コンテンツのトップページへ プロが教える
写真レタッチ講座
第33回 Photoshop プラグイン 「nik Sharpener Pro 2.0」を試す
〜 プロ御用達シャープネスツール 〜 2007/01/31
 
Photoshop をさらに便利にするソフトウェア
シャープネスフィルタとは?
nik Sharpener Pro 2.0 の大きな特徴
NSP2.0 の基本インターフェースをチェック
NSP2.0 で実際に使ってみる
拡張モードを上手に使いこなす
RAW 現像直後にプレシャープニング
まとめ

プロやハイアマチュアにおすすめ
1点ものの仕上げに強力
大量なデータ処理にも便利

製品名 nik Sharpener Pro 2.0
対応製品 Photoshop CS2,CS,7.0
Elements 3〜4.0
対応OS Windows 2000 以降
Mac OS X 10.1.5 以降
発売元 株式会社ソフトウェア・トゥー
価格 Complete edition : 41,790円(税込) 
Inkjet Edition : 21,840円(税込) 

写真レタッチの
テクニックを磨くなら
プロが教える写真レタッチ講座
フォトショップの
小技を覚えるなら
Photoshop Tips & Manual

 
■ Photoshop をさらに便利にするソフトウェア
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ

●Photoshop プラグインってなに?

 

 古くからの Photoshop ユーザーなら、プラグインと聞けば、それが何であるか、すぐにわかると思いますが、「プラ…?」という読者のために、簡単に解説しておきましょう。プラグイン ( plug-in ) とは、Photoshop などのアプリケーションソフトウェアに機能を追加、拡張することのできるプログラムのことです。最近のアプリケーションソフトでは、プラグインの存在が当たり前になりつつありますが、Photoshop は 1990 年に発売されたバージョン1から、プラグインが使えました。古くから Photoshop を知る人の誰もが言うことですが、Photoshop が現在の地位を確立した最も大きな要因のひとつとして、このプラグインの存在があげられます。というのも、まだ世に出たばかりの Photoshop 1.0 は、今の CS2 はおろか、古くは 3.0 とも比べることができないほど、貧弱(レイヤーすらなかった!)な製品でしたが、アドビ システムズがプラグインの仕様を公開していたことで、他の企業、いわゆるサードパーティや個人が競ってプラグインを開発したのです。(今もそうですね) そうなると、Photoshop 本体の脆弱な部分はプラグインである程度はカバーできるわけで、アドビ システムズのメジャーバージョンアップ(1.0 から 2.0 へといった大きなバージョンアップ)を待つまでも無く、自分の Photoshop を頻繁に進化させていくことができたわけです。

 

 


 
ダウンロード

体験版をダウンロード
して一緒に試しましょう

nik Sharpener Pro 2.0 は、株式会社ソフトウェア・トゥーのページから、体験版がダウンロードできます。このページで紹介している内容を実際に体感するために、体験版をダウンロードして、コンピュータにインストールしてから読み進めることをおすすめします。

▼画面0 nik Sharpener Pro 2.0 の画面

  ●nik Sharpener Pro 2.0 もプラグイン
   
   さて、前置きが長くなりましたが、世界中に数え切れないほど存在する Photoshop のプラグインの中から、昨年、2006 年 11 月 28 日に 株式会社ソフトウェア・トゥーから発売された、シャープネスフィルタ、nik Sharpener Pro 2.0 を今回は紹介していきましょう。
   
■ シャープネスフィルタとは?
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ
●Photoshop にあるシャープネスフィルタ
   
   nik Sharpener Pro 2.0 (以下 NSP2.0 ) とは、名前のとおり、シャープネスフィルタのプラグインです。シャープネスフィルタとは、ご存知のように画像の輪郭にメリハリを与えて、画像のイメージをシャープにするフィルタです。シャープネスフィルタといえば、Photoshop には標準で4つ ( CS2 は5つ ) のシャープネスフィルタが搭載されていますが、そのうちのひとつ、 [ アンシャープマスク ] フィルタは、みなさんもよく使うシャープネスフィルタでしょう。さらに、CS2
から搭載された [ スマートシャープ ] フィルタは、 [ アンシャープマスク ] フィルタをさらに高機能にしたシャープネスフィルタです。(いずれ、フォトショップ早わかり Photoshop Tips & Manual で紹介します) これらの高機能シャープネスフィルタがあらかじめ搭載されているのにも関わらず、Photoshop の機能を拡張するプラグインとして、別のシャープネスフィルタである NSP2.0 が必要なのでしょうか。しかも決して安いとはいえない価格です。当然、 [ アンシャープマスク ] [ スマートシャープ ] よりも便利で、高機能でなければ購入しようとは思いませんよね。で、その実際はどうなのかをレビューしていこうと思うのですが、その前に、シャープネスフィルタの功罪について知っておいて欲しいことがあるのです。その功罪を知らないままだと、NSP2.0 の本当の実力が理解できないからです。
   

●シャープネスフィルタは安易にかけちゃダメ

 

 シャープネスフィルタは、画像にメリハリを与えてくれるとても便利なフィルタではありますが、安易に使うと、画像の品質を大きく損なうことがある危険と背中合わせのフィルタだということも、重要な知識です。その理由は、シャープネスフィルタの多くが、画像中のエッジの周囲にあるピクセル(画素のこと)のコントラストを変更することで、見た目のシャープさを実現しているからです。コントラストを変更するというとピンとこないかもしれませんが、その変更自体が、画像を不自然な状態にする編集であり、一度変更して保存してしまったら、二度と元に戻せないわけです。また、シャープネス効果の適用は、最終出力の形によって最適な方法を選ぶべきだということも、しっかり理解していなければいけません。最終出力とは、そのシャープネスフィルタをかける対象の画像が、どういう形で、どのような環境で人に見られるのかということです。たとえば、編集した画像を Web に掲載するのであれば、その最終出力の形はコンピュータのディスプレイであり、印刷したものを人に見せるのであれば、プリンタや業務用印刷機でプリントしたものが最終出力の形となるわけです。そして、その最終出力の方法や形を意識してシャープネス効果を適用しないと、画像は意図していなかった状態になってしまうことがあるのです。たとえば、ディスプレイ画面では見た目に美しくシャープネス効果が適用されたと思っても、その画像をプリンタで印刷すると、エッジが強調されすぎて汚くなってしまった、なんてことを経験したことがありませんか? この原因は、ディスプレイ画面で表示される画像の解像度と、プリンタで印刷されたときの解像度がまったく異なるもだからです。また、ディスプレイ画面での観賞は、色の付いた光そのものを見ているわけですが、印刷されたものは紙などの印刷用紙に転写されたもので、我々は紙から反射した光で画像を認識しているわけです。また、ディスプレイ画面のサイズの違いや、印刷用紙の質の違いによっても、シャープネス効果の良し悪しが変ってくることも覚えておきましょう。

 

 


●全体にシャープネスをかけるときの注意

 

 もうひとつ、シャープネスフィルタのやっかいなことを知っておいてください。それは、画像全体にシャープネスフィルタをかけると、シャープになって欲しくない箇所のエッジまでもが強調されてしまったり、画像にあるノイズがさらに大きく目立ってしまうことがあるということです。また、擬色といって、本来、画像にはなかった色のピクセルが混じってしまうこともあります。これは、 [ アンシャープマスク ] も [ スマートシャープ ] にもいえます。ですから、プロのレタッチャーは、シャープネスフィルタの設定値を細かく調整するのはもちろん、安易に画像全体にシャープネスをかけることなく、必要な箇所を [ 選択範囲 ] で選んで、そこにだけにシャープネスを適用します。ああ、面倒ですね。

 

 
従来からある
[ アンシャープマスク ] フィルタ

[ アンシャープマスク ] フィルタは、画像のエッジに沿って存在するピクセルのコントラストを強調して画像をシャープにするシャープネスフィルタ。指定したしきい値に基づいて、ピクセルが大きく変化する場所を割り出し、そのピクセルに隣接するピクセルのコントラストを指定した量だけ強くする。各ピクセルを比較する領域の半径をピクセル単位で指定できるので、半径の値を変えることで、シャープネス効果の程度が変えられる。
[ アンシャープマスク ] フィルタは、選択された単一の [ レイヤー ] 全体に適用されるので、シャープネス効果を適用したくない、または効果の程度を変えたい箇所がある場合は、適用したい箇所のみ範囲選択しておくなどして、シャープネス効果を適用しない、または程度を変えたい箇所をマスクしておかなければならない。


Photoshop CS2 から搭載の
[ スマートシャープ ] フィルタ

[ スマートシャープ ] フィルタは、 [ アンシャープマスク ] フィルタをより高機能にしたフィルタ。a の [ 詳細 ] を選べば、シャープネス効果の量や [ 階調の幅 ] 、エッジ周辺の [ 半径 ] を、シャドウとハイライト側で個別に指定できる。b の [ 除去 ] では、画像から「ぼけ」部分を除去する際に、ぼけ成分のコントロール方法を、 [ ぼかし(ガウス) ]、[ ぼかし(レンズ) ]、[ ぼかし(移動) ] の3つから選択し、画像に適したシャープネスをかけることができる。ちなみに、 [ ぼかし(ガウス) ] は [ アンシャープマスク ] で使っている方法。c の [ 精細 ] にチェックをつけると、フィルタの処理時間が長くなる代わりに、ぼけ成分をより正確に除去できる。





●面倒ならシャープネスを使わない?

 

 どうでしょう? こんなことを書くと、シャープネスフィルタって、とっても面倒なものだと思ってしまいますよね。そうです。本当にやっかいで面倒なものなのです。だからといってシャープネスフィルタを使わないわけにはいきません。なぜなら、撮影したデジタル写真データそのものを Web に掲載したり印刷することはほとんど不可能なことで、必ずといっていいほどサイズを縮小する必要に迫られるからです。画像サイズを縮小すると、当然画質は劣化して、全体的にボケてしまいますから、最終段階でシャープネスフィルタを使うことになるはずです。

 

 


●面倒だからこそのプラグイン

 

 製品レビューの前に長々とシャープネスフィルタの面倒なことばかり書いてしまいました。こんな書き方をすると、著名雑誌なら編集者にばっさりと冒頭部分を切られてしまうところですが、そこは「本当のことを伝える」スタジオグラフィックスです。まずは、シャープネスフィルタのやっかいな部分を知ってもらってから、その製品の良し悪しを伝えたいと思うわけです。で、何が言いたいのかと申しますと、「これだけシャープネスフィルタは面倒なのだから、そのためにプラグインがある」のだということです。つまり、わざわざ有料で購入しなければならないプラグインであれば、本来シャープネスが持っている面倒な部分を、当然の如く、プラグインがサポートしてくれるだろうということです。さて、それでは NSP2.0 が、本当に有益なプラグインなのかどうかをチェックしていきましょう。

 

 

■ nik Sharpener Pro 2.0 の大きな特徴

ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ
●まずは結果画像のチェック

 

 論より証拠というわけで、まずは NSP2.0 を使った結果の画像(Sample 写真)を見てみましょう。この Sample 写真には、NSP2.0 をかける前と後の状態が比較できるようになっています。Before が前、After が NSP2.0 をかけた後の写真です。写真をクリックして拡大して比較してみてください。Before の写真にはピンボケ写真が使われていますが、これは違いが大きくわかるように、わざと使っています。誤解なきように書いておきますが、シャープネスフィルタは、決してピンボケ写真を救済するのが目的のフィルタではありません。あくまでも写真の最終出力の直前に、出力形態にあわせて最適な表現ができるようにするためのフィルタです。(まぁ、筆者のようにピンボケが多いカメラマンには、結構便利なフィルタであることは否めませんけどね)

 この Sample 写真は、表示される実サイズで NSP2.0 をかけたもので、ここに掲載する前の加工は一切していませんので、細部をご覧になりたいときは、ポップアップ表示された画像を保存して、Photoshop で開いてみてください。この時に注目してもらいたいのが、人物の肌と髪の毛、背景の雲へのシャープネスのかかりかたです。

 

 


●人物の肌と髪、そして背景に注目

 

 Sample 写真の詳細を観察すると、髪の毛や目、服などには適度なシャープネス効果が適用されているのに、人の肌のグラデーションや、背景の青空には微妙か、ほとんどシャープネスがかかっていないのがわかるかと思います。これが、NSP2.0 の大きな特徴で、注目して欲しい部分です。 NSP2.0 は、画像の中から階調が大きく変化する部分と、滑らかに変化する部分を読み取り、変化の大きい部分にはユーザーが指定したシャープネスをかけ、階調が滑らかな部分にはあまりかけないように自動的に調整します。もちろん、この自動スキャン機能も万能ではありませんから、「その部分こはシャープネスをかけちゃだめだろ」、というようなケースもありますが、それを補うための機能(後述)も NSP2.0 には搭載されています。

  また、多くのシャープネスフィルタの大きな欠点ともいえる擬色の発生や、ハロー現象(シャープネスをかけたときに発生するエッジ部分の縁取り現象)も、NSP2.0 では最低限に抑えられているように見受けられます。Photoshop の [ アンシャープマスク ] や [ スマートシャープ ] と比較した場合、(個人の見た目の好みにもよりますが) NSP2.0 の絵作りには好感が持てました。

 

 


 
▼Sample nik Sharpener Pro 2.0 をかけた
写真の Before / After

上の写真をクリックすると、写真を拡大でき、Before 、After ボタンで NSP2.0 をかける前と後の比較ができる。人物の肌、髪の毛、背景の雲に注目。



▼画面1 nik Sharpener Pro 2.0 の画面

NSP2.0 は、画像のディテールをスキャンして、シャープネス効果を適用する部位とそうでない部位を判断、画像全体のイメージを壊さない最適なシャープネス効果が得られる。もちろんこの自動スキャンも万能ではないし、この機能だけで得られる結果には、さほど大きな見た目のインパクトはない。NSP2.0 の特徴は、この自動スキャンの機能をベースとして、次にやらなければならない煩雑で時間のかかる人為的な作業を、簡便化してくれるところにあるといえるだろう。


 

  そういうわけで、以下では、NSP2.0 の実際の操作を見てもらいながら、本来面倒なシャープネス効果適用の作業がどれだけ簡単になるのかどうかを見ていきましょう。

 

 

■ NSP2.0 の基本インターフェースをチェック
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ
● NSP2.0 の基本画面
   
   NSP2.0 をコンピュータにインストールしてから Photoshop を起動すると、Photoshop と同時に、画面0の左側にあるパレットが起動します。これは、nik Sharpener Pro 2.0 Selective (以下、NSP2.0 Selective )というパレットで、後に譲りますが、これが、NSP2.0 における新機能です。NSP2.0 のメインの画面は、画面0の右側の比較的大きな方です。このメイン画面にある機能を簡単に説明したのが画面2です。説明がいっぱい入ってしまって、とても見づらくなっていますけど、シャープネスフィルタに必要だと思われる機能は、ほとんどすべて網羅されていると言えます。NSP2.0 のユーザーインターフェース(以下 UI )で筆者が特に気に入ったのは、画面2n にある、プリセットです。NSP2.0 は、シャープネスフィルタとしては異例というくらいに設定パラメータがたくさんありますから、よく使う設定を登録しておいて、後から簡単に呼び出せるのは嬉しいことです。このプリセットには4つまで登録できますが、画面2 にある [ Save Load ] を使えば、設定状態をファイルとして保存しておくこともできます。頻繁に使う設定はプリセットに、使用頻度の低いものはファイルとして保存しておくといった感じで使えます。
   

●改善要求点

 

 個人的にとても残念なのが、 [ アンシャープマスク ] や [ スマートシャープ ] と同じように、実画像ウインドウへのプレビューができないことです。NSP2.0 のプレビューは、画面2 にある、プレビューウインドウのみです。普通、シャープネスフィルタを使うときは、実画像ウインドウを 100%表示にしてからフィルタを起動し、フィルタの設定パラメータによって画像がどう変化するのかを確認(プレビュー)しながら処理します。そうしないと、擬色の発生やハロー現象をきちんと確認できないからです。NSP2.0 のプレビューウインドウも プレビューの拡縮表示ができますが、いかんせんウインドウが小さいので、100%表示で画像全体を確認することができません。多分、NSP2.0 のシャープネス化のアルゴリズムが複雑で、実画像ウインドウに対するリアルタイムでのプレビューに時間がかかるのかもしれませんが、それであれば、プレビューのオンオフスイッチを付けておけば済むことだと思います。筆者は個人的に、シャープネスフィルタのプレビューは 100%表示が基本だと思っていますから、フィルタ画面内のプレビュー画面を廃止してでも、実画面ウインドウにプレビューを反映させるべきだと思います。

 

 

 
▼画面0 nik Sharpener Pro 2.0 の画面

▼画面
2-1
基本インタフェース

フキダシが一杯で画面がよくわからないかもしれないので、上の画面0と見比べよう。 画面0の左側にあるパレットについては後述。


▼画面
2-2
NSP2.0 の起動方法

NSP2.0 には、最終出力に合わせて選べるシャープネスフィルタが、11 個用意されている。それぞれ [ フィルタ ] メニューから起動できるが、NSP2.0 Selective からも同様に起動できる。ただし、NSP2.0 Selective は、シャープネス化の [ 自動処理 ] の工程として、各フィルタを起動する。(後述)

 
■ NSP2.0 を実際に使ってみる
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ
● シャープネスの [ 自動処理 ]

   それでは、NSP2.0 を使う手順を具体的に紹介しながら、実際のレタッチ現場に即した視点で、その使い勝手をチェックしていきましょう。

  まずは、NSP2.0 での新機能である、NSP2.0 Selective を起動します。(画面3-1) この NSP2.0 Selective は何者なのかといいますと、NSP2.0 が持つ 11 個のシャープネスフィルタのセレクター(起動装置)であり、かつ、実際のレタッチ現場で行なうシャープネス化の一連の処理を自動化してくれるツールです。実際のレタッチ現場では、シャープネス処理を画像全体に一様に施すことはあまりありません。それは、前述したように、シャープネス化したい箇所と、そうでない箇所があるからに他なりません。これも前述した NSP2.0 の自動スキャンは大変便利ですが、やはり万能ではありませんので、シャープネス化する箇所の選別には、人の手作業がどうしても必要になります。Photoshop に搭載されている [ アンシャープマスク ] や [ スマートシャープ ] を使った場合は、シャープネス化したい箇所をあらかじめ [ 選択範囲 ] で選択しておき、そこにのみシャープネスをかける ( a ) か、または、元画像を [ 新規レイヤー ] にコピーしておき、そのレイヤーに全体にシャープネス化を適用した後で、 [ レイヤーマスク ] を使って部分的にシャープネス処理を表示させるという手法 ( b ) を使います。

  NSP2.0 Selective は、 前述した b の方法を自動処理してくれるツールです。画面3-1で目的のシャープネスフィルタを選ぶと、そのときに選択していたレイヤーを [ 新規レイヤー ] にコピーして、[ レイヤーマスク ] を [ すべての領域を隠す ] 状態で作成してから、シャープネスフィルタを起動します。 画面3-2のようにシャープネス処理を設定して [ OK ] ボタンで実行すると、コピーされたレイヤーの画像をシャープネス化しますが、そのままでは [ レイヤーマスク ] ですべてが隠されていますので、画面上は元の画像のままになります。初めて NSP2.0 Selective を使うと、ここで一瞬、何も効果がないと驚いてしまいますが、画面3-3の手順を踏むと、「なるほど」と唸ってしまうはずです。画面3-3の手順のように、[ ブラシツール ] を使って、シャープネス効果を表示したい箇所を塗っていけば、画面3-2で施したシャープネス効果が表示されていく、というわけです。これは、[ すべての領域を隠す ] になっている [ レイヤーマスク ] を、 [ ブラシツール ] で部分的に消していく作業です。もし、 [ ブラシツール ] で余計な場所を塗ってしまったというときは、今度は [ 消しゴムツール ] を使って、余分な箇所を消すと、元に戻すことができるわけです。Photoshop を使いこなしているユーザーなら、「単純な処理」と思うかもしれませんが、こうした方法を知らなかったユーザーにとっては、とても有意義なことでしょう。実際に、とても便利です。
   

印刷目的のシャープネス化

 

 画面3-2を見ると、用紙の種類だとか、プリンター解像度、見る距離といった、従来のシャープネスフィルタでは見慣れない設定があることに気付くかと思います。印刷を目的としたシャープネス処理が非常に面倒だと感じてきた読者なら、この設定項目を見て、かなり 「グッ」 とくるものがあるはずです。つまり、印刷を目的としたシャープネスの設定ができるのです。これは一見、地味なことに思えますけど、大変なことですよ。

  冒頭で説明したとおり、印刷を目的とした最適なシャープネス処理は、ディスプレイ画面ではその最適さを確認することができません。シャープネス処理を施した後でプリントしてみて、初めてその結果が確認できるわけですから、最適なシャープネス結果を得るまでは、試行錯誤を繰り返すしかなかったわけです。その試行錯誤の大変さは、体験した人でなければわかりません。人によっては作品を創り上げる楽しさがそこにあると言うかもしれませんが、仕事でやってる側から言わせてもらえれば、楽しいなんて言ってられません。まして、業務用印刷となれば、自分ひとりの試行錯誤ではないですし、カメラマンがタッチできる範囲を大きく逸脱してしまいます。ちなみに、実際の仕事の現場では、カメラマンはシャープネス処理をほとんど行なっていません。というか、作業工程上、行なえない、というのが正しい言いかたです。シャープネス処理は、より印刷の工程に近い、デザイナーの仕事になります。つまり、ほとんどのカメラマンは、自分の作品が雑誌なり、ポスターになる工程において、シャープネス処理を人任せにせざるをえなかったのです。ところが、NSP2.0 を使えば、最終出力を想定して、自分でシャープネス処理を施すことができる可能性が高くなるはずです。カメラマンがシャープネス処理をしないとしても、デザイナーが NSP2.0 を使うことで、印刷までの作業効率が上がることは間違いないでしょう。

  一般のユーザーにとっても、試行錯誤の手間が省けることはとても有意義だと思います。使っているプリンタのメーカーを選ぶだけで、基本的に最適と思われるシャープネス化の設定がされていますし、自分でもある程度の設定が簡単にできるようになっています。面白いのは、印刷した写真を「見る距離」が設定できることです。これはとても重要なことです。シャープネス化は、要は見た目に美しくすることが目的ですから、最終出力の状態が、どのように見られるかを意識することは、最も大切なポイントでしょう。NSP2.0 は、写真をどのような距離から見るかを意識して、最適なシャープネス処理を施してくれるというわけです。

 

 
▼画面
3-1
nik Sharpener Pro 2.0 Selective
を起動する

製品のインストール直後は、Photoshop と同時に、NSP2.0 Selective も起動する。


▼画面
3-2
印刷するプリンタや用紙、印刷結果を眺める距離を設定する

[ 画像幅 ] と [ 画像高さ ] は、Photoshop で指定したドキュメントのサイズが反映される。本フィルタを適用する前に、Photoshop の [ イメージ ] メニューの [ 画像解像度 ] で、あらかじめドキュメントサイズを指定しておく必要がある。なお、ここで[ 画像幅 ] と [ 画像高さ ] を変更しても、実画像のサイズが変更されることはない。


▼画面
3-3
シャープネスを適用する箇所を
ブラシで指定

NSP2.0 Selective は、初期設定でシャープネス効果を適用する画像を別レイヤーに複製して、そのレイヤーに [ レイヤーマスク ] を自動的に適用する。そのままではシャープネス効果が隠されているので、 [ ブラシツール ] で [ レイヤーマスク ] の一部を消していくと、シャープネス効果が見えるようになる。


▼画面
3-4
インクジェットプリンタの詳細設定

NSP2.0 で、使っているプリンタの解像度が選べないときは、[ Settings ] を使って、新たにプリンタの解像度を登録する。






 

●プリンタの解像度を設定する

 

 NSP2.0 は、使っているプリンタメーカー用のフィルタを起動すれば、そのメーカーの代表的なプリンタに合わせた設定があらかじめされています。ただ、最新のプリンタにあった解像度がない場合もありますが、画面3-4の [ Settings ] を使えば、自分用の解像度を設定することができます。 プリンタのインクの数も、この [ Settings ] で設定することができます。

 

 

 
● 16bit/Lab モードでも使える

 

 NSP2.0 に搭載されている各種シャープネスフィルタは、Photoshop CS2、CS、7.0 に対応しています。NSP2.0 Selective も、一部条件がありますが、7.0 でも動作します。筆者が嬉しいと感じたのは、NSP2.0 が、16bit / Lab モードでも使えることです。なぜなら、シャープネスフィルタのように、画像の一部を極端に変更してしまうようなフィルタは、8bit / RGB モードでかけるよりも、16bit / Lab モードで行なう方が、画像の劣化を最小限に抑えることができるからです。CS2 や、CS では 16bit / Lab モードで使えるフィルタが増えましたが、7.0 ではほんの一部のフィルタしか使えませんので、NSP2.0 が 16bit / Lab モードに対応しているのは、7.0 ユーザーにとって、とても有益なはずです。

  ただし、Photoshop 7.0 のみ、16bit / Lab モードにおいて、NSP2.0 Selective の [ 自動処理 ] が使えません。これは、7.0 が16bit モード時に、複数レイヤーを作成できないことが原因であり、NSP2.0 の問題ではありません。8bit であれば、NSP2.0 Selective の [ 自動処理 ] は、RGB モードはもちろん、Lab モードでも問題なく使えます。

 

 

 
■拡張モードを上手に使いこなす
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ
●大量の写真を処理するには

   前述した NSP2.0 Selective は、一点ものの写真をシャープにする場合に、大きな威力を発揮すると思います。個人的にも大変便利なツールだとは思いますが、さて、編集しなければならない写真が大量にあるとしたら、果たして、[ レイヤーマスク ] を [ ブラシツール ] で編集処理をどこまでやれるのでしょうか。甚だ疑問です。NSP2.0 Selective で行なう [ ブラシツール ] の処理は、個々の写真で個別に手動で行なわなければならないので、 写真の量が増えれば大変な作業です。これはもちろん、 [ アンシャープマスク ] や [ スマートシャープ ] で [ レイヤーマスク ] を併用するとすれば、同じことですね。

  こうした、大量の写真を処理する場合に便利なのが、 画面4-1の Advanced モードです。Advanced モードは、シャープネスを適用する箇所と、その程度を、色域で指定できます。指定できる色域は、全部で5つ。スポイトツールで、選びたい色域をプレビュー画面上でクリックすると、クリックした箇所にある色を基準とした近似色が記憶されます。画面4-1のままだと、どの程度の色域が選ばれたのかがわかりにくいので、画面4-1の手順1、2を踏んで、プレビューを解析モードに切り替えると、画面4-2のように、シャープネス効果がかけられる箇所が赤で表示されます。このとき、赤が濃い箇所が、よりシャープネスがかかる箇所で、白に近づくほど、シャープネスがかからなくなります。

  こうした色域を使った方法であれば、前述した [ レイヤーマスク ] での方法と違って、写真が変っても、再利用できる可能性が高いはずです。たとえば、同じロケーションで撮影した人物写真が大量にあるとしたら、5色も色域指定できれば、ほぼすべての写真に利用できるはずです。NSP2.0 では、この Advanced モードで指定した色域をプリセットに登録できますから、別の写真で登録したプリセットを呼び出せば良いだけです。また、NSP2.0 を Photoshop のアクションに登録すれば、大量の写真をバッチ処理することもできます。
   
 
▼画面
4-1
nik Sharpener Pro 2.0 の
アドバンスモードを使う

シャープネス処理をかける箇所と、その程度を、5つまでの色域で指定できる Advanced モード。


▼画面
4-2
色域を指定して、シャープネスの
かかり具合を調節できる

解析モードで重ね表示をオンにすると、赤の単色で画像が表示される。赤が濃い場所は、よりシャープネス効果がかかる場所で、赤が薄い場所はシャープネス効果が弱くかかる場所。ここでは、背景の青空にはほとんどシャープネスをかけない設定にしたので、白く抜けている。



 
■RAW 現像直後にプレシャープニング
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ
●シャープネスは初めにちょっと二度目は最後

    最後に取り上げるトピックとしては、ちょっと順番が違うんじゃないかと言われそうですが、画像編集の一番最初にかけるのが効果的だとしている RAW Presharpening を紹介します。

  この RAW Presharpening は、RAW 現像した直後の写真にかける、微量のシャープネス効果があるフィルタです。この RAW Presharpening をあらかじめ写真にかけておくと、画像編集の一番最後にかける、NSP2.0 の各種シャープネスフィルタを使ったときに、ハロー現象や、擬色の発生を、できる限り抑えた上で、最適なシャープネス効果を得るようになります。

  RAW Presharpening を使うことを前提とした場合は、RAW 現像ソフトに搭載されているシャープネスフィルタは、使わないほうがいいでしょう。また、カメラのシャープネスも、できる限り遣わないか、使うとしても緩く設定しておいた方が良いようです。

  蛇足ですが、NSP2.0 のマニュアルには、この RAW Presharpening を、「RAW 形式ファイルにかけるシャープネスフィルタ」 と説明していますが、これは間違いで、あくまでも、RAW 現像直後のイメージ画像にかけるフィルタです。
   
 
▼画面
5-1
RAW 現像直後のイメージにかける Presharpening

nik Sharpener Pro 2.0 は、画像編集のワークフローにおいて、シャープネス効果を適用するポイントを、画像編集の前と後の2回が最適だとしている。この RAW Presharpening フィルタは、RAW 画像を現像して Photoshopで編集できる画像イメージに変換した直後にかける、前工程のシャープネスフィルタだ。
RAW 現像直後の画像に軽くシャープネスをかけておくことで、画像編集後の出力用シャープネスフィルタを適用した場合に、シャープネス効果によるノイズの発生を抑え、最適なシャープネス効果が得られるように設計されている。

■まとめ
ひとつ前のページに戻るこのページのトップへ
●写真編集のワークフローを熟知したフィルタ

   NSP2.0 は、簡単ポンで綺麗になるシャープネスフィルタ…、という製品ではなく、Photoshop のヘビーユーザーの、より高度な編集処理を手助けしてくれるシャープネスフィルタだと言えそうです。実際、NSP2.0 に用意された各種機能を見ていくと、写真編集のワークフローをよく考えて設計しているなと感じます。もちろん、Photoshop の初心者ユーザーにも、比較的わかりやすく便利に使える製品だとは思いますが、NSP2.0 の機能をフルに使うとなると、やはり、Photoshop や写真編集のノウハウをある程度理解していないと難しいでしょう。
   
 


    編集する写真のサイズによっては、時折、動作がゲキ遅になったり、便利だと思う Advanced モードの解析モードが使いづらかったりと、いくつか完成度がまだまだと思う部分がありますが、筆者個人としては、これは買いです。価格がちょっと高いとは思いますが、大量の写真を扱う仕事か、一点ものの作品で収入を得ているプロであるなら、すぐにペイできる価格です。一般ユーザーには、安価な「Inkjet Edition」がオススメでしょう。Complete edition も Inkjet Edition も、基本のエンジンは同じです。Inkjet Edition には、業務用のフィルタが搭載されていないだけですから、無理に Complete edition に手を出す必要はないでしょう。
   
 
初出:2007/01/31
  このページのトップへ
 
space space space
space
space
space space space

     
 
 

     
リンクについて
著作権について
プライバシーポリシー