|
「ジャガイモが鬼のようにあるから取りに来い」
むかしお世話になっていたお師匠サマから、突然こんなメールが届いたですの。
去年の山芋に引き続いて今度はジャガイモですの?
ライター辞めたと思ったら芋作りに命をかけているんでしょうか?
とりあえずくれるというものは貰わねばと、ゆきぴゅーはノコノコと出かけていったのでした。
しばらくぶりにお会いするお師匠サマは心なしかお顔がほっそりしたようですの。ちょっと気になったので出された麦茶をすすりながら聞いてみましたの。
「お師匠サマ、ビミョーにお痩せになったのではないですの???」
すると、なにやらいきなり怒り出して言うんですの。
「オレは今、ダイエット中なんだ!ガーッ!」
「ダ、ダイエット?!ど、どーしたんですの」
「イビキがひどいから耳鼻咽喉科に行って、直すにはどうしたらいいですかって
聞いたら、開口一番“痩せなさい”って言われたんだ!ガーッ!」
「そ、そうでしたの。で、どんなダイエットをしているんですの?」
「一日三食、35.6`カロリーの雑炊を食べている」
「さ、35.6`カロリーの雑炊なんてあるんですのっ?!」
「ある。“ローカロ生活”でググって見ろっ!楽天で死ぬほど出てくる、
ってそんなことはどうでもいい。今日は久々に他のものが食いたくなった。
そうだ、ゆきぴゅー、タダでごはんのネタを提供してやるから着いて来い!
ただし、楽してタダごはが出来ると思ったら大間違いだぞ、」
「な、な、なんですの〜?!」
ジャガイモをもらいに来ただけなのに、いつにもまして気性が荒いお師匠サマに連行されて着いたのは横浜中華街。久々の中華街の熱気とおいしそうな匂いに、ゆきぴゅーはうれしさ半分、これから何が起こるのかビビリ半分ですの。ずんずんと歩くお師匠サマが突然立ち止まって言いました。
「いいか、ゆきぴゅー。今日はな、オレが常日頃から食べたいと思っていたものを
一口だけ食う。一口だけだ。なにせダイエット中だからな。
でも、もったいないお化けが出るから残すことはしない」
「・・・つ、つまり???」
「ゆきぴゅーに残りをやる」
「残りを???」
「そうだ。残さないで全部食え」
「えっー???!!!」
お師匠サマがまず並んだのはいつ行っても行列が出来ている人気のお店。そこの名物のマンゴーカキ氷をひとつ買いましたの。
「な、なんでデザートからなんですの?!」
「さんざん食べた後でカキ氷食って腹壊したくない
からな」
そう言って、ぺロっと一口食べると、
「ほれ、あげる」
と言って手渡されましたの。
本当に一口ずつしか食べない気ですわ。
ゆきぴゅーが残りを食べているそばからお師匠サマは
「次は何を食うかなぁ〜」
と言ってスタスタと歩いて行ってしまいました。大慌てで食べ終えてついて行くと、一軒のお店の前で止まって言うんですの。
「次はラーメンだ」
カウンターに座って余裕のゆきぴゅーが、
(ラーメン一杯なら食べられますわ)
と、ふと見上げた壁のメニューの横に、こんな張り紙がありましたの。
『低価格でやっていますのでお一人様一品以上
をご注文ください』
え〜?!マジですの〜?!お師匠サマは、仕方ないなぁと笑いながらおばちゃんに注文したんですの。
「すみませーん。ラーメン、水餃子、
それからスープチャーハンね!」
「・・・」
運ばれてきたお料理は、ちょっとだけお師匠サマの取り皿に取られて、あとはもちろんこっちにまわってきますの。ゆきぴゅーは(この場合スープチャーハンは余計じゃないですの)と思いながらもなんとかそれらを完食してお店を出たんですの。
その後、中華街を闊歩しながらシュウマイや、チャーシュー肉まん、タマゴ蒸しパンなどの飲茶シリーズを一通り買い食いしたお師匠サマ。後ろから着いて歩きながらそのほとんどを平らげるゆきぴゅー、、、。
気付くと中華街を一周したようでもちろんお腹は満腹です。
「お、お師匠サマ。さっきの蒸しパンが
デザートですわよね」
「いや、まだだ」
「えええー?!」
なんと、餃子の王将で餃子とソース焼きソバをテイクアウトするというですの。オーマイガーッ!!!
こんな試練付きのタダごはは始まって以来ですわー。っていうか、普通に食べ放題のお店で良かったんじゃないですの〜???!!!
王将で持ち帰りの餃子を待っている間、さらにゆきぴゅーはモスバーガーまでひとっ走りさせられて、秋の新作「サウザン野菜バーガー」とやらをテイクアウト。再び事務所に戻って第二ラウンドがはじまりました。
お師匠サマは餃子を一個だけ、ソース焼きソバをほんの2,3本ちゅるちゅるっと食べただけで箸を置き満足そうですの。普段、タダごはで鍛えているゆきぴゅーのお腹も、伸びきったソース焼きソバで限界をむかえてしまいました。
「も、もう食べられないですわ〜」
「ダメだ、もったいないお化けが出るぞ!」
焼きソバを涙目ですすっているところへ、お師匠サマが冷蔵庫から白い箱を持ってきました。い、いやな予感がしますの。
「そ、それは?(ゲップ)」
「今日のデザートだ」
中には大きなホールのタルト!
「8月はオレの誕生日だったのに食えなかったから、そのお祝いタルトだ」
「えええっ〜!?い、い、いつの間に買ったんですの〜?!」
「ゆきぴゅーがモスに行ってる間」
「し、しかもホールで、、、」
「・・・おぬし、まさか師匠の誕生日ケーキを食えないなどとは言わないだろうな」
「胃、胃、言いません言いません言いません、、、(ゲップ)」
ゆきぴゅーはソース焼きそばを食べていた箸を止めて、お師匠サマ自らがそのバースデータルトに包丁を入れて切り分けるところを眺めていました。
「うまいんだぞぉ〜、このタルト。山手の有名なケーキ
屋さんのだからな。だけど、あれだけ食った後じゃあ
なぁ。さすがに、、、」
そう言いながらお師匠サマはゆきぴゅーの方を見てぎょっとしました。
「ホント、おいしいですわ〜、このタルト♪まだまだ
食べられますわ〜」
そこにはまさに“甘いものは別腹”を実証したゆきぴゅーの姿があったのでした。
「・・・ゆ、ゆきぴゅー。オレの誕生日タルトなんだから少し残しておいてね、、、」
「あれ、お師匠サマ、ダイエット中じゃなかったんですの〜?!」
|