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薮田織也のデジカメ 1・2・3
第2回 小さな花を大きく撮るには <前編> 2013/11/22
 
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読者から寄せられた質問に応え、今回は「 小さな花を大きく撮るには <前編> 」をお送りします。一眼レフやミラーレス一眼カメラの最大の特徴は、なんといってもレンズが交換できること。数あるレンズの中でも、小さなものを大きく写す、「 マクロレンズ 」を今回は紹介します。<はじめにを読む
 
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■ 質問 〜 小さな花を大きく撮るには?
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● 読者からの質問

   前回の予告を延期して、今回は読者からの質問を取り上げます。
question 小さい花を大きく撮る方法は?
  ネットなどで、小さな花を画面いっぱいに撮った写真を見かけますが、どうしたら、大きく綺麗に撮れるのでしょうか。拡大したり、トリミング( ※01 )しているのでしょうか。私が撮ると花一輪以上はフレームの中に入りますし、大きく写すために近づくとピントがあいません。教えてください。( N さん )

 

▼写真01  
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オリンパスの 50mm マクロ( 35mm 換算 100mm )に、エクステンションチューブ EX-25 を付けて、霞( かすみ )草を撮影。マクロレンズを使うと、花径が 1cm にも満たない花を、大きく映せる。

 同様の質問を多数いただきましたので、「 ピンぼけ写真から卒業しよう! < 後編 > 」は、ちょっとだけ延期させていただきます。読者の皆様からの質問は、基本的にメールマガジンの方で回答する予定なのですが、この「 小さな花を大きく撮る 」方法については、写真や図解が必要なので、本講座を使って説明します。

question 小さいモノを大きく写すレンズを使います
  小さなモノを大きく撮影することを「 マクロ( 近接 )撮影 」と呼びます。カメラを購入するときにセットで付いてくる標準的なズームレンズでは、ほとんどの場合で霞( かすみ )草ほどに小さな花を 写真01 のような感じでマクロ撮影することはできません。トリミングや画像拡大をせずに、小さなモノを大きく写したいときは、以下のような専用のレンズや、マクロ撮影用の器具を使います。

 1.マクロレンズを使う
 2.クローズアップレンズを使う
 3.エクステンションチューブを使う

 マクロレンズとエクステンションチューブの詳しい解説は、次のセクション以降で紹介します。

▼写真02 マクロレンズとエクステンションチューブ
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各カメラメーカーには、必ずマクロレンズとエクステンションチューブが用意されている。またレンズメーカーのマクロレンズは、安価で高性能が売りだ。

▼写真03 クローズアップレンズ
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クローズアップレンズは、カメラレンズの先頭に付けるフィルタータイプの近接撮影用レンズ。マクロレンズやエクステンションチューブよりも手軽で安価に近接撮影が楽しめる。クローズアップレンズには撮影距離の違いで複数ある。撮影距離が短いほど被写体に近づいて大きく撮影できる。

 マクロ撮影を、もっとも手っ取り早く安価に楽しむには、クローズアップレンズを使うとよいでしょう。クローズアップレンズは、手持ちのレンズの先頭に装着するだけで、小さなモノを大きく写すことができます。クローズアップレンズには倍率の違う数種類があり、また、使っているレンズの口径( レンズ先端の大きさ )に合せる必要があります。クローズアップレンズの欠点は、手持ちのレンズの口径が合わないと使えないことと、マクロレンズのような描写力を期待できないということの他に、ピントの合う範囲が近距離に限られるということがあります。それでも、マクロレンズを1本の価格で、数枚のクローズアップレンズが買えることを考えれば、一枚くらいは持っていても損はしないでしょう。


※01

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トリミング
本来の意味は、紙焼きプリントした写真を、カッターなどで切り抜くことをトリミングというが、汎用的に使われている意味では、「 暗室やコンピュータ上において、写真を矩形に切り出すこと 」をこう呼ぶ。トリミングすることで写真の構図を変えられる。

   
■ マクロレンズとは?
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● 普通のレンズとマクロレンズの違い

 
▼写真04 マクロレンズで撮った
ヒマワリとミツバチ
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Tamron SP 90mm F2.8 Di MACRO 1:1 VC USD + Nikon D800。ミツバチは頻繁に動くので、絞り F11 とシャッタースピード 1/1000 秒に設定するため、日中でも ISO 感度を 800 に上げている。

 マクロレンズとは「 近接撮影用レンズ 」のことです。近接、つまり被写体( 写したいモノ )の近くに寄って撮影することです。一眼レフが初めてで、コンパクトカメラや携帯、スマホなどのカメラを使い込んでいる人は、少し驚くかもしれませんが、実は、一眼レフカメラで使う一般的なレンズ( レンズキットでカメラを購入するときに付いてくるようなレンズ )では、あまり被写体に近づくことができません。レンズにはそれぞれ「 最短撮影距離 」( 図04 参照)というものがあり、最短撮影距離を超えて被写体に近づくと、ピントを合せられなくなるのです。

 

▼図05 マクロレンズは
なぜ大きく写るのか
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マクロレンズは普通のレンズに比べてワーキングディスタンスが短くなるため、最短撮影距離も縮まり、結果、受光センサー上に結像した実像が大きくなる。

 カメラ購入時のレンズキットに付属するレンズは、ほとんどが標準ズームレンズと呼ばれるもので、これらレンズの「 最短撮影距離 」は、およそ 25〜30cm ほどです。これら標準ズームレンズと同等のマクロレンズの場合は、20cm を切るものがあります。つまり、それだけカメラを被写体に近づけられるわけです。さらに、レンズには「 最大撮影倍率 」( 受光センサー上に結像する像の大きさと被写体の大きさの比 )というものがあり、普通のレンズは、被写体に対する実像の大きさが 0.3 倍前後のものがほとんどですが、マクロレンズの「 最大撮影倍率 」は、0.5 倍や1倍、つまり、普通のレンズにくらべて大きく写るわけです。

マクロレンズは「 最短撮影距離 」が短く、「 最大撮影倍率 」が大きいので、小さなモノを大きく写せる!
   
■ 選ぶならどんなマクロレンズ?
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● 75 〜 100mm 前後の中望遠マクロ!

 
▼写真06 マクロレンズを選ぼう
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タムロン の 90mm マクロは、フルサイズ機ではそのまま 90mm で使え、APS-C 機では 135 〜 144mm の望遠マクロになる。オリンパスの 50mm マクロは、フォーサーズおよびマイクロフォーサーズ機では、100mm になる。

 マクロレンズには、「 標準マクロ 」、「 中望遠マクロ 」、「 望遠マクロ 」の3種類があります。標準や望遠などのレンズの種類は別の機会に解説する予定なので、ここではそのまま覚えてください。これらのマクロレンズ中から、「 花 」などの小さなものを撮影するときに最適だと考えられるレンズが、「 中望遠マクロ 」です。その大きな理由は、「 標準マクロ 」に比べてキレイな「 ボケ 」を表現でき、さらに「 望遠マクロ 」よりも扱いやすいからです。柵があって近づけない場所や昆虫などをマクロ撮影するには、「 望遠マクロ 」の方が便利ですが、初めて購入するマクロレンズだとしたら、前述した理由から「 中望遠マクロ 」がオススメです。

 写真06 の引き出し画像のように、マクロレンズには、「 MACRO 1:1 」のような表記があります。これは、マクロのレンズの撮影倍率を示すもので、撮影倍率が1倍のときは「 1:1 」、撮影倍率が 0.5 倍のときは「 1:2 」となります。オリンパスの 50mm マクロは「 1:2 」と表記されていますが、実際の画像は「 1:1 」と同じ倍率で撮影されます。この謎については、別の回で紹介します。

 

   
■ マクロレンズで花を撮ろう!
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● タムロン 90mm マクロ+ニコン D800

 
▼写真07 被写体はコレ
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マクロレンズを試す被写体に、アレンジメントフラワーを選んだ。一番小さな花、「 かすみ草 」をターゲットにしてみよう。
▼写真08 最短撮影距離で設置
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▼写真09 これ以上近づけない
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中央の黄色い花の花心をピント合わせのターゲットにして、最短撮影距離にカメラを置いて撮影。これ以上は全体がピンぼけするので近づけない。

 まずは、ニコン D800 ( フルサイズ機 )に、タムロンの 90mm 中望遠マクロレンズを付けて、アレンジメントフラワー( 写真07 )を撮ってみようと思いますが、その前に、普段の撮影でよく使う標準ズームレンズだと、どの程度まで近づけるのか見てみましょう。

 写真08 は、D800 にタムロンの SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD という標準ズームレンズを付け、最短撮影距離に近づけて設置しているところです。この状態で撮影したのが写真09

 次に、同じカメラ、レンズで、同じ最短撮影距離のまま、ズームを望遠側に振って撮ってみたのが、写真10 です。わずかですが、花を大きくできました。しかし、これでもまだもの足りませんよね。

▼写真10 望遠にすると少し大きくなる
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ズームレンズを望遠側( 70mm )にして最短撮影距離で撮影。少し大きく写せた。

 

▼写真11 最短撮影距離で設置
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 さて、いよいよマクロレンズを試してみましょう。90mm マクロレンズは、写真08 の標準ズームレンズよりも望遠寄りのレンズのため、最短撮影距離に大きな変化はありませんが、数 cm は近づけています。また、中望遠マクロなので、撮影倍率は1倍になります。こうして撮影したのが写真12 です。

▼写真12 マクロレンズで撮影
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かすみ草にピントを合わせて撮影。背景は大きくボケている。

 写真12 は、マクロ撮影の作品としてはちょっと...という感じですが、普通のズームレンズと比較するために、かすみ草にピントを合わせて撮影しました。

 

第6回 小さな花を大きく撮るには < 後編 >

 

   
■ コラム:マクロ撮影の極意 1
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● ピントはマニュアル! 三脚を使おう!

 
▼写真13 低く設置できる三脚を選ぼう
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 マクロ撮影では、ピントの合う範囲( 被写界深度という )がとても狭くなるので、普通のズームレンズに比べてピント合わせがとてもシビアになります。オートフォーカス( 第4回で紹介する予定です )に頼って撮影すると、思い通りのピント合せができないことがあるので、できるだけマニュアルフォーカスモードで撮影するようにしましょう。マニュアルでのピント合せも、第4回で紹介する予定です。


 マクロ撮影は、ピント合わせがシビアなだけではなく、撮影範囲も狭くなるために、手ブレしやすくなります。納得のいくマクロ写真に仕上げるためにも、三脚を使うようにしましょう。三脚は、写真13 のように、低い位置に設置できるものを選びましょう。

 写真13 のような位置にカメラを設置をすると、ファインダー( 覗き窓 )を覗きにくくなるので、積極的にライブビューモードを使うと良いでしょう。ライブビューモードについては、別の回で紹介します。

   
■ 新企画・あなたの質問が本 Web 講座を作る!
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● 質問待ってます!

 

 超初心者向けに始まった長期連載「 薮田織也のデジカメ1・2・3 」では、読者の皆様から撮影やカメラについてのご質問を募っています。いただいたご質問への回答は、本講座、またはメールマガジンに掲載する予定です。

 「 撮影での悩み 」、「 カメラのココがわからない 」など、質問したいことがあれば以下のリンクからドシドシお寄せください。質問は無料です。リンク先の注意事項をお読みいただき、ご了承の上で質問をお送りください。

質問受付
   
■ 次回予告
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● エクステンションチューブを使って、もっと近寄ろう!

 

 次回は、「 小さな花を大きく撮るには <後編> 」。マクロレンズにエクステンションチューブを付けて、さらに花に近づいて撮る方法を紹介します。お楽しみに!

■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
薮田織也事務所
   
 
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初出:2013/11/22 このページのトップへ
 
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