コンテンツのトップページへ StudioGraphics レポート
上海カメラショーレポート
日本のショーとは違う活気に満ちたカメラ機材ショー
2013/07/09
 
▼TOPIX
スタグラ初登場のフォトジャーナリスト、柴田誠がお届けする、上海の国際撮影器材&デジタル映像展 「 Photo & Imaging Shanghai 2013 」 レポート。日本のカメラ・写真ショーとは桁違いに大きな会場を使っての中華フォトイベントを、写真家でもある柴田誠の視点で紹介します。また、市場規模的にも計り知れないものがある中国での写真関連ビジネスの現状と将来を、柴田誠の独自の視点で分析、予想するレポートをご堪能ください。
▼写真00  
Clickで拡大
エントランスはまだ空いているが、どこから湧いて来るのかと思うほど、会場内は来場者で埋め尽くされる。
 
Share (facebook)    
 
■ 国際婚礼撮影器材展と同時開催されている
 上海のカメラ機材ショー
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ
 
▼写真01  
Clickで拡大
中国( 上海 )国際撮影器材&デジタル映像展( Photo & Imaging Shanghai 2013 )のサイト。http://www.interphoto.com.cn/

▼写真02  
Clickで拡大
会場の入り口。所構わずチラシを配りまくるので、開場中は撮影どころではない。
 7月4日から7日まで、上海では第 15 回中国( 上海 )国際撮影器材&デジタル映像展( Photo & Imaging Shanghai 2013 )が開催されていた。カメラ機材ショーと言えばドイツ・ケルンで開催されるフォトキナが世界的に有名だが、モーターショーなどと同様に、こうしたショーは世界のあらゆる場所で、さまざまな規模で開催されている。中国国内では、毎年4月に北京で開かれる China P & E がもっとも大きな規模のカメラショー。これには日本のカメラメーカーはもちろん、各国のさまざまなアクセサリーや用品メーカー、中国の部品製造メーカーなども出展する。また、それを見ようと中国全土から多くの来場者が訪れる。

 13 億を超える巨大マーケットの中国。しかし、国土の広さも半端ではない。そんな広すぎる国土で、どうやって自社の製品を知ってもらい、購入に繋げていくのか。それが、中国に展開する各社が抱えている大きな悩みだ。カメラで言えば、日本のカメラ量販店のように各社のあらゆる製品が一度に展示され、見比べられるような機会はほとんどない。だからこそ、こうしたショーに大勢の人が集まってくる。新製品の情報はインターネットを通じてすぐに伝わるものの、実際の製品を手にできる機会となると、まだまだ大都市が中心。それが中国の現状だ。

▼写真03  
Clickで拡大
会場入り口にはセキュリティチェックが設けられている。入場するまでに、とにかく時間がかかる。

 上海の国際撮影器材&デジタル映像展は、中国経済の中心地・上海で行われるカメラ機材ショーということで、規模は小さいながらも注目されるショーの一つとなっている。また中国・上海国際婚礼撮影器材展覧会( CHINA WEDDING EXPO )と併催されることで、プリントを中心としたラボショーといった意味あいが強く、 China P & E とは趣きの違うショーとして中国では捉えられている。

 私がこのショーを訪れるのは、昨年に続いて2度目。前回は、とにかく人の多さに圧倒されるだけで終わってしまったから、今回は少しゆっくり見ることができたらいいなと思っていた。

   
■ ラボショーから発展したことから
  出展傾向にはかなり偏りがある
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ
 
▼写真04  
Clickで拡大
来場者は若い人が多い。グループや家族連れで来ている人が多かった。

▼写真05  
Clickで拡大
ステージに女のコが登場すると、すぐに人垣ができる。けっこういいカメラ、レンズを持っている。
 国際撮影器材&デジタル映像展の会場は、上海万博の跡地にあるコンベンションセンター。最寄りの地下鉄駅・を出ると、赤い格子を組み上げた中国国家館が見える。会場の規模はと言うと、日本の CP+ の会場がすっぽり入るほどのホールを4ホール使って行われている。中国では、これが普通規模のイベントだが、日本の感覚からすれば、桁違いにデカい。しかし、そのほとんどが婚礼写真に関するもので、衣装だけ、撮影用のセットや額装だけで1つのホールが占められていたりする。

 カメラ関連製品はと言うと、1つのホールの約半分を占めているに過ぎない。各種ストロボや三脚などのアクセサリーを含めても、全体の約 1/8 ほどしかない計算だ。そして、婚礼撮影器材展の影響もあってか、若い女性の来場者がかなり目立つのが、他のカメラショーと大きく違うところだろう。カメラメーカー単独の出展は、佳能( キヤノン )、尼康( ニコン )、富士の3社だけ。マミヤとセコニックが共同出展していたり、撮影器材城の星光にソニーが置かれていたりというのは見られたが、ライカやハッセルなどの海外メーカーや、シグマやタムロンなどのレンズーメーカー、スリックやベルボンなどの三脚メーカーの出展も見あたらなかった。

▼写真06  
Clickで拡大
額装のサンプルを見ている来場者。このサイズでもかかなり小さいほう。

 一方、エプソン、コニカミノルタ、コダックなど、プリンターメーカーの出展が見られたのは、やはりブライダルフォトのプリント需要を見込んでのことだろう。富士のブースでも人気の X シリーズやチェキのほかに、ミニラボマシーンや店頭で手軽に出力できるプリンシャオなどを展示。また、もともとラボショーに近いビジネスショーだったという名残のように、ホール奥には、ラボ機のパーツなどを扱うブースもあった。アワガミを扱うブースがあったのにはちょっと驚かされた。

 ちなみに、ストロボや三脚などは、ほとんどが中国ブランド。化粧品も一同に集結して製品をアピールしていたが、こちらもすべて中国のローカルブランド。私が知っているものはひとつもなかった。

   
■ 日本で新製品ラッシュに続いて、
 更なる新製品の登場を期待したが…
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ
 
▼写真07  
Clickで拡大
撮影用の背景や家具だけを集めて展示しているホール。そのまま撮影できそうなブースもあった。

 実は今回、このカメラ機材ショーの取材をぎりぎりまで悩んでいた。というのは、昨年会場を訪れてみて、カメラ関連のあまりの出展社数の少なさに、カメラ機材ショーとしての意味を見出せなかったからだ。4月に China P & E で取材したカメラメーカーの駐在員の中にも、「 あれはブライダルショーなので、ウチは出展しません 」と言い切る人もいた。中国にいるメーカーの人がそういう認識だったら、わざわざ日本から取材に行くこともないか、と感じていたのだった。

 しかし、6月に日本で開催された PHOTO NEXT 2013 で富士フイルムの X−M1 がお目見えしたり、ソニーの RX1 R やキヤノンの EOS70D が発表されたりと、上海のカメラショーに合わせるかのようなタイミングで立て続けに新製品の発表が続くと、どうしても気になってくる。各社、日本のマーケットに向けた製品だけを開発しているわけではない。様々な国の事情に合わせて製品を登場させてくるのだから、中国をかなり意識しているのか? と勘繰りたくもなる。しかも、ショーに行けば、メーカーの販売戦略やトレンドが少なからず見えてくるし、日本にいては分からない新しい発見もあるからだ。さらに、China P &E が開催された4月とは、中国の経済状況も対日関係も微妙に変化してきている。各社の中国市場への今後の展開が、少しは見えてくるかもしれない。そんな期待もあって、急遽上海に飛ぶことにしたのだった。

▼写真08  
Clickで拡大
ブライダルフォトの撮影に関連して、ストロボの展示が多かった。各種アクセサリーも充実していた。

 ところが会場を訪れてみると、キヤノンブースでは、数日前に発表されたばかりの EOS70D の姿はなく、カタログも用意されていなかった( キヤノン中国のホームページには製品情報が掲載されている )。ニコンからも目立った新製品の発表はない。さらにソニー、ペンタックス、オリンパス、パナソニックはブースもないということで、昨年と状況はあまり変わっていない。

 いささか拍子抜けさせられた感じではあったものの、2度目の取材ということで、少し余裕を持って会場を見渡すことができたのは、収穫だったかもしれない。前回は、いったいどこからこれだけの人が溢れて来るのだろうと思うほど多くの来場者に、ただただ圧倒されっぱなしだったからだ。

▼写真09  
Clickで拡大
ドレスのホールは撮影禁止。しかしスマートフォンで撮っている人は大勢いた。

 昨年と大きく違うところと言えば、ブースでコンパニオンを撮影する人垣をあちこちで目にするようになったことだろうか。そう言う意味では、ビジネスショーとしての意味が、かなり薄まってきているようだ。また、会場でカメラを手にしている人の持っている機種を見てみると、ニコン D800 やキヤノン EOS5D Mark III といった、ハイエンドの一眼レフカメラが目立つ。しかも、けっこうな年配の人が多い。こういった中高年の富裕層によって、中国のカメラ市場は支えられているに違いない。だが、婚礼撮影器材展を目当てに来ている若い女性たちとは、明らかに違和感がある。それは、カメラ機材ショーとしての存在そのものが、もはや違和感のあるものになってしまっているからなのかもしれない。

▼写真10  
Clickで拡大
人のいる場もないほどギッシリ商品を広げているレフ板とアンブレラの専門ブース。

 若い女性の来場者が多いのは、この産業に従事している中心層が、そうした女性たちだからなのだろう。化粧品やアルバム、装飾品など、ブライダルの最新トレンド( あくまで中国限定のものだが )を把握しようという人たちが、それだけ多くいるということを表しているのだと思う。しかもウェディングフォト、ブライダルフォトに対する中国人の思い入れは、日本人の想像を遥かに超えるものがある。壁一面を覆うほどの巨大な婚礼写真や分厚い結婚アルバムを作ることに掛ける情熱は、正直理解しがたい。その背景には、家族の絆を大事にする宗教観や倫理観、また一人っ子政策の影響など、日本人の私には計り知れないものがあるのだろうけれど。

 とは言え、ウェディングに婚礼写真は欠かせない。それにはカメラをはじめ、様々な写真関連のビジネスが切り離せないものとなっていて、中国市場では、大きなビジネスチャンスを秘めているというのも事実だ。日本の 10 倍以上の人口を抱えた国の結婚産業は、そう簡単にはなくならない。まだまだ伸びる成長産業であり、写真文化の一翼も担っている。デジタル化が進み、発展を続ける写真産業が、今後中国やアジアの国々の中でどう展開されていくのか、これからも見守っていきたいと思う。

   
 
 
  このページのトップへ
 
space space space
space
space
space space space

     
 
 

     
リンクについて
著作権について
プライバシーポリシー