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髭達磨のフォト日記
2014 年 11 月 13 日
SG on the ROAD 1 to 1 街角ポートレート

Posted On 2014 11月 13
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■ on the ROAD で街角ポートレート始めました

お久しぶりです。いかがお過ごしですか? 髭は血圧も血糖値も下がり、すこぶる元気です。さて、先日 11 月 9 日、髭が講師を勤めさせていただいているマンツーマンポートレートセミナー、SG on the ROAD 1 to 1 の vol.10 が無事終わりました。このセミナー、今まではニッシンセルフスタジオをお借りして、スタジオ撮影をメインとしてやってきましたが、今回から街角ポートレートを選べるようになりました。撮影場所はニッシンセルフスタジオがある高円寺周辺です。そこで今回のフォト日記では、高円寺周辺で撮ったポートレート例を紹介しながら、街角ポートレートを撮る上で皆さんに意識してもらいたい構図の作り方や、テーマについて解説します。

まずはニッシンセルフスタジオがある環七沿いの住宅街から一枚。写真1は、民家の塀を拝借して撮影。女の子の可愛さを表現したいだけのごく普通のポートレートですね。それでも雨上がりの曇り空の下、緑と壁の色から、しっとりとした空気感を感じていただけるでしょうか。ストロボやレフといった補助光は一切無しの撮影ですが、雲という天然のディフューザーが効いてくれました。

こうした閑静な住宅街の中でセミナーをやれるのもマンツーマンだからこそです。大勢のセミナーや撮影会ではすぐに苦情が出てしまいますからね。

写真1

カメラ:Nikon D800 レンズ:Tamron 24-70mm f/2.8 焦点距離:50mm f/2.8 ss:1/500 ISO:200 WB:自動 モデル:前濱 瞳




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■ ホワイトバランスを意図的に変えて撮影

写真2写真3は、これは高円寺の住宅街の中にある小さな児童公園で撮影したものです。雨上がりの雰囲気を出すために、わざとホワイトバランスを調節してブルーを少しだけ強くしています。本来曇天下や日影での撮影では、6000k 以上の色温度に調節することで、自然なホワイトバランスになりますが、ここでは 3300k という低い色温度に設定してブルーを強くしています。

こうしたホワイトバランスの調節は撮影時にすることもできますが、Raw データでの撮影を選ぶことで、後処理の Raw 現像時でも自由に変更できます。カメラ内 Raw 現像はもちろん、コンピュータに取り込んでからの変更もできます。髭は専らコンピュータ上での Raw 現像をします。というのも、屋内撮影はともかく屋外ではカメラの背面液晶パネルの色をあまり信用していないという理由があります。

写真2

カメラ:Nikon D800 レンズ:Tamron 24-70mm f/2.8 焦点距離:50mm f/2.8 ss:1/500 ISO:200 WB:3300 モデル:前濱 瞳


写真3

カメラ:Nikon D800 レンズ:Tamron 24-70mm f/2.8 焦点距離:50mm f/2.8 ss:1/1000 ISO:200 WB:3300 モデル:前濱 瞳

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■ 奥行きの有無による表現の違い

写真4

カメラ:Nikon D800 レンズ:Tamron 24-70mm f/2.8 焦点距離:70mm f/2.8 ss:1/5000 ISO:200 WB:自動 Raw 現像にて色調補正後 Photoshop にてモノクロ化 モデル:前濱 瞳

街角ポートレートを撮るときに、髭が強く意識していることがあります。それは、街に溢れる面と線をどう扱うかです。その扱い方ひとつで、写真に奥行きを与えたり、逆にまったく奥行きを無くすことができます。たとえば写真4です。被写体の背後にある横線のすべてが水平になるようにポジション( 面と平行になる位置 )を選びフレーミングします。このとき縦線は一切排除します。こうしたフレーミングで撮影すると奥行き感がなくなります。髭は、こうした平面的な絵作りをするときには笑顔を排除し、徹底的に無機質なイメージを心がけます。そうすると、モデルの内面が見えてくるような気がするからです。

奥行きの無い絵をつまらないと評する人もいますが、髭は一時期のソル・ルウィットのミニマル・アートを彷彿とさせるような上手な平面的写真であれば大好きです。写真4が上手な絵かどうかかは別ですが(笑)。

写真4に対して写真5は正反対なフレーミングをしています。歩道橋の手すりが描く「 線 」に注目してください。この線は消失点がひとつだけの、一点透視図法的な構図を描きます。その消失点がある場所に被写体を置くことで、比較的に小さく被写体を写していても、写真を観る人は否が応でも被写体に注目させられることになります。

もうひとつ一点透視図法的構図を意識した絵が写真6です。写真5と違うのは、消失点の上に被写体を置いていないことです。これら2つの絵を比べて、どんなイメージの違いを感じるでしょうか。教科書的に解説すれば、写真5は「 上昇志向 」、写真6は「 不安 」でしょう。もちろん、それを意識してモデルにもポージングしてもらいました。

髭は、ポートレートにおいては被写体自身が持つ個性を描き出すことを大前提に、被写体の内面をえぐり出したいと思っています。巷に溢れるただ漠然とお洒落な街角の風景を被写体の背景に設置するだけの写真では、写真が上手になればなるほど、いずれ飽きてしまうことでしょうし、写真を観る側の人も同様だと思いますが、どうでしょうか?

写真5

カメラ:Nikon D800 レンズ:Tamron 24-70mm f/2.8 焦点距離:24mm f/2.8 ss:1/800 ISO:200 WB:自動 Raw 現像にて色調補正後 Photoshop にてモノクロ化 モデル:前濱 瞳


写真6

カメラ:Nikon D800 レンズ:Tokina 16-28mm f/2.8 焦点距離:28mm f/6.3 ss:1/30 ISO:1600 WB:自動 Raw 現像にて色調補正後 Photoshop にてモノクロ化 モデル:前濱 瞳




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■ テーマとイメージを決めてから撮影しよう

高円寺駅を出てすぐを中野方面に歩いて行くと、写真7写真8のような飲み屋街があります。髭はポートレートのロケーションとしてここが大好きで、1 to 1 セミナーの受講生さんたちにも是非撮ってもらいたい場所だと思っています。ここでのテーマは「 Girl in 猥雑(笑)」。こうしたインパクトのある風景にもかかわらず、同じ場所、同じアングルとフレーミングで違うタイプのモデルさんを撮ると、面白いことにまったく印象の異なる絵になります。この日のモデルさん、前濱瞳ちゃんをここで撮るときに決めていたイメージは、「 すごく大切にしていたのに、お母さんに反抗するためにわざと壊してゴミ箱に捨てた人形 」です。わかります?(笑)

髭が思い描いていたテーマとイメージは、あらかじめ前濱瞳ちゃんには撮影前に伝えてありました。彼女はプロのモデルなので、当然、髭のテーマとイメージを彼女なりに解釈してくれ、撮影に臨んでくれました。ポートレートが他のジャンルと大きく異なるところは、作品作りが撮影者と被写体の共同作業の上におこなわれるということでしょう。これこそが、髭がポートレートを好きな大きな理由のひとつです。

写真9は、クリップオンストロボをカメラに乗せて直炊きで撮った一枚。焦点距離 16mm に対し、ストロボの照射角を 105mm にしてスポットライト効果を狙いました。撮影時間は正午で廻りは明るい場所でしたから、絞りを f/16、シャッタースピードを 1/250 秒で撮影しています。ストロボの光量はほぼフル発光です。

日中の明るい場所でこうした絵面を撮る方法はこちらを参照してください

写真7

カメラ:Nikon D800 レンズ:Tamron 150-600mm f/5-6.3 焦点距離:400mm f/6.3 ss:1/30 ISO:1600 Raw 現像にて色調補正後 Photoshop にてモノクロ化 モデル:前濱 瞳


写真8

カメラ:Olympus OM-D E-M1 レンズ:Olympus 14-35mm f/2.0 焦点距離:70mm f/18.0 ss:2.5sec ISO:200 モデル:前濱 瞳


写真9

カメラ:Nikon D800 レンズ:Tokina 16-28mm f/2.8 ストロボ:Nissin MG8000( 直炊き ) 焦点距離:16mm f/16.0 ss:1/250 ISO:1600 WB:自動 モデル:前濱 瞳

ここ数年、セミナーやワークショップにおいて、ストロボはカメラから離して使うべしと説いてきましたが、実は髭の中ではストロボのオフカメラライティングにちょっと飽きているのです(笑)。モデルやタレントのコンポジット( 宣材写真 )であれば、もちろん綺麗を優先にしてオフカメラライティングしますが、ポートレートは内面をえぐる写真にしたいので、オンカメラライティングだと思っています。その方が、撮影者と被写体の精神的な距離を狭めて撮れるのではないかと髭は思っています。

さて、なんだかんだ書き綴ってきましたが、SG on the ROAD 1 to 1 ポートレートセミナーは、こんな感じのポートレートが撮れるように、髭と受講生さん、そしてモデルさんの3人で一コマ 90 分間じっくりとおこないます。もちろんスタジオ撮影も選べますから、興味がある方はふるってご参加ください。なお、2014 年の 1 to 1 セミナーは 11 月で終了、2015 年は2月から月一で開催します。



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著者について
■ 薮田 織也( Oliya T. Yabuta )人物・光景写真家 ■  1961 年生まれ。テレビ番組制作会社、コンピュータ周辺機器メーカーの製品企画と広告制作担当を経て、1995 年独立、人物写真家に。2000 年よりモデルプロダクションの経営に参画し、モデル初心者へのポージング指導をしながらポージングの研究を始める。2008 年「モテ写: キレイに見せるポージング」を共著で上梓。2003年か らStudioGraphics on the Web の創設メンバーとして活動。近著に「 美しいポートレートを撮るためのポージングの教科書 」( MdN 刊 )、監修書籍に「 ちょっとしたコツで10倍かわいく見える モテ[写]の教科書。」(MdN 刊)がある。公益社団法人 日本広告写真家協会 正会員