|
日帰りブラジル旅行から数日後、ゆきぴゅーは案の定、札束とーちゃんに呼び出されておりました。
「ですから、あの日はロケハンで忙しくって聞き出すヒマがなかったんですのよ」
「でもうちの娘は美味しいブラジル料理をごちそうになったって大喜びで帰ってきましたぞ」
「と、とにかくあの日は忙しくてそれどころではなかったんですの」
札束とーちゃんはまたもや泣き出しそうな顔です。
「で、おとーちゃんの心配している T美ちゃんの男疑惑はまだわからないんですの?」
「それがですね、近頃ますます帰りが遅いんですよ。
聞けば“会社の人と飲み会”ってそればっかりでしてね」
「うーん、あやしいですわね」
「そ、そうでしょう、ゆきぴゅーさんっ!
だから聞き出してくれってお願いしてるんじゃないですか。頼みますよ、ね、ね」
「そ、そんなに言われてもゆきぴゅーも年末進行でいつもより忙しいんですのよ今月は」
「そこをなんとかよろしく頼みますよ。
これでまた T美を誘い出して今度こそは聞き出して下さいよ」
こうして再びポチ袋に入れられたおとーちゃんの娘への深い愛情は、ぐいぐいとゆきぴゅーのカバンの中に収まったのでした。
札束とーちゃんの愛娘 T美ちゃんをまたしてもごはんに誘い出すことになったゆきぴゅー。
今回は T美ちゃんオススメの青山にあるイタリアンレストランに行くことになりましたの。
「ドラマのロケにも時々出るようなお店だから、ゆきぴゅーおしゃれして来てね♪」
というわけで当日。精一杯のおしゃれをして外苑の銀杏並木の前で待ち合わせとなりました。レストランはそこから歩いてすぐのところだそうですの。エレベータでビルの最上階まで上ると、ゆきぴゅーの目の前には今まで見たこともないような東京の景色が広がっていましたの!
なんと、青く幻想的に輝くプール、そのプールの中にはライトアップされたクリスマスツリー、そして向こうには東京タワーや六本木ヒルズが見えるんですの。
(うわぁ、す、すてきですわ〜!!!)
席に着くとこれまた素敵なボーイさんが食前酒を運んできてくださいました。一口飲んだらとっても美味しいんですの。あまりにも美味しくて思わずゴクゴクゴクと飲み干してしまったゆきぴゅーに、T美ちゃんが心配そうな顔で言いました。
「ゆ、ゆきぴゅー、一気に飲んじゃって
大丈夫?それ一応お酒入っているのよ」
どうやらそれはサングリアという赤ワインとオレンジジュースを割った飲み物だそうですの。そういえばなんだか顔がぽかぽかしてきましたわ。
「大丈夫ですわ。
それにしてもゆきぴゅー、こんなおしゃ
れなレストラン初めてですわ〜。
T美ちゃんは前に来たことあるんです
の?」
「実は1回だけ連れてきてもらったことが
あるの」
(連れてきてもらった?誰にですの??
も、もしかして、、、)
ゆきぴゅーは思わず出かかった言葉をぐっとこらえましたの。
(いきなり本題はダメですわ、、、もう
ちょっと後になってからでないと、、、)
あたりをキョロキョロ見回して落ち着きのないゆきぴゅーを見て T美ちゃんが笑って言いました。
「ここってクリスマスの夜はカップル
だらけだよね、きっと」
「そ、そうですわね」
(今のは意味深な発言ですわ。
も、もしや T美ちゃん、誰かと来る
予定があるですの?)
ゆきぴゅーがいろいろ考えているところに、まずは前菜でマグロのカルパッチョが運ばれてきました。どうやったらこんなお味が作れるですの?というソースが、これまた彩り美しいサラダと極上マグロの上にかかっています。
それにしてもこちらの素敵なボーイさん、絶妙なタイミングでお料理を運んでくれるのはもちろん、グラスが空くとすぐさま気付いて「お飲み物はいかがいたしますか」と聞いて下さいますの。呼んだって来ない近所の居酒屋とは大違いですわ。
「じゃ私は白ワインにしようかな。ゆきぴゅーは?」
「え、ええっと、、、、あ、あ、赤ワインをお願いしますですの」
「かしこまりました」
お次は帆立とウニのクリームパスタ。とっても高級なお味でこれまたとびきり美味しいんですの。
T美ちゃんとゆきぴゅーはしばらくガールズトークに花が咲きました。
「ねぇ、ゆきぴゅーはクリスマスプレゼントもらえるとしたら何が欲しい?」
「えー?クリスマスプレゼント〜?何でしょう、、、やっぱり松坂、いや、飛騨かな、、、」
「え?」
「わたくしは松坂牛の詰め合わせが欲しいですわ」
くすくすと笑うT美ちゃんの顔がぼやけてきて頭の中がぐるぐると回り始めた頃、いよいよメインデッシュが運ばれてきました。
牛ヒレ肉のステーキの上にフォアグラがでん、と乗っていて、とてもとてもゆきぴゅーの文章では形容出来ないお味なんですの。
調子に乗って飲んでいた赤ワインがいよいよ脳細胞を支配し始めた頃、ゆきぴゅーの脳みそは思考能力ゼロとなってしまったようですの。もう味覚しか分かりませんの。
(わたくしには今夜、何かやらなくては
いけないことがあったような、なかった
ような、、、
まぁいいですわ〜最後のデザート
ですわ〜〜〜あああぁぁ〜〜〜〜)
・・・・ぐるぐるぐるぐるぐるぐる・・・・。
気付くとゆきぴゅーはポチ袋を持ってお会計を済ませていました。
「本当に、本当にごちそうになっちゃっていいの???」
「いいんれすのよぉー。じつはぁ、ゆきぴゅー、このあいだちょっとしたボーナスがはいったんですのよぉ〜」
(この時ゆきぴゅーは空になったポチ袋をひらひらさせてこう言ったそうですの)
「でもゆきぴゅーってボーナスが出るお仕事だったっけ?」
「それがぁ〜ときどきあるんれすのよ〜!!!」
「そうなんだぁ〜。じゃお言葉に甘えて。ごちそうさまでした」
そう言って丁寧に頭をさげた T美ちゃんから、帰りの電車の中でメールがありましたの。
『ゆきぴゅー。今日はごちそうさまでした。とっても楽しかったよ。
来年もどうぞよろしくね♪♪♪
あっ、それからうちのおとーさんともたまには遊んであげて。
なんか近頃元気ないのよ。せっかく買ったカメラもさわっていないみたい。
PS:クリスマスプレゼント、松阪牛が届くといいね(笑)』
ん???
おとーさん???
おとーちゃん???
さっ、札束とーちゃん???
(あ”あ”あ”ーーー!!!)
こうしてT美ちゃんの彼氏疑惑は晴れることなく、札束とーちゃんの心配事はめでたく2008年に持ち越されることとなったのでした。
めでたし、めでだし。
あなただけに教えちゃうT美ちゃんプロフィール |
|
大手電機メーカー勤務の29歳(独身)
血液型:A型
趣味:スキー
出身地:横浜 |
|