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小林孝稔のパノラマVR撮影講座
第4回 VR撮影時の設定と撮影方法 ( 前編 )


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TOPIX

小林孝稔のパノラマVR撮影講座も重要ポイントに入ってまいりました。「 VR撮影時の設定と撮影方法 」は詳細にお伝えしたいので、前篇・後編の2回に分けてお伝えいたします。筆者の考えるパノラマVR撮影ポイントについても言及しております。それではご覧ください。 by 編集部

前回までの連載でパノラマVRの概要から撮影に必要な機材諸々を解説しましたが、今回からは撮影に関わる諸々の設定、そして撮影方法と順を追って解説します。パノラマVRの撮影は360°の全景を写しますので、さぞかし特殊な撮影方法かと思われる方もいらっしゃるでしょうが、日頃から写真撮影に慣れ親しんでいるスタジオグラフィックスの読者さんであれば難しい事はありませんので、ぜひ挑戦してみてください。
さて、カメラの設定と撮影方法を解説する前に筆者なりのパノラマVRの撮影時に意識している事を述べたいと思います。通常の写真撮影は世界の一部( 被写体 )を切り取って写すのでファインダーを覗きながら構図を決めますが、パノラマVRはカメラを設置した場所を中心に360°の全景を写すので、カメラの設置場所で構図が決まるとも言えます。また、パノラマVRは閲覧者の意思でグルグルと画面内を回しながら見たい場所を決める事ができるので、閲覧者の興味を惹く被写体を収められるかが作品の面白さを左右します。従いまして、撮影時には撮影対象となる空間内を前後左右上下と満遍なく見渡して「 この視点( カメラの設置場所 )から得られる興味深い被写体はあるか? 」と意識しながら撮影場所を決める様に心掛けています。下記の作例をご覧ください。

■ 作例

この作例は、1600年頃に建てられた重要文化財の50坪もある大きな土間を写したパノラマVRです。小屋裏(屋根と天井の間)にはたくさんの桁と貫で組まれた見事な構造を見ることができるので、小屋裏を主たる被写体、前面の竈を次点の被写体、そしてある程度の全体像が把握できる場所から目線の高さで撮影を行っています。
この様に、パノラマVRの撮影時には「 立ち位置で構図が決まる 」事を念頭に、如何に興味深い被写体を収められる場所を見つけられるかを意識してみてください。
それでは、撮影に必要な設定を見て参りましょう。

■ 機材の組み立て・設置・設定

前回の記事で解説したノー・パララックス・ポイントの設定を終え、レンズを付けたカメラを装着したパノラマ雲台を三脚に取り付けます。三脚の高さ( 視点の高さ )によって仕上がりの印象は大きく異なりますが、ここではそれらの詳細は割愛します。まずは難なくカメラが操作できるご自身の目線程度の高さにカメラが来る様に設置してみましょう。後々、撮影に慣れたらカメラの高さを色々と変えて仕上がりの違いを試してみてください。

パノラマ雲台にカメラを装着した図

パノラマ雲台にカメラを装着した図

三脚の足は「カメラを下に向けた際に三脚の足が写り込まない」程度に「やや閉じ気味」で開きます。理由は、スティッチ時に三脚が写り込んだ底面写真の消込処理を行いますが、その際に三脚の写り込みが小さければ小さいほど処理の負担が軽減されるからです。ただし、カメラを装着した雲台はそれなりの重さになるので、撮影中に荷重で三脚が倒れない様に十分注意してください。三脚の最も太い足だけを開いてエレベーターを伸ばして高さを稼ぐ方法もあります。三脚を立てる際はパノラマ雲台に備わっている水準器を使って水平を出しますが、スティッチ時に水平補正が可能なので厳密に行う必要はありません。

三脚足の写り込みを最小限に抑えるため、三脚のエレベーターを伸ばして高さを稼ぐのも1つの方法です

三脚足の写り込みを最小限に抑えるため、三脚のエレベーターを伸ばして高さを稼ぐのも1つの方法です

三脚よりも底面の写り込みが少なくて済む一脚を使う方法もありますが、ある程度の撮影の経験を積むまでは安定して撮影が行える三脚を使う事をオススメします。

三脚の設置が完了したら( 必ず三脚がカメラと雲台の荷重で倒れない様にしっかりと立っている事を確認! )カメラの撮影モードを 「マニュアル(M) 」にします。手ブレ補正機能が備わっているカメラをお使いの場合は、手ブレ補正機能は使用しませんのでOFFにしましょう。

撮影はマニュアル( M )で行います

撮影はマニュアル( M )で行います

記録フォーマットはJPEGでも十分ですが、RAWでも同時に記録しておくと後々で役に立つ場面も多いので、RAW + JPEG の同時記録をオススメします。

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■ ピント合わせはパンフォーカスで

前回までの連載で述べた様に、ベーシックなパノラマVRの撮影では少ない撮影カット数で済ます事ができる超広角な魚眼レンズを用いて行います。そして、パノラマVRの撮影は基本マニュアルフォーカスかつパンフォーカスです。

パンフォーカスで撮る理由ですが、超広角な魚眼レンズでは被写体となる空間内の近景から遠景までを写す事ができ、また、仕上がりの解像度にもよりますが、パノラマVRは閲覧者が見たい場所をズームアップして被写体の細部までを閲覧できる ” ならでは ” の楽しみ方ができるのも理由でしょう。以上の事からパンフォーカスで隅々までピントが合った撮影を行います。

パンフォーカスを得るには過焦点距離について理解する必要があります。過焦点距離について簡単に説明すると「 無限遠が被写界深度に入る最も近い撮影距離 」の事で、被写界深度を存分に活かした撮影を行うためにも、撮影の前にお使いのカメラとレンズの組み合わせで得られる過焦点距離を把握されておく事をオススメします。

過焦点距離は計算で知る事ができますが、計算が面倒な方は下記の様なカメラとレンズの情報を入力するとF値毎の過焦点距離を計算してくれる便利なスマホ用アプリが無料で利用できます( 2017年3月現在 )。

Field Tools( iOS用App )
https://itunes.apple.com/jp/app/field-tools/id305817254?mt=8
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まず、画面の指示に従って「レンズの情報」と「 カメラの情報 」を設定し、その後に設定した項目を呼び出します。例えば筆者が愛用しているコンパクトなパノラマVR撮影セット「 OLYMPUS OM-D EM-5 Mark II + Samyang 7.5mm MFT 」では、絞りがF8の状態では過焦点距離( Hyper )が約48cmである事が分かります。この過焦点距離にピントを合わせれば、このピント位置から奥は被写界深度が無限遠までカバーされる事になります。

筆者のコンパクトな撮影セットでは、絞りの値がF8の場合は過焦点距離が約48cmである事が分かります

筆者のコンパクトな撮影セットでは、絞りの値がF8の場合は過焦点距離が約48cmである事が分かります

他にもField Toolsを使えばピントを合わせる被写体までの距離に応じた被写界深度を知る事も可能です。使い方は簡単なので触って試してみてください。

なお、被写界深度目盛りがついた魚眼レンズをお使いの場合は目盛りを参照すればこれらの情報をおおよそ把握する事が可能です。魚眼レンズでの撮影に慣れていない方は、これらのツールを積極的に活用すると良いでしょう。
絞り(F値)についてはマイクロフォーサーズやAPS-CではF8前後、フルサイズではF11以上に絞って撮影される方が多い様ですが、最も解像する値や、回折現象(小絞りボケ)が生じる値はお使いのレンズとカメラの組み合わせによって異なるので、テスト撮影を繰り返して最適な値を探ってみてください。また、闇雲に絞れば良い訳でもありませんし、超近接撮影では完全に絞り込む場合もあります。被写体に応じて最適な値となる様に心がけましょう。

例えば狭い空間での撮影を想定して計算してみましょう。絞りの値がF5.6、被写体までの距離がカメラから60cmの場合。60cmの距離にある被写体にピントを合わせた場合の被写界深度は、手前(Near)はカメラから約32cm、奥(Far)は約565cmまでカバーされる事が分かります

例えば狭い空間での撮影を想定して計算してみましょう。絞りの値がF5.6、被写体までの距離がカメラから60cmの場合。60cmの距離にある被写体にピントを合わせた場合の被写界深度は、手前(Near)はカメラから約32cm、奥(Far)は約565cmまでカバーされる事が分かります

前回の「 パノラマ雲台とノー・パララックス・ポイントについて 」と、今回、そして次回の「 撮影時の設定と撮影方法 ( 後編 )」は VR撮影の肝となる部分です。そのため詳細に解説いたしております。次回の更新をお楽しみに。

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小林孝稔
著者について
小林孝稔( こばやしたかとし - Takatoshi KOBAYASHI ) | 1980年生まれ、長野県出身、東京都在住。尚美学園短期大学音楽情報学科卒業。業務で実写表現を用いたパノラマVRコンテンツの制作に携わり、その面白さに魅せられて制作を開始。主に広告分野でのパノラマVR制作を中心に活動中。その他、技術解説の執筆活動、レクチャー&セミナーの講師活動も豊富。
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