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薮田織也のデジカメ1・2・3
第7回 露出設定の基本を覚えよう ~ シャッタースピード

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TOPIX

今回から数回にわたって、「 露出 」と、その「 設定 」について紹介していきます。1回目の今回は、まず「 露出とはなにか 」、そして露出設定で重要な3つの要素のひとつ「 シャッタースピード 」について解説します。

 

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■ 露出とは

● 光のコントロール=露出設定

写真01長時間露光による川の写真 川に三脚を沈め、川面すれすれにカメラを設置。レンズに ND フィルターを2枚重ねて、シャッタースピード1秒間で撮影。 ( カメラ:OM-D E-M1 レンズ:Zuiko 14-35mm F2.0 SWD フィルター:ND4+ND8 絞り:f/16 シャッタースピード:1秒 ISO:100 )

写真01 長時間露光による川の写真
川に三脚を沈め、川面すれすれにカメラを設置。レンズに ND フィルターを2枚重ねて、シャッタースピード1秒間で撮影。
( カメラ:OM-D E-M1 レンズ:Zuiko 14-35mm F2.0 SWD フィルター:ND4+ND8 絞り:f/16 シャッタースピード:1秒 ISO:100 )

 

カメラにおける「 露出 」とは、カメラの受光センサーにあてる光の量と時間のことで、その光の量と時間を自在にコントロールすることを「 露出設定 」と呼びます。思い描いたイメージで写真を撮るためには、露出を理解し、状況に応じて上手に設定する必要があります。

露出設定をするためには、カメラに搭載された機構の「 シャッター 」と「 絞り 」、さらに受光センサーの能力である 「 ISO 感度 」を使います。これら3つの要素がもつ役割と特性を理解すれば、写真01?のような写真が撮れます。

今回は、露出設定に関わる3つの要素のうち、「 シャッター 」について解説しましょう。

 

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■ シャッターとシャッタースピード

カメラのシャッターとは「 光を遮る装置 」のことで、カメラ内部の受光センサーに光をあてる時間を調節する機構です。そして、シャッターを開いている時間のことをシャッタースピードと呼び、1/125 秒や1秒といったように秒数で表現します。

 

●シャッタースピードの例( カメラでの表記の例 )
B 4″ 2″ 1″ 2 4 8 15 30 60 125 250 500 1000
遅い ← → 速い
シャッタースピードのカメラでの表記は、1/125 秒を「 125 」と、分子を省略し分母のみを表示する。1秒を超えるスピードは、数字の右に「 ” 」を付けて表示することが多い。「 B 」は「 バルブ( Bulb ) 」の略で、シャッターボタンを押している間シャッターを開いたままにするもの。

 

シャッターの機構には何種類かがありますが、ここでは一般的なデジタル一眼レフカメラに使われているシャッターを例に説明します。

 

● シャッターはどこにある?

シャッターは、レンズとカメラ内部の受光センサーの間にあり、受光センサーを隠すように設置されていてます。レンズをカメラから外すと、写真02?や写真03?のように、シャッターを観ることができます。

シャッターは、2つの「 シャッター幕 」で構成されています。これらの写真では複数の黒い板で構成されているように見えますが、実はこれを1セットのシャッター幕として、さらに見えない部分に同じ構成のもう1セットのシャッター幕が隠れています。この2セットのシャッター幕のうち、先に動き出すものを「 先幕( さきまく )」と呼び、後で動き出すものを「 後幕( あとまく )」と呼びます。この2つのシャッター幕が開いている時間がシャッタースピードです。また、シャッター幕自体が動く速さは、どんなシャッタースピードにおいても一定だということを覚えておいてください。

写真02一眼レフカメラのシャッター 一般的なデジタル一眼レフカメラのシャッター幕は、受光センサーの手前にあり、普段はその手前にミラーが降りている。

写真02 一眼レフカメラのシャッター
一般的なデジタル一眼レフカメラのシャッター幕は、受光センサーの手前にあり、普段はその手前にミラーが降りている。

写真03ミラーレス一眼カメラのシャッター ミラーレス一眼カメラの場合は、シャッター幕の前にミラーがない。また、通常はシャッター幕が開ききった状態になっている。

写真03 ミラーレス一眼カメラのシャッター
ミラーレス一眼カメラの場合は、シャッター幕の前にミラーがない。また、通常はシャッター幕が開ききった状態になっている。

 

● シャッターの仕組み

2セットのシャッター幕を使って、シャッターがどのように開閉するのかを紹介しましょう。

写真04シャッター幕の開閉 シャッターの動きには2通りある。シャッタースピードがある一定の速度よりも遅い場合は、先幕が開ききってから後幕が降りる。それに対して、シャッタースピードが速い場合には、先幕と後幕が任意の間隔をおいて同時に降りる。

写真04 シャッター幕の開閉
シャッターの動きには2通りある。シャッタースピードがある一定の速度よりも遅い場合は、先幕が開ききってから後幕が降りる。それに対して、シャッタースピードが速い場合には、先幕と後幕が任意の間隔をおいて同時に降りる。

 

写真04?のように、シャッターの開閉には2通りの動作があります。ひとつ目は、先幕が降りて完全にシャッターが開ききった後で後幕が降りる動作。ふたつ目は、先幕が降り始めると追うように後幕が降り始める動作です。なぜ2通りの動作があるのかというと、シャッターの機構は機械式で、その動く速さにも限界があるからです。

前述したように、シャッター幕自体の動く速さは一定( カメラによって違いはある )で、1/10 秒でも 1/125 秒でも変わりはありません。2つのシャッター幕がどの程度の速さで動くのかというと、先幕が降りきった後から、後幕が降りきるまでの時間が 1/125 や 1/160 秒程度かかります。ということは、1/250 秒以上のシャッタースピードを実現するためには、写真04?の上の動作では間に合わないことになります。

そこで、1/1000 秒などの高速なシャッタースピードを実現するために、写真04?の下の図解のような動作が必要になるわけです。つまり、シャッターは全開にせず、先幕と後幕で隙間を作って移動させることで、受光センサーに光が当たる時間を短くしているのです。この動作においても、シャッター幕自体が動く速さに変わりはないので、より速いシャッタースピードは、隙間がより狭くなります。

 

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■ シャッタースピードで変わる写真

● 動いている被写体は速く撮る?

それでは実際の撮影で、シャッタースピードがどのように関わってくるのかを紹介しましょう。

シャッタースピードは、シャッター幕が開いている時間です。シャッター幕が開いている時間が速いほど、受光センサーに映る瞬間は短くなります。よって、速いシャッタースピードで撮影すると、写真05?のように速く動いている被写体もビデオを一時停止したように止まって写ります。逆にシャッター幕が開いている時間が長くなるほど、受光センサーは多くの光を受け続けるので、写真06?のように動いている被写体はブレてしまいます。

シャッタースピードが遅いと動く被写体はブレてしまうのであれば、動く被写体は常に速いシャッタースピードを使えばよいのかというと、実はそうでもありません。写真05?のような写真では、せっかく自転車に乗っている人を撮っているのに躍動感がありません。そこで、ワザと遅いシャッタースピードを使って、被写体の動きにカメラを合わせるようにして撮ると、写真07?のように躍動感のある写真になります。このような、背景をブレさせて被写体のスピード感を出す撮影方法を「 流し撮り 」と呼びます

写真05動く被写体を止めて撮るには 自転車で駆け抜ける人物を撮るときに、1/640 秒などの高速シャッタースピードを使うと、動きを止めて撮ることができる。

写真05 動く被写体を止めて撮るには
自転車で駆け抜ける人物を撮るときに、1/640 秒などの高速シャッタースピードを使うと、動きを止めて撮ることができる。

写真06シャッタースピードが遅いと..... 1/30 秒などの遅いシャッタースピードでは、動く被写体はブレてしまう。

写真06 シャッタースピードが遅いと…..
1/30 秒などの遅いシャッタースピードでは、動く被写体はブレてしまう。

写真07スローシャッターで被写体を追いかけて撮る 1/15 秒や 1/30 秒など、スローなシャッタースピードを使い、被写体の動きにカメラを合わせて撮ると、疾走感のある写真になる。

写真07 スローシャッターで被写体を追いかけて撮る
1/15 秒や 1/30 秒など、スローなシャッタースピードを使い、被写体の動きにカメラを合わせて撮ると、疾走感のある写真になる。

 

● 流し撮りのコツ!

上手に流し撮りするコツは腰です。両腕でカメラを上半身に固定して、腰で被写体を追いかけて撮ります。腕だけや腰より上をひねって被写体を追いかけると、カメラが上下にブレやすくなります。以下の要領で何度も練習してみてください。

  1. シャッターを切るつもりの地点( A )をあらかじめ決めておく
  2. A地点に腰と体を正対させ、両足を肩幅より少し開いて立つ
  3. カメラをしっかりと両腕で構える
  4. 腰を容易に回転させられる位置まで腰を落とす
  5. A地点にマニュアルでピントを合わす
  6. 両足はそのままで腰をひねり動いてくる被写体にカメラを向ける
  7. ファインダーに被写体を納めたまま追いかけるように腰をひねる
  8. A地点の直前でシャッターを押す
  9. シャッター押下後も被写体をカメラで追いかける

動いている被写体の流し撮りでは、上記のような方法でマニュアルフォーカスを推奨しますが、「?第3回 ピンぼけ写真から卒業しよう! < 中編 >」で紹介している、動いている被写体用のオートフォーカスモード、AF-C( AI サーボ AF )を使うのも手です。ただ、AF-C は被写体の移動するスピードや大きさによっては、あまり期待できないので注意してください。

 

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■次回予告

●?露出設定を詳しく解説!

次回は露出を決める3つの要素のひとつ、「 絞り 」について解説します。お楽しみに。

 

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