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大村祐里子の
プロ写真家に聞くライティング術2
第4回 楽しくなければ仕事じゃない
杉山雅彦氏に聞く集合写真ライティング


TOPIX

クリップオンストロボを使って魅力的な作品をつくりだしているプロ写真家に、大村祐里子さんがインタビューをして、ライティング上達の極意を教えてもらっちゃおう! という連載企画。前回は私、大村が取材される側としての登場でしたが……今回からはインタビュアーとして復帰です。さてその第4回目の登場プロは、皆様が最近よく目にしているであろう……劇的な集合写真を撮影されている大人気の写真家、杉山雅彦さんです!( 大村 )

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■ CP+でニッシンブースに登場した杉山雅彦さん

写真家:杉山 雅彦氏

Masahiko Sugiyama
1972年生まれ。静岡の「 フォトスタジオ ピース 」の代表。合成をせず実際に演じてもらい、日本アニメの一場面のような劇的描写力のある作風を「 ジャパニメーションフォト 」と名付け、インパクトのある写真を撮り続けている。NHK の「 おはよう日本 」で全国と「 NHK WORLD 」で世界に放映される。「 銀座&大阪ニコンサロン 」と「 リコーイメージングスクエア新宿 」などで写真展を開催。東京・大阪・九州など県外からの撮影のオファーが多く「 はたらく人たち 」をテーマに全国で活躍中。
http://pspeace.net/


杉山さんは普段静岡県にお住まいなのですが、CP+の期間中、ニッシンジャパンのステージでセミナーをするために横浜へいらっしゃっているという情報をキャッチいたしました! そこで、ステージ終わりに突撃取材をさせていただくことになりました! 今回取り上げる杉山さんの作品は、本年2月に広島県で撮影されたものです。残念ながら私は取材に帯同できなかったので、当時のメイキング動画と写真を拝見しながらお話をお伺いさせていただきました。


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■ 躍動感のある一発撮り集合写真

少しはにかみながらも饒舌に自身の作品作りを語る杉山さん

少しはにかみながらも饒舌に自身の作品作りを語る杉山さん

 

大村祐里子

お疲れのところ恐縮です。今日はよろしくお願いいたします。

杉山雅彦

写真家の杉山雅彦です。取材していただき嬉しく思います。よろしくお願いいたします。

大村祐里子

水を被っているプロフィール写真のロックなイメージが強かったので、イケイケな方かと思っていたのですが、物腰柔らかで、丁寧にお話をされる方で驚きました! しかし……杉山さんが撮られた写真は、眺めているだけで楽しくなりますね。

写真1 杉山 雅彦 氏の作品1
杉山さんが本年2月に撮影した広島県にある高校の生徒達の集合写真

杉山さんが本年2月に撮影した広島県にある高校の生徒達の集合写真

杉山雅彦

これは広島県立大崎海星高等学校の皆さんを写したものです。合成でなはなくて、一発撮りなんですよ。

大村祐里子

サッカーボールを蹴って舞い上がる砂、ハードルを飛ぶ生徒さんの躍動感……これを一発撮りされているとは気が遠くなるようなお話です。一体どのようなプロセスで撮影されているのか、教えていただいてもよろしいでしょうか。

杉山雅彦

まず現場でやることは、クリップオンストロボを 25 灯、スタンドに立てることです。

大村祐里子

ストロボを 25 灯! この連載史上、最多ですよ!

杉山雅彦

最近はほとんど 25 灯で撮影しています。なんでこんなに多くなっちゃったのかは、後ほどお話しますね。

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■ クリップオン・ストロボ 25 台で多灯撮影

大村祐里子

撮影風景を拝見したところ、ストロボの種類もいろいろ混ざっていますね?

杉山雅彦

今回使ったクリップオン・ストロボは、Nissin Di700A と Di866 MARK2、そして SB-800 です。それらをまとめて Air10s という電波式コマンダーで制御しています。Di866 MARK2 と SB-800 は電波式ワイヤレスに非対応なので、 AirR( ※ 電波式ワイヤレス非対応のストロボを電波式コマンダー Air10s でコントロール可能にする受信機 )をつけて対応しています。今回の写真1の撮影もそうですが、いつも集合されているみなさんの左側に置くストロボをAグループ、右側をBグループ、真ん中をCグループに設定して Air10s でコントロールします。

写真2 写真1のストロボセッティング
写真1の撮影で使った 25 灯のクリップオン・ストロボ

写真1の撮影で使った 25 灯のクリップオン・ストロボ

大村祐里子

25 灯もあると壮観ですね……。現場の「 ストロボに囲まれている感 」がすごいです。

杉山雅彦

ストロボがたくさんあると、出演者の皆さんのテンションも上がるんですよ。なんかスゲー!って(笑)

大村祐里子

そんな効果(笑)もあるんですね! ストロボをスタンドに立て終わったら、出演者の方々に入っていただくのですか?

杉山雅彦

いえいえまだです。ストロボのセッティングの後は、脚立や板などを駆使して、出演者の皆さまに立っていただく場所をつくります。僕の写真は出演者の数が多いので、前の人と被らないようなセッティングになるよう気をつけます。

大村祐里子

出演者の方々の配置って、どうやって決めているのですか? 杉山さんの写真のキモな気がしますが。

杉山雅彦

撮影の前に、入念な打ち合わせをするんです。前もっての絵コンテは用意していないのですが、頭の中にあるイメージをその場で描きながら打ち合わせます。実際の撮影になったら、現場に来られた出演者の方を観察させていただいて「この人、はじけそうだな」と感じる方がいたら、その方をメインにします。長年集合写真を撮っている人間の勘で、はじけそうな方が不思議とわかるんですよ。あとは、パズルを組み立てるような感じで、現場で配置を考えていきます。

大村祐里子

へええ~! なんか職人技ですね。それでもただでさえ難しい集合写真、しかも撮られるのに慣れていない一般の方々ばかりの現場ですよね。皆さんをはじけさせるのって難しいと思うのですが……。

杉山雅彦

はい。なのでまず、皆さんの前で「 世界一いい写真を撮りたいので力を貸してください!」とご挨拶します。そのあとは、まず練習が必要な方々から先に入っていただきます。

大村祐里子

練習とは?

写真3 メインの被写体と練習
この撮影でメインの被写体となる生徒たちと動きの練習

この撮影でメインの被写体となる生徒たちと動きの練習

杉山雅彦

この撮影では、最前列にバレーボールとサッカーボールの選手を配置して、2列目でハードルを飛ぶ選手に登場して欲しいと思いました。できれば躍動感が溢れるように。なにせ一発撮りなものですから、こういった動きのあるポーズをする方々は、事前に練習をしておかないとなかなか上手く撮れないんです。だから本番前に個別に練習をしてもらいます。「 こんな感じでボールを投げて欲しいです。やってみましょう 」とお願いして実際に何回かやっていただくわけです。

大村祐里子

合成なら一人ずつ撮ればいいわけですけど、それだと登場人数によってはとても時間がかかりますよね。人物撮影は一人でも集合写真でも、撮影時間は短いほど良いですものね。長くなると、撮影に慣れない方は疲れてしまいますし。

杉山雅彦

そうなんですよ。僕は特にモデルさんではなく一般の方を撮影することが多いので、撮影時間をとにかく短縮するようにしています。今回は、準備含めて8時間くらいかかったのですが、登場される皆さんにスタンドインしていただいたのは最後の2時間弱です。

大村祐里子

思ったより短くてびっくりしました。

杉山雅彦

個別練習が終わったら、光が弱まる夕方近くを待って、いよいよ全員にスタンドインしていただきます。そこからが撮影の本番です。

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■ ストロボの調光よりも大切なもの

大村祐里子

夕方を待ったのはなぜですか?

写真4 本番撮影は夕方
夕日が水平線に落ちる少し前に本番撮影に入る

夕日が水平線に落ちる少し前に本番撮影に入る

杉山雅彦

ストロボの光が、太陽光より強くなるのを待つんです。僕は自然光とストロボ光を混ぜた状態で撮影をするのが好きなのですが、日中よりも夕方近くの太陽光との方が、ストロボのバランスがちょうどいいんです。太陽光が強すぎると、それに対抗するには猛烈な光量のストロボが必要です。ストロボの光量を大きくすると、バッテリーの減りも速くなるし、ストロボがオーバーヒートして、連続して発光させられなくなりますからね。それと、ストロボの光量を上げると、閃光時間もわずかに長くなるので、激しく動く出演者の動きをきちんと止められず、わずかにブレてしまうことがあるんです。一番にはそのブレを避けたいので太陽光が弱くなる夕方近くを狙っているわけです。

大村祐里子

ストロボの光量……で思い出しましたが、25 台ものストロボを、一体どうやって光量調整しているんですか?

杉山雅彦

いつも TTL 調光しているんですよ。

大村祐里子

あっ、なるほど! 自動で調光できる TTL だから台数は関係ないわけですね!

杉山雅彦

マニュアル調光ができないわけじゃないんですが……僕は、撮影中は出演者の皆さんの配列とか演技とか表情だけに注目していたいんです。そして、それらを最大限に引き出すためのコミュニケーションに時間を費やしたいんです。僕の撮影はとにかく「 楽しく面白く 」がモットーなので(笑) だから、調光をしているヒマがないので、一番簡単な TTL 調光を使っているわけです。

写真5 生徒に演技指導
カメラの液晶画面を見せながら生徒達に演技指導する杉山さん

カメラの液晶画面を見せながら生徒達に演技指導する杉山さん

大村祐里子

TTL 調光でもここまできちんとライティングできてしまうものなんですね。

杉山雅彦

実はストロボの配置もわりと適当だったりします(笑) あ、適当といっても、知識と経験に基づいての「 適当 」ですが(笑)

大村祐里子

撮影中の動画を拝見すると、皆さん「 1、2、3、ヨイショー! 」という掛け声に合わせて飛んだり跳ねたりしていて、楽しそうです(笑)

杉山雅彦

掛け声をかけると、より一体感が出て、皆さんの表情がグンとよくなるんです。一発撮りならではの撮影方法ですね。皆でふざけると面白いじゃないですか(笑) パーツパーツを合成する撮影方法だとこれができないんですよ。

大村祐里子

完成した写真からは、そんな現場の楽しさが滲み出ていて、皆さんの通う学校がどんな雰囲気なのか、ありありと伝わってきますね。

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■ 面白く楽しくなければ仕事じゃない

 

大村祐里子

杉山さんの写真を紐解くには、杉山さんの人生についてお聞きする必要があるんじゃないかと、直感的に思いました。なぜこのような写真を撮影されるようになったのかとても興味があります。面白い人生を送っていなかったら、こんな爆発した写真、撮れないと思うんです。私は「 写真=人生観 」だと思っているので。杉山さんが写真を始められたきっかけからお聞きしてもよろしいですか?

杉山雅彦

僕の父が、コマーシャルフォトのスタジオを経営していたんです。だからカメラマンになったのはある意味で必然でした。父の後を継いでからはそのスタジオで料理や家具を撮っていたのですが、僕のやる気がまったくなくて(笑)、ある日クライアントからクビを言い渡されたんです。

大村祐里子

えー! いきなりクライマックス!

 

杉山雅彦

僕が悪いんですけど……父に相談したら「 お前はバカだから一度ゼロになれ 」と言われまして。それが 36 歳のときですが、実際にゼロになってみると収入もほぼゼロになってしまって(笑) しかもそのタイミングで結婚したんですよ。

 

大村祐里子

超展開……。

杉山雅彦

ちょうど東北の震災の年でもありましたね。「 俺って何やって生きていくのか 」と考えたとき、やっぱり写真をやりたいなって思ったんです。変な話ですけど……。写真で一発当てたい、と思う気持ちが芽生えてきて。

大村祐里子

そこで何をなさったんですか?

杉山雅彦

自分が単純に「 面白い、楽しい 」と感じる写真を撮ろうって思ったんです。面白くて楽しければやる気だってでるはずだって。僕のオリジナルシリーズの「 企業戦士サラリーマンダム 」はそこから始まったんですよ。街中の至る所で、サラリーマンがロボットアニメの名シーンを再現するというシリーズなんですけど(笑) 僕、ロボットアニメが大好きで(笑) それでやってみたらウケたんです。

大村祐里子

私もロボットアニメが好きなので胸熱です。いまの杉山さんの写真は「 ジャパニメーションフォト 」とうたっていらっしゃいますが、そこから命名されたんですね。

杉山雅彦

そうです。アニメって、僕、ひいては日本人の原動力だと思います。

大村祐里子

これが原点でしたか。面白いですねえ。

写真6 杉山さんの作品

 

杉山雅彦

自分が面白いと思って撮ったものは、その写真を観る人にも面白がってもらえるんだなって気がついたんです。楽しんで仕事するって大事だなと。それからしばらくして、サラリーマンダムを観てくれた「 コドモンデ 」という子供向けのお仕事図鑑をつくっている会社からお仕事の依頼をいただいたんです。

大村祐里子

これまた運命めいたものを感じますねえ。

杉山雅彦

打ち合わせで拝見した「 コドモンデ 」のプレ版は、近所の働くおじさんを取材するという内容だったんですが、それにピンと来て。この内容は少し発想を変えればもっと面白くなるぞって。

大村祐里子

どのあたりがピンときたんですか?

杉山雅彦

教育目的だけだとお金を発生させることは難しいんですけど「 企業のコマーシャルフォト 」という位置付けで働く人たちを撮影すればお金になるんじゃないかと。

大村祐里子

システムを思いついたんですね。作家さんってお金にならない撮影をしてしまいがちですが……きちんとビジネスに結びつけていらっしゃるのが戦略的で素晴らしいですね。いまの杉山さんの写真は「 集合写真 」ですが、企業のコマーシャルフォトで「 集合写真 」をあえて選んだ理由はなんでしょう?

 

杉山雅彦

惹かれるんです……集合しているものに(笑) 小さい頃に読んだ「 からすのパンやさん 」という絵本が好きだったんですが、その本のいろんなパンがたくさん描かれているページがとにかく好きで、そこから「 集合 」しているものに惹かれるようになったんです。集合写真というスタイルを選んだのも、それが関係しているのかもしれません。

大村祐里子

動機が可愛い!(笑)

杉山雅彦

そんなわけで集合写真を撮り始めたんですけど、最初は経験もないので無料で撮影していたんです。でも、消防署を撮影したあたりから流れが変わってきて、ちょっとずつお金を出してくださるところが増えてきたんですね。そのあたりから、面白い集合写真を撮っている写真家がいるというので、地元のテレビ局やスポーツ新聞にも取り上げていただけるようになって……いまの仕事のスタイルが形成されていきました。

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■ 杉山氏のドキュメンタリーフォトとは

大村祐里子

サラリーマンダムで楽しさ面白さに出会い、コドモンデでお仕事写真に出会ったのですね。ただ、いまの杉山さんの写真の「 テイスト 」はどこで作られたのでしょう? 楽しい、だけではいまの「 一発撮り 」スタイルには行き着かない気がして……。

杉山雅彦

僕ね、ドキュメンタリー写真が大好きで、ドキュメンタリー写真こそが写真の最高峰だと考えているんです。ドキュメンタリー写真を見ると、心が動くんです。楽しさ面白さを重要視したお仕事写真で完全に「 ドキュメンタリー 」っていうのは難しいんですけど、ドキュメンタリーのテイストだけはどうしても写真に入れたいなと思ったんです。それが入っていれば、見る人の心を動かせるんじゃないかな、って。

写真7 杉山さんの作品

 

大村祐里子

具体的に「 ドキュメンタリーのテイスト 」とはなんでしょう。

杉山雅彦

「 一瞬であること 」「 真実であること 」「 偶然 」の3つだと思っています。まず「 一瞬であること 」いうのは、僕が合成をしないで一発撮りをすることに関係しています。合成したら一瞬じゃなくなっちゃうわけです。2つ目の「 真実であること 」は、僕の写真の場合は脚色した真実なので、「 やらせリアル 」とか「 超リアル 」と言い換えた方がいいかな。実際のお仕事をされている方々の真実を忠実に撮ると、やはり地味になってしまうので、日常の業務を派手に脚色して演じていただく、いわば「 やらせ 」なんです(笑) 究極のやらせから真実が見える写真を目指しています。

大村祐里子

たしかに杉山さんの写真に登場する皆さんは、とてもリアルに見えますよ。脚色しているけどリアル、そのことから3つめの「 偶然 」の意味が見えてくる気がします。

杉山雅彦

そう、僕が絵コンテを描かない理由はそこにあります。脚色が盛り込まれた絵コンテにあわせて演技していただくと、リアルさが失われ、やらせリアル、超リアルではなくなってしまいます。だから絵コンテ無しの一発撮り、ある意味で「 偶然 」の撮影をしているのですが、一発撮りは常に失敗の可能性がつきまといます。毎回撮影のたびに失敗するんじゃないかって肝を冷やしています(笑)

 

大村祐里子

リアルに脚色されたドキュメンタリーにこだわるが故に一瞬の偶然から生まれる真実を狙おうとすれば、確かに失敗の可能性もありますね。

杉山雅彦

だから事前の打ち合わせと準備をキッチリとやっているわけです。企業が本気で依頼してくださっていて、撮影料金もいただいているので失敗は絶対に許されません。なにがなんでも、撮れるようにするんだ、という意気込みでやっています。

大村祐里子

楽しくて面白い杉山さんの写真の舞台裏を覗いたような気がします。背景には、壮絶な努力があるのですね。

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■ なぜ 25 台ものクリップオン・ストロボを使うのか

大村祐里子

ここらでクリップオン・ストロボのお話に移らせていただきます。25 灯ものクリップオン・ストロボを使う理由はなんですか?

杉山雅彦

クリップオンストロボを使うようになったきっかけがサラリーマンダムにあるんです。サラリーマンダムは街でゲリラ撮影(笑)をするわけですが、モノブロックやジェネでゲリラ撮影はできません(笑) クリップオン・ストロボなら小さいし電池駆動だから場所を選ばなくていいなと。あとは、ギラギラした硬めの光質と勢いがクリップオン・ストロボにはあるので、それが気に入りました。サラリーマンダムではまだ 25 灯も使ってはいなかったんですが、コドモンデで集合写真の撮影をするときからクリップオン・ストロボの数が増え始めました。大勢の集合写真で全員を均一に照らすためには、モノブロックだろうがジェネだろうが多灯が必須ですが、大きくて高価なストロボの数を揃えるのは経費的にも実務的にも大変ですからね。クリップオン・ストロボなら安価だし持ち運びも楽ですから。気がついたらいつの間にか 25 灯まで増えていました(笑)

 

大村祐里子

今回はその 25 灯を Air10s という電波式コマンダーで制御されていましたが、使用感はいかがでしたか?

杉山雅彦

いやー! 電波式は最高ですね。いままでの撮影では、メインのストロボの光に反応して他のストロボが発光する、いわゆる光スレーブで 25 灯をコントロールしてたんですよ。だけど光スレーブは、環境光が明るいと反応しないことがあるので大変でした。僕がピーカンの日中に撮影しなかった理由のひとつがここにあるんですけどね(笑) 光スレーブで反応しないときは、それぞれのストロボを近づける必要があるんですが、場合によってはストロボが画角の中に入ってしまうこともありましたよ。それが電波式コマンダーだと確実性があるし、ストロボの距離を離せるし、グループ分けしたストロボの光量を手元で調節できるし、もう良いことずくめです。おかげでストロボを気にせず出演者とのコミュニケーションに注力できました。

写真8 杉山さんの作品

 

大村祐里子

今までの撮影では杉山さんの奥様がアシスタントをされていたとうかがっていますが、奥様も大変だったでしょうね。

杉山雅彦

ストロボのセッティングでは妻とよく喧嘩になりましたよ(笑) 電波式に変えてからは夫婦円満です(笑)

大村祐里子

それは何よりです(笑)

杉山雅彦

Air10s で個人的に気に入っているのは、A、B、Cグループと個別に光量設定した状態でも、一度の操作で3グループを同時に調光できるところですね。僕はストロボの光量調整に時間をかけたくないので、複数のストロボの光量を一度に調整できると時間短縮になって助かります。

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■ 読者へのアドバイスと杉山氏の今後

大村祐里子

クリップオンストロボユーザーへアドバイスをいただけますか。

杉山雅彦

日中にストロボ光を使って撮ると不自然な画になると言って嫌う人がいますが、僕はストロボの光は演出だと思っているんです。ストロボの当て方によって僕オリジナルのカラーが出せるし、めちゃ楽しいんです。だからこれからクリップオン・ストロボを使う人達には、その不自然さを遊びに変えて欲しいなと思います。

大村祐里子

写真は自然な方がいい、と言われがちな世の中ですが、不自然を楽しむという言葉はいろいろな人を勇気付けそうです。

杉山雅彦

もちろん、不自然が行きすぎると気持ち悪くなりますよ。なんとなく不自然だけどというくらいが一番心地よいように思います。被写体が浮き立って見えますしね。具体的に言うと、自然光よりストロボ光を半段(0.5EV)くらい強くする感じです。2段以上強くすると不自然すぎちゃいますね。

写真9 杉山さんの作品

 

大村祐里子

杉山さんの写真は、ストロボ直炊きで、アクセサリは付けないで撮られていますね。

杉山雅彦

はい、アクセサリは基本的に使いません。光をやわらかくするディフューザーを使うと自分の作品じゃなくなっちゃうんですよね。直炊きでも作品づくりはできますから。気軽にストロボで遊んで欲しいです。

大村祐里子

杉山さんは今後やってみたいことなどありますか?

杉山雅彦

まだまだ働く人を撮りたいです! 道路関係、警察、自衛隊、パチンコ屋……撮ってみたいお仕事はたくさんあります。僕、ありとあらゆる仕事を「 蒐集 」したいんです。お仕事マニアなんです。

大村祐里子

杉山さんの素敵なところは「 僕はこれが好き!」と胸を張って言えるところですね。そして、そう言い切れる人が強いんだなと、お話を伺って強く感じた次第です。

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著者について
■ 大村 祐里子 - Yuriko Omura - ■ 1983 年 東京都生まれ 写真家( 有限会社ハーベストタイム所属 )  雑誌、書籍、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。『写ガール』にて「読書感想写真」、CAMERA fanにて「SHUTTER GIRL WORLD」連載中。http://shutter-girl.jp/