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ブリリアント山﨑の今すぐ撮レビアン!
第5回 紅葉を撮ろう!


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TOPIX

今月の「 ブリリアント山﨑の今すぐ撮レビアン! 」は間もなくピークを迎える紅葉の撮り方をテーマといたしました。イチョウ並木が冬晴れの澄んだ青空に映える季節の到来です。また、小物を使用して紅葉撮影に一工夫いれる撮影テクニックも公開しております。それではご覧ください。 by 編集部

秋も深まる今日この頃、写真趣味にぴったりなシーズン真っ盛りです。さて、もう少しすると公園や山の木々は色付き、美しい紅葉の時期がやってきます。
はっとするような黄色いイチョウや赤いモミジは思わず撮りたくなる魅力があり、毎年撮影に行かれている方も多いかと思いますが、さてカメラを向けると、どうやって撮影するべきか悩ましい被写体でもあります。
今回はそんな紅葉狩りならぬ紅葉撮りのコツを、さまざまな視点からご紹介したいと思います。

■ イチョウ並木を撮ろう

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シンプルにイチョウ並木をフレーミングするときは、水平をきちんと意識することが大切です。こちらは真正面からイチョウ並木を捉えていますが、右か左に寄って少し斜めから撮影することで、より広さと奥行きを感じさせることができます。こうした単純な作品ほど、どれだけイチョウの一番いい時期を狙えるかがポイントになってきます。例年の紅葉時期を調べればある程度検討が付くため、事前の下調べをしっかりして撮影に臨みましょう。

■ 一本の木を切り取ろう

紅葉した木がいくら綺麗とはいえ、開けた場所に1本だけポツンと立つ木ならともかく、雑然とある木を一本だけ撮影しようとしてもうまく背景が選べないこともあって難しいと感じませんか?そんなときは紅葉した木の一部分だけを切り取り、背景は青空を選んでみてはいかがでしょう。

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スカッとした秋の青空は紅葉した木を引き立ててくれ、大変見栄えのするものです。特に黄色いイチョウと補色関係にある青空は、相性抜群です。

そんな青空の日ばかりじゃない…という声も聞こえてきそうなので、そんな場合はもう一つ手があります。木の真下にたち、見上げた煽りの構図で木の枝の広がりを表現してみてはいかがでしょう。

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人は頭上を見上げるということはなかなかしないものです。煽りの構図で眼前に広がる枝葉には、一風変わった新鮮な驚きがあることでしょう。

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■ ローアングルで手前のボケを美しく

最近撮影しているのを見かけることの多い、人形撮影にも使えるテクニックです。カメラを地面スレスレに置き、ノーファインダーもしくは、ライブビュー液晶を利用して撮影します。

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ピントは主要被写体(この場合は大きな木)に合うようにしましょう。このときF値を開放気味に撮ることで、手前をボカした表現ができるという訳です。こちらの写真は芝生で撮影していますが、イチョウなどの鮮やかな落ち葉が敷き詰められている場所なら、もっと絵になることでしょう。

■ 水鏡を利用しよう

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水辺に立ち並ぶ紅葉した木々の広々とした景色を、広角でシンプルに表現しました。人はシンメトリーの構図に美しさを感じるそうで、水面への映り込みを利用した上下対象の構図は、ロケーションが許せばぜひ撮影しておきたい一枚です。

また、撮影後にレタッチでコントラストを強調して映り込みを際立たせたり、空や水面の青さを調整するなど、少しの手間でぐっと見栄えが良くなる写真でもあります。やりすぎはくれぐれも禁物ですが、自然に美しく見えるレタッチを目指しましょう。コントラストを上げるとわざとらしくなってしまう場合には、Photoshopの「かすみの除去」の数値を少し上げることで良い結果が得られることもあります。さらにこの写真はあえて少し周辺光量落ちを残すことで、作品に深みを与えてみました。

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■ 水鏡を利用しよう

美しい景色を素直に撮るのに飽きてしまった…そんな方のために、お次は一風変わった撮り方をご紹介します。

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こちらは100円ショップなどでも市販されているアクリル玉をカメラの前に置き、背景に広がる紅葉した木々の景色を写し込んだものです。ピントはアクリル玉に写る背景に合わせ、F値は開放寄りでほどよくぼかし、アクリル玉の中のシャープさとのギャップを楽しみます。一見手が込んでいるように見える写真ですが、ちょっとした手すりなどアクリル玉を置けるスペースがあれば特別なテクニックもいらず簡単に撮影することができます。

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このように日の丸構図にしてもいいですね。あなたらしいセンスで景色を閉じ込めてみましょう。紅葉に限らず使える表現ですので、夜景などで試してみても面白いでしょう。

■ 紅葉を背景にポートレートを撮ろう

お次は、イチョウを背景にしたポートレートのコツをご紹介したいと思います。赤や黄色の紅葉は美しいのですが、ポートレートの場合、あまり近づきすぎると被写体の肌にも周囲の色の影響(この場合はイチョウなので黄色)が出る「色かぶり」が生じることがあります。自然の中で撮影する以上ある程度は仕方のないことなのですが、気になるようでしたら撮影後にレタッチで顔や肌の部分だけ黄色の輝度をマイナスにするなど、自然に見えるよう補正しても良いでしょう。

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こちらはほどよい絞りを設定して、背景の並木がわかるように表現しました。並木道には規則的な美しさがあるため、印象的な絵になります。モデルの小物や服装も秋らしい落ち着いた色を選び、イチョウの美しさを損なわないように気を付けました。

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こちらは先ほどと異なり、背景を黄色で埋め尽くした表現です。イチョウの背景からできるだけ距離を取り、絞りを開放にすることで、その機材でできる限りの大きなボケを追求しています。できるだけ長い焦点距離のレンズを選ぶと圧縮効果によりイチョウに密集感が生まれ、より効果的です。また、見下ろすように撮ってしまうと木の幹が目立ってしまうため、少し煽り気味の構図にすることで画面いっぱいにイチョウが入るよう工夫しました。

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こちらは先ほどまでと打って変わって引きの構図です。他の通行人が入らないようにするにはタイミングが重要で、この時も何カットも粘って撮影しました。紅葉のピークの時期には人通りも多いため、被写体の人物の後ろに通行人を隠すように撮影するのもテクニックです。思い切って並木の中央に立ち、しゃがんで煽りの構図にすることで、画面の上半分をイチョウで埋め尽くすことができました。慎重な気遣いと大胆さが功を奏する紅葉ポートレート、皆さんもぜひお試しください。

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■ 紅葉撮影はちょっとした工夫でマンネリを打開!

シンプルに紅葉を写すのは飽きてしまった方も、今回ご紹介したちょっと変わった撮り方に挑戦してみれば、新たな発見があるかもしれません。今年はいつもと変わった視点で紅葉を眺めてみませんか?アイデア次第で紅葉撮影の楽しみは無限大です。

著者について
■ブリリアント山崎(ぶりりあんとやまさき)■ フリーカメラマン、写真講師。カメラメーカーの講師や作例集制作を経て現在に至る。写真とカメラの事ならネジ一本に至るまで、ありとあらゆることを知りたいと思っている。フォトマスター検定エキスパート(総合)。家電製品アドバイザー(総合)。「ブリリアントの写真教室」主宰。