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薮田織也のフォトショップ早わかり
Photoshop Tips & Manual |
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■ [ チャンネルミキサー ] で人物を切り抜かずに背景の色を変える |
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●髪の毛を切り抜くのは至難の業
右のビフォー/アフターは、一見すると単に背景の色が違うだけで、何が特別なテクニックなのかがわかりにくいかもしれません。そこでもう一度、画像を拡大してじっくりとビフォー/アフターを見比べてみてください。わかりますか? 髪の毛の一本一本はそのままで、背景の色が変っているんです。しかも、よーく見ると、髪の毛や人物の輪郭に、背景の色が映りこんでいるのがわかるかと思います。あなたなら、このビフォーの写真をどうやって、アフターの写真のようにレタッチしますか?
背景が白一色なので、 [ 自動選択ツール ] を使って背景を選択して、背景だけ切り抜いた後に、背景を別の色で塗りつぶしますか? でも、一度でも右の写真のような髪の毛を切り抜いたことがある読者なら、その操作手順がどれだけ大変なことかを理解していると思います。そして、どれだけ綺麗に切り抜いたとしても、アフターの写真のように綺麗に背景に馴染ませることが難しいこともおわかりでしょう。その難しさがわからない方は、一度、右のサンプルを使って背景から人物を切り抜いて、まったく異なる色の背景の上に合成してみてください。
●背景の色を変えるだけなら切り抜かずに
もちろん、背景に別の風景などの写真を合成する場合は、どうしても人物を切り抜かないわけにはいきませんが、右上のビフォー/アフターのように、白い背景を別の色に変えるだけなら、面倒な人物の切り抜きは必要ありません。ここで紹介するテクニックを使えば、比較的簡単に背景の色を変えることができるのです。
●レタッチ操作の流れ
ここでは、以下の主な機能を使ってレタッチしていきます。
レタッチの流れは、右の通りです。
あらかじめ、 サンプル画像をダウンロードしておいてください。
●[ 色域指定 ] で大雑把に人物を選択
「 なんだ、 [ 色域指定 ] を使うのか。これなら切り抜きと同じじゃないか 」 と思った方もいることでしょう。確かに、[ 色域指定 ] は画像の切り抜きによく使われる機能です。 でも、ここではあくまでも補助的な役割として [ 色域指定 ] を使うのであって、画像を切り抜くために使うのではありません。
この [ 色域指定 ] という機能は、[ 自動選択ツール ] とよく似た機能で、画像上で指定した色に近い色を一度に選択する機能です。[ 自動選択ツール ] と異なるのは、一度選択した色域を、 [ 許容量 ] というスライダで、増減できることです。画面2は、背景の一部をサンプルとして取得した後で、 [ 許容量 ] のスライダを右方向に動かして、 [ 許容量 ] を増やしているところです。すると、最初にサンプリングした際に選択されていた範囲が増えて、マスキングされる範囲が減るのがわかると思います。また、選択された範囲を [ クイックマスク ] で表示させることができるので、現在、どの程度が選択されているのかが一目でわかります。
ここで [ 色域指定 ] を使うのは、まずは大雑把に背景を選択するためです。 [ 色域指定 ] を使うメリットは、選択の面倒な髪の毛の輪郭に沿って、背景を一度に選択できることです。 [ 色域指定 ] は画像上のすべての場所から、指定した色の近似色を選択してくるので、サンプル写真のように、はねた髪の毛の後ろに見える背景も、ある程度選択してくれます。ただし、背景の色が若干赤味がかった白ですので、当然ですが、人物の肌のハイライト部分も選択されてしまいます。背景の色がブルー系であれば、人物の肌は選択されにくくはなりますが、それでもフルカラーの写真には様々な色のついた画素がそこかしこに存在しますので、まったく選択されないわけではありません。
● [ ブラシ ] で人物を塗りつぶす
画面2の操作で、はねた髪の毛の輪郭に沿って、ほとんどの背景が綺麗に選択されましたが、画面4を見ると、人物の肌のハイライト部分も選択されているのがわかります。( この画面の場合、真っ黒な部分がマスクされている場所で、それ以外が選択されている状態になる ) このままでは、後の操作で [ チャンネルミキサー ] を使って背景の色味を変える時に、肌の色までが変化してしまうので問題です。そこで、画面4〜画面6の手順のように、 [ クイックマスクモード ] で [ ブラシ ] を使って、人物の内部を黒く塗りつぶすことで、人物を完全にマスキング ( つまり選択範囲外にするということ ) します。
● [ チャンネル ] パレットを使っているワケ
画面3で、[ クイックマスクモード ] にした後、 [ チャンネル ] パレットの [ RGB ] を非表示にしているのは、人物の内部を完璧に黒く塗りつぶすためです。通常の [ クイックマスクモード ] では、マスキングされた箇所が透明度のある赤で表示されますが、これだと塗り残し箇所 ( マスキングされていない箇所 ) がわかりにくいので、今回のように完璧に塗りつぶしたい場合は、 [ チャンネル ] パレットで [ クイックマスク ] チャンネル ( いわゆる [ アルファチャンネル ] ) だけを表示させます。 [ アルファチャンネル ] をひとつだけ表示させると、[ 画像領域 ] には白と黒のグレースケールで画像が表示されます。これは決して実際の画像が白黒になってしまったわけではなく、マスキング範囲がわかりやすくなるように暫定的に白黒表示されるのです。
● [ ブラシ ] の太さと硬さを使い分けて塗る
人物の内部を塗りつぶすときのコツは、塗りつぶす箇所に合わせて適時 [ ブラシ ] の [ サイズ ] と [ 硬さ ] を変えることです。例えば、人物の輪郭付近を塗るときは慎重に処理する必要がありますが、それ以外の場所は大きめの [ ブラシ ] で、 [ 硬さ ] を 「 100% 」 にして一気に塗ってしまいます。そして、輪郭付近を塗るときは [ ブラシ ] の [ サイズ ] と [ 硬さ ] の数値を小さくして、輪郭に沿って慎重に塗ります。 [ ブラシ ] の [ 硬さ ] の数値を小さくすると、 [ ブラシ ] の輪郭がボケるので、塗りつぶしがある程度輪郭からはみ出たとしても問題はありません。また、人物の輪郭は必ず背景の色が映りこんでいるものなので、輪郭は多少塗り残しがある程度の方がリアルになります。もちろん、完全に塗られていないのは問題なので、ボケ足のある [ ブラシ ] を使って塗るわけです。
●白い背景の色を [ チャンネルミキサー ] で変える
綺麗に塗れたら、画面7の手順で全 [ チャンネル ] を表示させて、[ クイックマスクモード ] を抜け、 [ 画像描画モード ] に切り替えます。すると、背景だけが選択された状態になっているので、ここで [ チャンネルミキサー ] の [ 調整レイヤー ] を作成します。( 画面8 )
[ チャンネルミキサー ] は、カラー画像に含まれる RGB 各チャンネルの色情報を使って、任意の [ チャンネル ] に任意の割合で色を混合させられる機能です。わかりますか? とってもわかりにくいですよね。(笑) [ チャンネルミキサー ] の機能は [ チャンネル ] の概念をきちんと理解していないととても難しいので、詳しくは Photoshop Manual の方でいつかきちんと解説します。ここではとりあえず、[ チャンネルミキサー ] は色を変えられる機能だと覚えてください。それも、「 白 」 や 「 黒 」 など、本来色情報を持たない部分も変えることができるのです。色味を変えるのなら [ 色相・彩度 ] を使うのでは?と思った読者もいるかもしれませんが、 [ 色相・彩度 ] は色情報がない 「 白 」 や 「 黒 」 などは変えられません。 また、変えられる色の範囲にも限界があります。 [ チャンネルミキサー ] なら、白い背景であっても、どんな色にも変えられます。( 画面9 )
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▼ 画面 A |
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左が元の写真、右が服だけ色を変えたもの。[ チャンネルミキサー ] を使うと、このように、服の色だけを変えることもできます。 |
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●髪の毛や肌の輪郭を背景に馴染ませる
[ チャンネルミキサー ] を使って背景の色を変えても、画像を拡大して髪の毛の周囲や人物の輪郭を観察すると、それぞれの輪郭が背景に馴染んでいないのがわかります。これは、画面2で大雑把な [ 色域指定 ] しかしていないからです。このままではさもレタッチしましたという画像ですから、画面10と画面11の操作で輪郭を背景に馴染ませます。
髪の毛や肌の輪郭を背景に馴染ませるためには、 [ チャンネルミキサー ] の [ アルファチャンネル ] で [ 消しゴムツール ] を使います。これは、画面11の画面では [ 消しゴムツール ] がどんな風に効果を及ぼしているのかがわかりにくいかもしれません。これは、実際には画面4〜画面6の手順で黒く塗りつぶしたマスキング部分を [ 消しゴムツール ] で消しているわけです。そのため、髪の毛の輪郭部分のマスキングが消され、消された部分にも [ チャンネルミキサー ] の効果が及び、結果、背景に馴染むようになるのです。ここが、今回のテクニックで一番肝となる部分です。
髪の毛の輪郭のマスキングを [ 消しゴムツール ] で解除しているのに、背景のように髪の毛の色があまり変らないと感じるかもしれません。しかし実は、背景よりは極端に変りませんが、髪の毛の色も 「 青紫化 」 しているのです。背景の色はほとんど 「 白 」 で、色の情報がありませんので、 [ チャンネルミキサー ] の効果がまともに及びますが、髪の毛には RGB チャンネルすべてに色情報があるので、一部の [ チャンネル ] だけを変化させても背景ほど大きく変化しないのです。
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Photo by Oliya T.Yabuta
▼画面1 |
サンプル画像を開き、 [ 色域指定 ] を実行 |
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▼画面2 |
[ 色域指定 ] で、髪の毛が綺麗に選ばれるように
[ 許容量 ] を指定 |
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▼画面3 |
[ クイックマスクモードで編集 ] にして
[ RGB ] チャンネルを非表示にする |
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▼画面4 |
人物を [ ブラシ ] で黒く塗りつぶす |
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▼画面6 |
肌や服の輪郭付近では、ブラシの [ 硬さ ] を変えて塗る |
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操作2 [ チャンネルミキサー ] |
★クリックで拡大 |
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▼画面7 |
全 [ チャンネル ] を表示させて
[ 画像描画モードで編集 ] に切り替える |
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▼画面8 |
[ チャンネルミキサー ] の [ 調整レイヤー ] を作成する |
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▼画面9 |
[ チャンネルミキサー ] で背景を 「 青紫色 」 にする |
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▼画面10 |
髪の毛を背景に馴染ませるために [ 消しゴムツール ] を用意する |
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▼画面11 |
[ 消しゴムツール ] の [ サイズ ] を調節しながら輪郭をなぞる |
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▼画面12 |
髪の毛の周囲や輪郭を背景に馴染ませて完成 |
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● [ 消しゴムツール ] の [ 流量 ] を調節
ここでのもうひとつのポイントは、 [ 消しゴムツール ] の [ 流量 ] を調整している点です。サンプルでは [ 流量 ] を 「 10% 」 と、極めて少ない流量に設定しています。この設定では、一度の操作で消せる量が 「 10% 」 なので、何度か画面を [ 消しゴムツール ] でなぞる必要があります。しかし、こうすることで背景への馴染ませ方を微妙に調節できるので、この方法は、よりリアルさを出すのに適しています。また、肌の輪郭部分では、 [ 消しゴムツール ] の [ ブラシ ] の [ 硬さ ] をよりボケ足のあるものにして消しています。こうすることで、肌の輪郭部分に 「 青紫色 」 のグラデーションができ、よりリアルに馴染むようになります。
●予告
この Tips は、もともと 「 複雑な髪の毛を綺麗に切り抜くには 」 というネタを書いているときに、途中で思いついたものです。ですので、近いうちに、上記サンプルを使った髪の毛の切り抜き方をお送りする予定です。
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