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小林孝稔のパノラマVR撮影講座
第2回 パノラマVRに必要なカメラとレンズは?


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TOPIX

お待たせいたしました。パノラマVR撮影の第2回は一眼カメラ・レンズについての考察です。カメラボディについてはフルサイズ・APS-C・ミラーレス機に関して筆者の見解を述べています。パノラマVR撮影の参考としてください。by 編集部

前回ではパノラマVRのワークフローを簡単に説明しましたが、今回からはベーシックなパノラマVRの撮影に必要な機材について説明します。まずはカメラとレンズです。前回述べたようにRICOH THETA Sの様な全天球カメラを使用するのも1つの方法ですが、本連載では汎用のデジタルカメラを使用する方法を解説します。デジタルカメラと言ってもコンパクトからフルサイズ一眼レフまで様々な種類があり、概ねそれらのデジタルカメラでパノラマVRの撮影は可能ですが、ここでは汎用のデジタルカメラ = マニュアル撮影が行えるレンズ交換式デジタルカメラと定義して解説致します。

■ VR撮影におけるカメラについて考察

スタジオグラフィックスの読者さんの大半はレンズ交換式デジタルカメラを所有されているかと思いますので、お手持ちのカメラ資産を活かして頂ければ結構かと思いますが、これからカメラを調達される方もいらっしゃるかと思いますので、下記に大まかなカテゴリ毎にカメラをまとめてみました。

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1)ミラーレス

筆者がオススメするのはマイクロフォーサーズに代表されるミラーレス機です。後の撮影方法の解説時に詳細を説明しますが、パノラマVRの撮影時はパノラマ雲台に設置したカメラを回転させながら数カット撮影をしますので、取り回しに優れた小型かつ軽量なミラーレス機が適しています。パノラマVRの撮影時はファインダーを覗きながら1カット毎にフォーカスを合わせる様な作業はほとんどありませんので、ファインダー非搭載の機種でも問題ありませんし、ミラーレス機の特徴であるライブビューを使用した拡大表示機能は便利で、光学ファインダーを搭載した一眼レフよりも快適に撮影が行える場面が多々あります。

最近はAPS-Cサイズのセンサーを搭載したミラーレス機も多数出ており、さらにはフルサイズセンサーを搭載したSONY αの様なミラーレスも登場しており、このカテゴリはバラエティに富んでいます。

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OM-D E-M5 MarkII ボディ

マイクロフォーサーズシステム準拠のミラーレス機 OM-D E-M5 MarkII

2)スタンダードクラスの一眼レフ

APS-Cサイズのセンサーを搭載したエントリークラス、スタンダードクラス相当の一眼レフカメラもオススメです。ミラーレス機よりもボディは大振りになりますが、それ相応に小型で扱いやすく機能も画質も十分です。ミラーレス同様のライブビュー機能を搭載したモデルもありますので、このクラスのカメラを検討中の方はライブビュー機能等の付加価値の有無も判断基準にすると良いでしょう。

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EOS Kiss X8i ボディ

エントリークラスのAPS-C一眼レフ EOS Kiss X8i

3)フルサイズ一眼レフ

センサーサイズが大きなフルサイズ機は比例して高画素、そして階調が豊かな高画質が期待できますが、フルサイズ機の大半は大きなボディのため、取り回しの快適性は薄れます。また、大きなボディに見合ったサイズのパノラマ雲台を用意する必要もあります。フルサイズ機を使うメリットは先述の画質の他に、少ない撮影カット数で済ませる事ができる円周魚眼レンズを使用する場合が挙げられます。この点は後述する「 レンズ 」の項目で詳細を説明します。

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EOS 5D MarkIV ボディ

フルサイズ一眼レフ EOS 5D MarkIV ボディ

なお、ミラーレス機やエントリークラスの一眼レフの一部モデルでは三脚穴がレンズ光軸上に存在しない場合があります。それらの光軸上に存在しないモデルでは、パノラマ雲台にカメラを設置する際に手間が増えたり三脚穴の位置を調整する専用のパーツが必要になったりと負担が増えますので、可能な限り三脚穴がレンズ光軸上に存在するモデルを選ばれた方が無難です。

■ VR撮影におけるレンズについて考察

パノラマVRの撮影は基本的には「 魚眼レンズ 」を使用します。もちろん、広角レンズ、あるいは標準レンズでもパノラマVRの撮影は可能ですが、それらのレンズを使用した場合は膨大な枚数を撮影する必要があり、大変な労力を必要とします。その点、1カットで広範囲を写せる魚眼レンズは少ない撮影カット数で済ませる事ができ、撮影時も、その後の編集時の負担も軽減できます。また、魚眼レンズは歪んで写るレンズですが、歪みは後工程のスティッチ時に補正が行えますので問題にはなりません。その様な理由から、レンズ交換式デジタルカメラ+魚眼レンズの組み合わせがパノラマVRの撮影機材としてはスタンダードです。魚眼レンズは大まかに下記の二種類があります。

1)対角線魚眼レンズ

対角線魚眼レンズでの撮影例

対角線魚眼レンズでの撮影例

画像の対角線上180度が写る魚眼レンズです。イメージセンサーの領域全体に像が写ります。

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SAMYANG 単焦点魚眼レンズ 7.5mm F3.5 フィッシュアイ マイクロフォーサーズ用

パノラマVR用の魚眼レンズとして人気のSAMYANG 7.5mm F3.5 フィッシュアイ

2)円周魚眼レンズ

円周魚眼レンズでの撮影例

円周魚眼レンズでの撮影例

円形画像の直径180度が写る魚眼レンズです。イメージセンサーの中央部分だけが円形に写り、周辺は黒くケラれます。

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SIGMA 単焦点魚眼レンズ 8mm F3.5 EX DG CIRCULAR FISHEYE

こちらもパノラマVR用の魚眼レンズとしては定番のSIGMA 8mm F3.5 EX DG CIRCULAR FISHEYE

どちらのレンズを使うかは、用途や場面によってそれぞれメリットが存在します。対角線魚眼レンズを用いる場合は円周魚眼レンズに比べて撮影カット数は増えますが、仕上がりの画素数を稼げるメリットがあります。その反面、円周魚眼レンズは撮影カット数が少なくて済みますが、ケラれる部分が多く、仕上がりの画素数はイメージセンサーの画素数と然程変わりません。

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■ カメラ+レンズの仕上がりを比較


では次に、実際に一眼カメラと両レンズによる仕上がりの違いを見てみましょう。まずは、筆者が愛用しているコンパクトな組み合わせです。
カメラ:OLYMPUS OM-D EM_5 Mark II( マイクロフォーサーズ )
レンズ:Samyang 7.5mm FISH-EYE( 対角線魚眼レンズ )
カメラの有効画素:約1600万画素 / 記録サイズ:4608px * 3456px(1枚)

OLYMPUS OM-D EM-5 Mark II + Samyang 7.5mm FISH-EYE

OLYMPUS OM-D EM-5 Mark II + Samyang 7.5mm FISH-EYE

撮影したカット:水平6カット+天1カット+地1カット、それに三脚を消すために地をもう1カット追加して計9カット
仕上がりのサイズ:12480px * 6240px = 7787万画素、カメラの有効画素数の約4.9倍

水平6カット、天1カット、地1カット、三脚を消し1カットの計9カットを撮影

水平6カット、天1カット、地1カット、三脚を消し1カットの計9カットを撮影

完成したパノラマVR。サイズは12480px * 6420px = 7787万画素

完成したパノラマVR。サイズは12480px * 6420px = 7787万画素

※ 完成したパノラマはこちらからご覧いただけます

この様にカメラの有効画素を大きく上回るサイズのパノラマVRを仕上げる事が可能です。次にフルサイズ機+円周魚眼レンズでの組み合わせを見てみましょう。残念ながら筆者の手元に円周魚眼レンズが無かったので、パノラマVRのスティッチ用ソフトウェアのスタンダード「PTGui」のページで公開されているチュートリアル素材を例に用いて解説します。

カメラ:Canon EOS 5D Mark II( 35mmフルサイズ )
レンズ:Sigma 8mm f/3.5 EX DG Circular Fisheye( 円周魚眼レンズ )
カメラの有効画素:約2110万画素 / 記録サイズ:5616px * 3744px( 1枚 )
撮影したカット:水平4カット、それに三脚を消すために地をもう1カット追加して計5カット
仕上がりのサイズ:7156px * 3578px = 約2560万画素、カメラの有効画素の約1.2倍

水平4カット、地1カットの計5カットを撮影。対角線魚眼レンズよりも広範囲を写せる円周魚眼レンズでは少ないカット数で撮影を済ませる事ができます。

水平4カット、地1カットの計5カットを撮影。対角線魚眼レンズよりも広範囲を写せる円周魚眼レンズでは少ないカット数で撮影を済ませる事ができます。

完成したパノラマVR。サイズは7156px * 3578px = 約2560万画素

完成したパノラマVR。サイズは7156px * 3578px = 約2560万画素

画像出展:https://www.ptgui.com/examples/masktutorial.html Copyright 2000-2016 New House Internet Services B.V., Rotterdam, The Netherlands. All rights reserved.

前者の対角線魚眼レンズの場合は、円周魚眼レンズに比べて一度に写せる範囲( 画角 )が狭いので結果として撮影カット数が増えますが、カメラの有効画素数をフルに使えるので、仕上がりのサイズは有効画素よりも格段に大きくなります。

後者の円周魚眼レンズの場合は、対角線魚眼レンズに比べて広範囲を写せるので撮影カット数は少なくて済みますが、周辺のケラれている部分の画素は捨てる事になり、仕上がりの画素数は有効画素数からはさほど増えません。それならば、「 円周魚眼レンズを使って沢山のカット数を撮れば仕上がりの画素数を増やせるのでは? 」と思われるかも知れませんが、画像同士が重なり合う箇所が増えるのみで仕上がりのサイズには影響しません。

「 対角線魚眼レンズは多くの撮影カット数を必要とするが、仕上がりのサイズも比例してカメラの有効画素よりも高画素になる 」 「 円周魚眼レンズは少ない撮影カット数で済むが、仕上がりのサイズはカメラの有効画素を僅かに上回る程度になる 」 以上、対角線魚眼レンズと円周魚眼レンズによる仕上がりの違いです。

もちろん、フルサイズ一眼レフ+対角線魚眼レンズでの組み合わせで撮影を行えば大きなサイズのパノラマVRを作る事ができますが、WEBに掲載する用途であれば長辺5000pxから10000pxもあれば実用十分と言えますので、その辺りはバランスを考慮しながら行う必要もあります。例えば、被写体が動かない( 変化が乏しい )景色等の撮影には対角線魚眼レンズが向いているでしょう。人々が行き交う街中の様な、動く被写体( 変化が激しい )が存在しており、手短に撮影を済ませなければならない場所では円周魚眼レンズが向いているでしょう。どちらが良い悪いではなく、用途に応じて使い分けるイメージで考えてください。

次回はパノラマ雲台と編集ソフトウェアについて解説します。 お楽しみに。

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著者について
小林孝稔(Takatoshi KOBAYASHI) | 1980年生まれ、長野県出身、東京都在住。尚美学園短期大学音楽情報学科卒業。業務で実写表現を用いたパノラマVRコンテンツの制作に携わり、その面白さに魅せられて制作を開始。広告分野でのパノラマVR制作を中心に活動中。その他、技術解説の執筆活動、レクチャー&セミナーの講師活動も豊富。東京工芸大学芸術学部非常勤講師。