の鹿島臨海工業地域にある夜景スポット。公園内の奥まった広場から工場を間近で眺められ、夜景撮影にも適している穴場スポット。(砂山都市緑地の詳細

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■工場夜景の基本

近年は空前の工場夜景ブームとなっており、ブームの先駆けとなった神奈川県川崎市の産業観光が注目されるようになり、工場夜景バスやクルージングのツアーが大人気となり、今では全国各地で工場夜景が楽しめる環境が整いつつあります。全国的に有名な工場夜景エリアは「北海道室蘭市」「神奈川県川崎市」「静岡県富士市」「三重県四日市市」「兵庫県姫路市」「岡山県倉敷市」「山口県周南市」「福岡県北九州市」などが知られており、それぞれの地域で特色ある工場夜景を観賞できます。夜景撮影ジャンルの中でも工場夜景は特に人気があり、今では工場夜景撮影スポットで三脚を持った写真愛好家を頻繁に見かけるほどです。

写真2 全国の工場夜景マップ

工場夜景マップ

全国の代表的な工場夜景エリア。ここに掲載されていないエリア以外にも魅力的な工場夜景スポットはあるはず。(地図は「夜景INFO」より転載)

ちなみに工場夜景撮影の特徴として、一般的な夜景撮影に比べて以下の点で撮影条件に恵まれています。ただし、場所によっては治安の面で心配があるので、グループで訪問した方が安心でしょう。

(1)時間帯を問わない

一般的な夜景撮影と同じくベストタイムはトワイライトビューになりますが、深夜になっても光量の低下が少なく、時間帯を気にせずに撮影に没頭できます。

(2)気象条件がシビアでない

もちろん冬の空気が澄んだ時期がベストですが、近景メインであれば雨さえ降らなければ綺麗な写真が撮れます。

(3)無料で撮影できる場所が多い

一部の展望ビルなどを除き、公園や公道での撮影がメインとなるため、料金が発生する場所はほとんどありません。

(4)混雑していない場所が多い

工場夜景観光がブームになっていますが、観光バスやクルーズでの観賞者が中心で、観光客とタイミングが合わなければ普段は静まりかえっている場所が多く、撮影場所も確保しやすいです。

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■工場夜景スポットへのアクセス

実際に工場夜景スポットを訪問する場合、どのような手段でアクセスするか考える必要があります。一般的な夜景スポットと違って観光地化されていない場所が中心で鉄道やバスなどの公共交通機関だけではアクセスできない場所もあります。それぞれの交通手段について特徴を挙げてみました。

(1)自家用車・レンタカー

時間を気にせず工場夜景巡りを楽しむなら車での移動がベストです。撮影機材も積み込めるので、移動時の負担も軽減されます。

(2)電車・バス

電車やバスの運行が多い川崎市などは工場夜景スポットに公共の交通機関だけでもアクセスできます。ただし、終電を気にしながらの撮影になるため、時間的な余裕はありません。

(3)タクシー

車の免許を持たない場合や運転に不安がある場合はタクシーで工場夜景スポットを巡るのも1つです。観光タクシーであれば工場夜景スポットに詳しいドライバーに頼れる可能性もあります。ただし、料金は高額になってしまいます。

写真3 自家用車で工場夜景スポットを訪問

自家用車で工場夜景スポットを訪問

自家用車やレンタカーなら時間を気にせず、工場夜景スポットを回れる

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■工場夜景撮影の機材

ここから具体的な撮影の話に入っていきます。工場夜景の撮影に必要な機材ですが、一般的な夜景撮影と大きな違いはありません。ただ、工場夜景スポットは周囲が真っ暗な場所、安全面に不安のある場所もあるので、懐中電灯は必須です。また、多くの工場は臨海部に位置するため、風が強い場所が多いので、防寒対策をしっかりすることやなるべく安定感のある三脚を持参するのが望ましいでしょう。

工場夜景撮影に必要な機材

・カメラ本体、レンズ

・予備バッテリ-、メディア

・三脚などの固定機材

・懐中電灯、ブロワー、レリーズ、水準器など

 

工場夜景の撮影風景

工場夜景の撮影風景

ちなみに工場夜景撮影時に持参する交換レンズですが、被写体となる工場は間近で眺められる場所もあれば、遠くの工場を撮影する場合もあります。工場夜景は同じ場所での撮影でもレンズの画角によって作品イメージが全く変わってしまいます。そのため、広角・標準・望遠の3本以上のレンズを持参するのが理想です。無ければ標準ズーム1本でも大丈夫です。

写真4 広角レンズ(約16mm)

CANON EF16-35mm F4L IS USM

工場夜景の全体を捉えるなら(超)広角レンズでの撮影が望ましい。特に公道から間近で工場を撮影する場合などは必須と言える。16~35mmクラス(フルサイズ換算)の広角ズームレンズがあると便利。

写真5 標準レンズ(約50mm)

EF24-105mm F4L IS USM

標準ズームレンズや単焦点レンズで撮影できる一般的な画角。対岸の工場を撮る場合にちょうど良い画角となる。

写真6 望遠レンズ(約200mm)

SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM

工場のパイプや煙突など部分的に撮影する時に活躍する。作例は200mmだが、撮影場所によっては300mmや400mmクラスが必要になることも。

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■工場夜景撮影テクニック

ここから工場夜景撮影のテクニックや事例を4つに分けて紹介したいと思います。基本的なカメラの設定ですが、撮影モードは「マニュアル露出(M)」か「絞り優先(Av)」、ISO感度は三脚を使う場合は200~800程度、ストロボは発光禁止にしておきます。

(1)最適なホワイトバランス設定

夜景撮影で決められたホワイトバランスはなく、基本的には好みの設定となりますが、工場夜景の場合は全体的に色温度が低い方が好まれるようです。色温度をマニュアル設定できる場合は2500~3000K程度に設定すると青みが強くなり、SFや近未来を感じさせるような写真が撮れることも。いずれにせよ画像データの保存はRAW形式にしておき、自宅のパソコンでRAW現像時にホワイトバランスを調整するのも1つです。

写真7 ホワイトバランス:太陽光

ホワイトバランス:太陽光

昼間の風景撮影やトワイライトタイムに良く利用される設定。工場夜景の場合は赤みが強くなり過ぎる。

写真8 ホワイトバランス:白色蛍光灯

ホワイトバランス:白色蛍光灯

夜景撮影で最も良く利用される設定。肉眼で見る色合いに近いが、ちょっと面白さに欠ける?

写真9 ホワイトバランス:白熱電球

ホワイトバランス:白熱電球

夜景撮影では青みが強すぎて冷たい感じになるため、あまり使われない設定。工場夜景だとベストな色合いになることも。

写真10 ホワイトバランス:色温度(2500K)

ホワイトバランス:色温度

色温度のケルビン値をマニュアルで設定。最も青みが出る設定(数値を下げる)にしたところ、SFや映画のような世界感がある色合いになった。個人的にも工場夜景撮影時は色温度2500Kを頻繁に利用している。

(2)あえて高感度を活かした撮影

夜景撮影の基本は三脚などにカメラを固定し、ISO感度をなるべく低感度(100~400が理想)に設定。最近のカメラは高感度にしてもノイズが目立ちにくく、手持ちで夜景撮影をするケースが増えてますが、工場夜景はISO感度を高め、あえて作品撮りに活かす場合も。

写真11 ISO感度:400

ISO 400

一般的なISO感度で撮影した事例。ノイズも少なく、全体的にシャープに写っている。

写真12 ISO感度:102400

ISO 102400

CANON EOS 6Dの拡張ISO感度を使用し、最大値の102400に設定。ノイズが目立ち、一般的な夜景写真なら観賞に厳しい状態だが、ノイジーな雰囲気が逆に工場夜景の幻想的な雰囲気を高めてくれることも。

(3)水面を綺麗に写す

工場夜景スポットは水辺が多く、水面に反射した光も美しい。反射した光も美しく取り込むなら、できるだけシャッター速度を長く開けたいところ。目安としては8~30秒ぐらい。

写真13 シャッター速度:0.5秒

シャッター速度:0.5秒

ISO感度を上げてシャッターを速く切った事例。下の写真に比べると水面に穏やかさが感じられず、荒れた感じになる。

写真14 シャッター速度:20秒

シャッター速度:20秒

マニュアル露出(M)設定でシャッター速度を長めに開放。水面が穏やかになり、反射がより美しく見える。

(4)光跡をアクセントに入れる

夜景撮影で光跡を入れることで、動きの感じられる写真を撮ることができ、意図的に車や船などのライトを構図に入れると面白い写真が撮れます。工場夜景スポットは交通量の少ない場所も多いので、光跡を入れるにはじっくりと車や船が来るのを待つ必要があります。

写真15 光跡無し

光跡無し

超広角ズームレンズで工場全体が入るように撮影。写真の右側が暗く、少し寂しい写真に感じる。

写真16 光跡有り

光跡有り

偶然車が通りかかったので、運良く光跡をとらえることができた。シャッター速度を長め(今回は20秒)に設定し、車が走り過ぎるまで露出。光跡が良いアクセントになった。大型トラックやバスなどの光跡を入れるのも面白いだろう。

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■今月のお勧め夜景スポット「川崎市・浮島町」

千鳥町と並ぶ川崎の工場夜景スポットで特に人気のあるエリア。東燃ゼネラル石油のプラント工場を間近で撮影できる。フルサイズ換算で16mmまたは17mm~の超広角レンズがあると工場全体を撮ることができる。周囲は立ち入り禁止エリアが多いため、誤って入らないように注意したい。民間のバスでもアクセスできるが自家用車の訪問がスムーズだろう。

川崎市・浮島町所在地:神奈川県川崎市浮島町

アクセス:JR川崎駅から川崎鶴見臨港バスに乗車し「浮島中央」で下車

料金:無料(終日開放)

URL:夜景INFO

写真17 東燃ゼネラル石油のプラント工場

川崎市・浮島町

工場夜景写真では定番の構図。16mmの画角でプラント工場全体を捉えた。撮影だけでなく観賞目的でも訪問する価値がある夜景スポットだ。写真は色温度2500Kに設定し、青みを強調したテイストにしている。

岩崎拓哉
著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。
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