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高崎勉のネットショップのための商品撮影講座
~ 第7回 透明なボトルを撮る

Posted On 22 1月 2016
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TOPIX

今回の高崎勉のネットショップのための商品撮影講座は白ワインのボトルを被写体にして解説をいたしました。商品撮影の際に多くの方が「 難しい 」と感じる瓶・ボトル。入手しやすい機材を使用したセット構成、ライティングを具体的に記述しております。 by 編集部

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本年もよろしくお願いします。フォトグラファーの高崎勉です。
昨年は僕にとってWebマガジンでの連載を行うという、初めてのチャレンジをした一年となりました。今年も役に立つ記事を読者の皆様にお届けできるよう精進いたします。ご支援よろしくお願いします。
さて、前回は透明な商品について解説しましたが、今回は同じ透明なものでもボトルを題材にしてみましょう。
「 商品撮影が難しい 」と言われる理由の一つに、透明なボトルを撮ることが難しいということが要因になっているかもしれません。 初めて光を当ててみて誰もが戸惑う、そんな透明なボトルを上手に撮る方法を今回は解説いたします。

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■ 液体が入ったボトルが映りこむ理由

今回は中身が透けて見える白ワインのボトルを被写体に解説しましょう。
まず、皆さんのオフィスやご自宅の1室にあるテーブルに置いて撮ったように、僕のアトリエのテーブルに置いて撮りました。

▼写真1
周囲が映り込んでしまっている

周囲が映り込んでしまっている

背景にある本棚がワインの液体に複雑に映っています。これはボトルの中のワインがレンズ効果となり背景が映りこませています。このため商品の正しい姿を表現できていません。

■ 背景作成とライティング

複雑な要素を取り除いてスッキリ見せる必要があります。撮影した写真背景の「 動かせるもの 」と「 動かせないもの 」を考えます。今回の場合は▼写真1の背後にある本棚を動かすことはできません。ですので、部屋の中で作業しやすい場所にテーブルを移動し、背景を作ることから始めます。

▼写真2
床~背景に白ケント紙を設置。室内の照明と窓からの光で撮影

床~背景に白ケント紙を設置。室内の照明と窓からの光で撮影

床と背景に繋ぎ目が出ないようにテーブルの上にB1サイズ( 728mm × 1030mm )の白いケント紙を置き奥をRにして立ち上げました。( 後述する▼写真4、5を参照 ) 大きな布でも構いませんがシワを綺麗に見せることに時間と手間がかかります。慣れないうちは白い紙や塩ビのシートなどが便利です。

▼写真3
電球とクリップタイプのソケットは家電販売店で購入。( スタンドは別 )

電球とクリップタイプのソケットは家電販売店で購入。( スタンドは別 )

これでボトルの中身はスッキリしましたが、まだガラスの表面に様々なものが映り込んでいることがわかります。部屋の照明をそのまま使っているので様々な種類のライトや窓から入る自然光が入り混じっています。これでは正しい色再現はできません。 オフィスや店舗では様々な種類の「 光 」が入り乱れています。 ( 太陽光、蛍光灯、白熱電球、そしてLEDなど。 )

太陽光といっても天気や時間帯で色はかなり変化します。また蛍光灯やLEDにも様々な色味があり、写真撮影の時には光の種類を揃えることが肝心です。 僕は普段の仕事ではプロ用の照明機材を使いますが、今回は誰でも商品撮影にチャレンジできるよう、一般家庭用のLEDライトを使用することにします。( 第2回目と同様です。 )

LEDは最近では色の再現性の良いものが比較的安価に入手できるようになりましたからスタジオ撮影の経験のない方でも安心です。 ただし、点灯後のライトは熱をもちますので、素手で触ったり、物に近づけ過ぎたりしないようご注意ください。怪我や事故の元になります。

▼写真4
白ケント紙で床から背景をセットし、LED( 電球色 )でライティング

白ケント紙で床から背景をセットし、LED( 電球色 )でライティング

▼写真5
裏側から見た、セットの状態

裏側から見た、セットの状態

撮影に入るときは先ず、カーテンを閉めるなどして外光を遮断し、撮影用のライトをつけます。そして他のライトは全て消します。 そうなると他の方がいらっしゃる部屋では難しいですね。できれば撮影専用のブースが欲しいところですが、無理なようでしたら撮影セットを組みながら邪魔な光が撮影セットに影響しない工夫が必要でしょう。
では、次に▼写真6をご覧ください。

▼写真6
同じ種類の照明( LED白熱色 )を2灯使用して撮影した写真

同じ種類の照明( LED白熱色 )を2灯使用して撮影した写真

▼写真2に対して▼写真6は色の再現が正確で鮮やかな緑色が出ています。余計な写り込みがなく、スッキリ見えます。 ワインは暗く温度管理された場所に保管されるものですから、撮影のためとはいえ、時間をかけて照明をして撮影することは相応しくないでしょう。
だからこそ事前に知識を身につけて、迅速に正確な写真を撮ることが大切です。 伝わりやすい写真で商品を紹介でできれば、販売にもつながることになるでしょう。サイトやカタログ上で商品の「 顔 」を写真で伝えるからには、やはりその商品自身の色彩を放つほうが印象に残ります。また赤ワインと並ぶときにも一目瞭然ですよね。

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■ 白ワイン撮影のためのライティングセット詳細解説

▼写真7
▼写真6の撮影セットをカメラ脇より撮影

▼写真6の撮影セットをカメラ脇より撮影

商品の上にある黒い板で見えませんが、その後ろからも白い背景に対してライトを1灯当てています。黒い板はその光が商品に当たらないようにするため、そしてライトが直接カメラのレンズに当たらないようにする役割があります。ライトの光を肉眼で直接見ると眩しいですよね。カメラも同じで無駄な強い光を向けられるとハレーションを起こして写真が霞んでしまいます。レンズのフードだけでは遮ることができない光を、このようにコントロールすることで画質がアップします。手間がかかりますが商品撮影に限らずどんな撮影にも共通したスタジオ撮影の基本といえます。

背景に対して1灯、そして商品の左側から1灯で撮影しました。 左からの光には商品の近くに90cm幅のトレーシングペーパーを垂らしました。これが商品のガラスに映り込むので綺麗なものを使わなければなりません。ライトとそのトレーシングペーパーの間にもう1枚ディフューザーが設置されていますが、これによってガラスに写り込む光の芯を和らげました。プロが使う照明機材では灯体自体で光の強さや光の芯の大きさを変えることができるものもありますが、今回は一般的な電球を使っていますのでこのような作業で光の芯の調整をしました。

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■ 太陽光と人工光( 家庭用電球・写真用照明機材 )の違い

さて、こうして家庭用LED電球を使って撮ることはできましたが、「 だったらなぜ、プロは写真専用の機材を使うのか? 」という疑問を抱かれるかもしれません。 誰もがこうして一般家庭用電球や太陽の光で撮れるではないかと。。

ここでそれぞれの光の特徴をあげてみましょう 。

(1)太陽光
・時間帯や雲のよって、光の強さ、色、角度が変わる。
・光が強い。

(2)一般家庭用電球
・光が弱い。
・光の強さが調整できない。
・演色性に乏しい。(細かい色の差が出せない)

(3)写真用照明
・光量が大きい。
・光量を調整できる。(できないものもある)
・堅牢。
・アクセサリーが豊富
・中には色温度を調整できるものもある。
・高額
・使用、メンテナンスに専門知識を要するものが多い。

太陽の光で綺麗に撮ることはできますが、光が安定しないので、全く同じように撮ろうとしてもそれはプロでも困難です。イメージカットだったらいいのですがプロダクトカットなどのように同じ条件で正しい色の再現をしようとすると太陽光は不向きです。
一般家庭用電球(LED)は写真を撮るためには光量が弱いです。 この講座の中で様々な被写体で使ってみましたが、なかなか大変でした。ブレやすいからといって、ISO感度を上げ過ぎると画像の粒状性が損なわれる原因になります。 最近はかなり演色性の良いものが増えてきたようですが個体ごとのバラツキがあってもおかしくはありません。そもそも写真撮影向けに作られていませんから、あくまでも急場凌ぎです。
しっかりと商品撮影をしたいと願うのでしたら写真専用の照明を用意なさることをお勧めします。

◆本記事を執筆している 「 高崎 勉先生のDVD教材 」↓↓↓

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■ 今回の1枚

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作品「 Breath.(♯001) 」
僕がアーティストとして活動になることになったきっかけの1枚です。もう10年くらい経ちますが今でも人気のある作品です。コマーシャル色が強いですが表現したいことが明確で自分の指針にもなりました。

■ 次回予告

次回は同じワインでも赤ワインの撮り方を解説いたします。透過しない赤ワインはまた違う難しさがあります。それでは次回をお楽しみに。

■ 撮影協力 ■

株式会社 タムロン
ベルボン 株式会社
ワインと地酒のセレクトショップ Nishida

高崎勉
著者について
■ 高崎 勉 - Tsutomu Takasaki - 1967年 富山市生まれ 写真家、広告カメラマン ■ 東京工芸大学短期大学部卒業後(株)アマナを経て1999年独立。主に広告業界で活動し「心に響く商品写真」を追求。プロフェッショナルクリエイターを育成する「Takasaki Seminar」を開催し、後進の育成にも積極的に関わる。第65回毎日広告デザイン賞・最高賞。87th N.Y.ADC 入賞。APAアワード入賞など、受賞多数。作品制作にも積極的に取り組んでおり、2011年の発表以降、年2~3回のペースで写真展開催。NPO法人「日本の写真文化を海外へプロジェクト」ディレクター。プライベートでは被写体を「商品」から「愛娘」に替えて、写真三昧の日々を過ごす。
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