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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第3回:俯瞰夜景の撮り方

Posted On 20 2月 2015
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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

第1回、第2回と機材準備・夜景学に関して解説してまいりましたが今回より実践的な夜景撮影の解説に入ってまいります。今の季節だからきれいに撮れる俯瞰撮影からお届けいたします。 by 編集部

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2月に入ってまだまだ寒い日が続きますが、日中は気温が高くなり、昼夜の温度差が激しくなってきました。少しずつではありますが、春の訪れを感じます。夜景撮影は来月あたりから徐々にオフシーズンに入り、気温も上がることで遠景(俯瞰)の撮影が厳しくなってきます。そこで、まだ空気の澄んでいる今こそ夜景撮影の基本となる俯瞰夜景の撮り方を解説したいと思います。

写真1 甘利山からの俯瞰夜景

甘利山の山頂付近から撮影。山梨を代表する俯瞰夜景スポットのひとつ。気象条件が良ければ富士山のシルエットも写し込める。富士山愛好家にも人気の撮影スポットだが、冬季は道路の通行禁止期間があるため、要注意。

甘利山の山頂付近から撮影。山梨を代表する俯瞰夜景スポットのひとつ。気象条件が良ければ富士山のシルエットも写し込める。富士山愛好家にも人気の撮影スポットだが、冬季は道路の通行禁止期間があるため、要注意。
[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:SIGMA 50mm F1.4 DG HSM / 焦点距離:50mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:400 ]

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■俯瞰夜景とは

「 俯瞰( ふかん ) 」という言葉を普段から耳にする方は少ないかもしれませんが、夜景における俯瞰とは一般的に山や丘の高台から街並みを見下ろす景観を言います。「遠景(えんけい)」も同じ意味で良く使われる言葉です。東京や横浜の都心であれば、ビルやタワーの展望ロビーから眺める夜景が俯瞰にあたり、一方で地方では山頂や丘にある公園の展望台から眺める夜景が俯瞰にあたります。俯瞰夜景は季節によって美しさが大きく変わり、一般的には秋から冬がベストシーズンになりますが、ライトアップのように意図して点灯していない人工の明かりが中心となるため、年中を通じて夜景を楽しめます。夜景撮影においても基本となる俯瞰夜景をマスターすることが上達の近道と言えます。

写真2 六甲山 天覧台からの俯瞰夜景

六甲山で有名な夜景スポット「天覧台」から撮影。大阪から神戸方面までの夜景が視界一面に広がる。カップルだけでなく、写真愛好家にも人気の場所。

六甲山で有名な夜景スポット「天覧台」から撮影。大阪から神戸方面までの夜景が視界一面に広がる。カップルだけでなく、写真愛好家にも人気の場所。
[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:13秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:200 ]

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■夜景撮影の基本

まずは夜景撮影の基本中の基本をおさらいしたいと思います。どちらかといえば夜景撮影経験が全く無い方向けの解説になりますが、今のうちに基本をしっかり押さえておきましょう!

(1)ストロボはOFFにする

夜景撮影の第一の基本はストロボ(フラッシュ)を発光禁止にすること。そもそもストロボの光は夜景に届いておらず、カメラ任せのオート設定だとシャッター速度が短くなってしまい、真っ暗な写真になってしまうことも。ただし、夜景+人物や夜景スポットの雰囲気を写しこむ時にはストロボを発光することもあります。

ストロボが内臓されたカメラの場合は必ずストロボを発光禁止にする。

ストロボが内臓されたカメラの場合は必ずストロボを発光禁止にする。

(2)カメラを固定する

次にカメラを固定すること。最近はカメラの高感度化が進み、イルミネーションなど光量が多く、近景の場合は手持ちでも綺麗な写真が撮れることもあるが、俯瞰の場合は街明かりとの距離もあり、シャッター速度が長くなるのでカメラの固定は必須と言えます。三脚を使う以外に手すりや台にカメラを置く方法もあるが、構図に限界が出てくるためここでは三脚の使用を強く勧めたい。

三脚を使ってカメラを固定

三脚を使ってカメラを固定

(3)シャッターを直接押さない

最後にカメラのシャッターボタンを直接押さないこと。せっかくカメラを固定してもシャッターボタンを押すときの動作でカメラに振動が伝わり、写真がぶれてしまう。セルフタイマー(2秒ぐらい)を使ってもぶれは防げるが、レリーズリモコンを使った方がシャッターの待ち時間もなくなり、スムーズに撮影ができます。純正品でも安いものは数千円から購入できるので、夜景撮影をするなら最低1本は持っておきましょう。

リモコンレリーズを使ってシャッターを直接押さないようにする

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■撮影時のセッティング

俯瞰夜景を撮影する時、まずは撮影する場所を決めて三脚を設置します。高台は風が強い場所が多いので、なるべく重量があって安定感のある三脚を利用します。カメラを雲台に固定し、いよいよカメラ側のセッティングに入ります。

(1)撮影モード

ミラーレスや一眼レフには「マニュアル露出」「絞り優先」「シャッター速度優先」「オート」など色々な撮影モードがありますが、初心者にお勧めの設定は「絞り優先(AまたはAv)」になります。撮影に慣れてくると「マニュアル露出」がお勧めです。

写真はCANONのEOSシリーズの例。「Av」が絞り優先にあたる。

写真はCANONのEOSシリーズの例。「Av」が絞り優先にあたる。

(2)絞り数値の設定

続いて、絞り数値(F値)の設定に入ります。絞り数値の幅はレンズやカメラによって開きがありますが、夜景撮影の場合はだいたい「F8~F11」が目安になります。絞りが開放気味だと全体的に甘い感じの描写になってしまうため、なるべく絞って撮影しましょう。よほど長秒時で撮影する必要性が無い限りは「F11」ぐらいを上限に考えましょう。

絞り数値の設定画面。交換レンズによってF値の開放値が異なる。

絞り数値の設定画面。交換レンズによってF値の開放値が異なる。

(3)ISO感度の設定

最後にISO感度の設定に入ります。ISO感度は数値が低いほど低感度で綺麗な写真が撮れますが、その反面シャッター速度が遅くなります。カメラに三脚に固定する場合は長時間の露出が前提となるため、シャッター速度によるブレはあまり意識する必要は無いでしょう。設定の目安として、「ISO100~400」の間がおすすめです。カメラによっては長秒時露光の際に発生するノイズを低減してる機能もあるので、できるだけ「ON」にしておくと良いでしょう。

カメラによっては長秒時露光のノイズ低減の機能がある。

カメラによっては長秒時露光のノイズ低減の機能がある。

(4)ピント合わせ

夜景撮影でピントを合わせる際、オートフォーカス(AF)かマニュアルフォーカス(MF)で悩まれる方も多いと思いますが、撮影に慣れてくるとMFの方がスムーズに感じますが、初めて夜景を撮影する場合はAFでも良いでしょう。昔のカメラは夜間にピントが合わせづらく、カメラが迷うことが多かったのですが、最近のカメラは暗所でもAFが合わせやすくなっています。ピントは俯瞰夜景の場合、遠くの街明かりに合わせればまず大丈夫です。中心点に街明かりがあれば、まずピントが狂うことは無いでしょう。

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■作例紹介

ここまで夜景撮影の基本やセッティングについて紹介していきましたが、最後に作例を紹介したいと思います。作例はCANONの初代EOS M(ミラーレス)を使っており、上記で解説した設定方法で撮影しています。

写真3 北海道・藻岩山からの夜景

北海道札幌を代表する藻岩山。石狩平野を一望できる景観は訪れる人を感動させる。まるで宝石箱をひっくり返したかのような光が広がる。作例では光の絨毯だけでなく、ロープウェイ乗り場もアクセントに入れてみた。ISOを低めに設定し、絞り込むことで低ノイズで全体にシャープ感の出る作品となった。 [ ボディ:CANON EOS M / レンズ:EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 焦点距離:18mm(28.8mm相当) / 撮影モード:絞り優先AE / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F11.0 / ISO感度:200 ]

北海道札幌を代表する藻岩山。石狩平野を一望できる景観は訪れる人を感動させる。まるで宝石箱をひっくり返したかのような光が広がる。作例では光の絨毯だけでなく、ロープウェイ乗り場もアクセントに入れてみた。ISOを低めに設定し、絞り込むことで低ノイズで全体にシャープ感の出る作品となった。[ ボディ:CANON EOS M / レンズ:EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM / 焦点距離:18mm(28.8mm相当) / 撮影モード:絞り優先AE / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F11.0 / ISO感度:200 ]

写真4 福岡県・皿倉山からの俯瞰夜景

福岡県の皿倉山からの俯瞰夜景。新日本三大夜景にも選定されており、多くの訪問者で賑わう。視界が広く、光量も多いため、初心者にも撮影しやすい。[ ボディ:CANON EOS M / レンズ:EF-M22mm F2 STM / 焦点距離:22mm(35.2mm相当) / 撮影モード:絞り優先AE / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:400 ]

福岡県の皿倉山からの俯瞰夜景。新日本三大夜景にも選定されており、多くの観光客で賑わう。視界が広く、光量も多いため、初心者にも撮影しやすい。
[ ボディ:CANON EOS M / レンズ:EF-M22mm F2 STM / 焦点距離:22mm(35.2mm相当) / 撮影モード:絞り優先AE / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:400 ]

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■今月のお勧め夜景スポット「チェックメイトC.C.付近」

今月は都心からも車でアクセスがしやすい神奈川県の俯瞰夜景スポットを紹介。ゴルフ場「チェックメイトカントリークラブ」へ続く道路にある視界の開けたビューポイント。関東の俯瞰夜景スポットの中では最大級のスケール。小田原~山北町方面まで視界が広がり、日没後の時間であれば富士山のシルエットも夜景と一緒に撮影できる。休日は夜景観賞目的に訪れる訪問者が多いので、じっくり撮影するなら平日の夜に訪問したい。

チェックメイトC.C.付近
開放時間:終日開放所在地:神奈川県松田町松田惣領付近
アクセス:東名高速大井松田ICより車で約15分
料金:無料
URL:http://www.nightview.info/yakei/detail/checkmatecc/

写真5 小田原方面の俯瞰夜景

日没後に小田原方面の夜景を撮影。空気が澄んでいてとても綺麗な写真が撮れた。 [ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:30mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:200 ]

日没後に小田原方面の夜景を撮影。空に赤みが残っていて最も美しい時間帯。[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:30mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:200 ]

岩崎拓哉
著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。
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